一枚のスライドの中で特定の部分を強調する場合、もっとも大切なところ、一ヶ所からせいぜい二ヶ所に絞って、赤を使う。
私たちの身のまわりを見ると交通信号や道路標識など注意を徹底しようとする部分に赤い色が使われている。同様の考えから一般的にスライドは「ここが重要」という部分に鮮やかな赤を使って見る人の目を引こうとする。そこでは使う場所を絞っておくことで、狙いどおりの効果を上げることができる。
■赤が散見していればかえって注意をひかない
スライドを作るときにひととおり文字などを入力したあとメリハリをつけて重要な部分を強調する。このときにひとつのフレーズやビジュアル表現の中で重要な部分を、ラインマーカーを使って資料を読み込みながら色を塗っていくように赤に変えていくと、いくつもの部分に赤が使われることになる。
こうしたできあがったスライドは発表会場でスクリーンに大きく映し出されると、あちこちに赤が目立ち、いったいどこが重要なのかがわかりものとなる。ここも重要、あそこも重要というのではしょっちゅう大声を上げて怒鳴っている人と同じで、相手には「また同じことをやっている」と受け止められ注意をひくことはない。
■あなたが作った狙いは相手に受け入れてもらえない
伝える側が狙った効果が、受け取る側に伝わらないのは両者の感覚の違いがあるからだ。すでに述べたように伝わる側は特定フレーズやビジュアル表現の一部を目立たせ、そこが重要であることを伝えようとする。ところが見る側は初めからスライドを一行ずつ、ひとつずつ順に見ていくわけではなくて、スクリーン全体を一度にパッケージとして目に入れる。そして、さまざまな部分赤があることを認識する。結果として重要部分を理解することができない。
■他の強調手段を活用する
スライドを見る相手のことを考えると、赤を使う場所はスライドの中で絞っておかないと狙った効果を上げることができないということがわかる。
ただし、赤で強調するほどではないが「ここのパーツではここが(相対的に)重要」と伝えておきたいことがある。そのときには赤を使うのではなく(1)青など赤より目立たない色を使う(鮮やかな黄色は赤と同じ印象を与えるので使わない方が無難)、(2)重要部分を「 」(かっこ)や“ ”(ダブルクォーテーション)で囲む(3)フォントを変える、(4)文字の大きさを変えるといった方法を採用すればよい。
強調の赤は、「ここ!ここ!ここの部分はほんとうに重要!まずはここだけでいいから注目して!」という部分だけに絞って使うようにしよう。