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皮膚科臨床アセット 8 変貌するざ瘡マネージメント

皮膚科臨床アセット 8 変貌するざ瘡マネージメント published on

セミナーで語られるような新しさ

皮膚科の臨床 Vol.54 No.8(2012年8月号) 書評より

評者:村上早織(村上皮フ科クリニック)

2011年に皮膚科臨床アセットシリーズが刊行され,その第8号として『変貌するざ瘡マネージメント』が出版された。ちょうどざ瘡治療についての講演依頼を受けていて,疫学的なデーターや,最近の治療法についてまとまっているものがどこかにないかなと思っていた私のもとに,とても良いタイミングで,配達されてきた。
ざ瘡治療は,ご存じのように,2008年秋に保険適応となったアダパレンの出現で,それまでとは大きく変貌することとなり,それに伴い皮膚科医のざ瘡治療に対する関心も少し高くなったように思われる。新しい薬を使いこなす必要があるし,ざ瘡に関しても,もう一度勉強しなおす必要が出て来たからである。この本は,こういう時期に、本当にみんなが待ち望んでいたものが出て来たという形で出現したといえるのではないだろうか。以前に刊行された,何冊かのざ瘡関連の本を読んで,正直,実際の治療現場に即さないような記載が多いという感じを受けていたが,この本は違う。まずとても,新しいという感じを受ける。そして,普段知りたいと思ったことが探せばどこかに書いているという感じがするのは,実際現場でざ瘡に向かい合っている先生方が著者となっているからなのだろう。例えば,「アクネ桿菌の菌量測定,薬剤耐性の評価方法と値の読み方」とか,「ニキビ患者のバリア機能や皮脂量の評価法」とか,「コメドジェニック試験の方法」など,詳しく写真入りで掲載されている。こんな風に測定されているのだと思うと,その臨床的な意義も,具体的なイメージとして自分の中に定着する。また,アダパレンや,抗生物質内服外用という治療だけでなく,保険外治療の,PDT,色素レーザーによる治療,ケミカルピーリング,経口避妊薬による治療,そして,スピロノラクトン内服による男性ホルモン抑制療法についてまでも詳しく,実際に行えるレベルまでの具体性を持って書かれている。瘢痕冶療に関しては,現在,私たちが一生懸命やっている,フラクショナルレーザーによる治療についても書かれているがまさに,現時点での最新レベルの記載がされており,今読む本としてまさにセミナーで語られるような新しさである。
ざ瘡治療に関しては,治療だけではなく,スキンケアの指導もとても大切な要因となるが,本書では,ざ瘡患者の皮膚の状態がきちんとしたデータとして示されている。ざ瘡患者たちは,体質的な問題だけではなく,その化粧行動により,肌表面の状態が悪くなっているように感じているが,「ざ瘡患者のスキンケア」の項では,実際のざ瘡患者の化粧品の選び方や使い方の問題点も,筆者のコラムとしてまとめられている。外来診療で患者さんの問診から日々感じていたことと同じようなことを書かれてあって力強い味方ができたようなうれしさを覚えた。
また,本書の特徴の一つにBOX,Advice,Topicsという囲み記事があり,筆者がコラム的に強調したいことや,説明しておきたいことなどが書かれている。その分野において専門的に力を入れて治療をされている先生方のちょっとしたコツや,プロの技のようなものが,いろいろなところにちりばめられていて,「ああ,今度こうしてみよう」と思うようなものも多い。読み物としても楽しいが,何と言っても,発症メカニズム,日本の治療法,海外の治療法,治療と研究の最先端についてエビデンスに基づいた解説がなされていて,最新の発症メカニズムの研究などの知識も含めて,現時点でのざ瘡治療のすべてを網羅できたのではないかという,専門編集をされた林伸和先生の言葉通りの力強い診療の相棒となる最新ざ瘡本である。

※ 原文では,ざ瘡の「ざ」は「やまいだれに坐」

皮膚科臨床アセット 7 皮膚科 膠原病診療のすべて

皮膚科臨床アセット 7 皮膚科 膠原病診療のすべて published on

まさに膠原病診療のすべてが凝縮された一冊

Derma No.190(2012年4月増刊号) 書評より

評者:五十嵐敦之(NTT東関東病院皮膚科)

「手のひらを見ただけで皮膚科医はSLEと診断できる」と医学部最終学年時の皮膚科入局説明会で当時の医局長が語られた一言は今も鮮明に覚えている.この言葉を聞いたときは甚だ懐疑的であったが,皮膚科を専攻し膠原病診療に少なからず携わってきた半生を振り返ってみて,この言葉は正しいと断言できる.皮診は膠原病とは切り離せない関係にあり,早期診断のきっかけとなるだけでなく予後をも占うことのできる重要な臨床所見である.皮膚観察のプロである我々皮膚科医は膠原病診療で一歩アドバンテージを持っているわけだから,この立場を生かさない手はない.しかし,診断・評価だけに留まらず治療に深く介入していくためには,責任編集の佐藤伸一教授が「序」でも述べておられるとおり皮診のアセスメントだけでは不十分で,内臓病変など膠原病全体について実践的な知識を持っておかなければならない.診療に窮した場面に遭遇したとき,実地診療に即した判断が求められるが,一般的な教科書では情報量が不十分であり,何を紐解けばよいのか悩むことが多い.こういったときに大いに活用できる書として本書はお勧めできよう.

本書の特色はまず,膠原病の基礎的事項から診断・治療まで見やすく,コンパクトに網羅されている点である.特に重要なポイントはAdviceやTopics,Boxなどのコラムを用いて目にとまるように簡潔に記載され,また比較的新しい用語についてもKeywordとして解説されており,読み手を疲れさせない工夫がなされている.時間のある時に学習書として用いるのもよいだろうし,索引も充実していることから日常診療での必要時に調べたいときにも重宝しそうである.また,病因論等では最新の知見も紹介され,さらに最終章では膠原病の新規治療についても言及しており,第一線の情報に触れることができる.こうして改めて目を通してみると,私が医師になった四半世紀前と比べて頭に入れておくべき新しい知識がいかに増えているかに驚かされる.

大病院であっても膠原病内科が存在しないことは未だ珍しくない.内科等と連携して治療を進めていく際に皮膚科の存在感をアピールできるよい機会であるが,この好機に膠原病診療における重要ポイントが凝縮された本書が活用されることを望みたい.さらには,皮膚科医にとどまらず研修医から一般医に至るまで膠原病に接する機会のある先生方にとっても,疾患への理解を深める上でお勧めできる一冊である.

皮膚科臨床アセット 6 脱毛症治療の新戦略

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脱毛症治療のバイブル出現!

Visual Dermatology Vol.11, No.3(2012年3月号) Book Reviewより

評者:幸野健(日本医科大学千葉北総病院皮膚科)

旧約聖書の「サムソンとデリラ」の伝説において,怪力無双の英雄サムソンは,愛人にだまされ眠っている間に,神の恩寵のしるしである髪を切られてしまう.サムソンは力を失い,あわれ敵に囚われることになる.また,剃髪していたらしいブッダは,仏像ではまげを結った姿になっているし,短髪であったであろうイエスも絵画では長髪になっている.ことほど左様に人は髪に対して強い憧れを抱き,立派で美しい髪に自己同一性を投射するものである.それだけに,思いがけなくも脱毛症が発覚したとなると,人は慌て戦き,憂愁の淵にうずくまってしまう.

脱毛症患者の悲嘆は尋常ではない.それにもかかわらず,これまでの日本の皮膚科学界は患者たちに対して,あまりにも無力で頼りなかったと言わざるを得ないであろう.効果不定の育毛剤と適当な内服薬を出して「きっと生えるから頑張りなさい.ストレスを避けるようにね」くらいを言って,「どこか他の皮膚科に行ってくれないかなあ」などと思っていたのが本音ではないだろうか(私もそうであった).脱毛症に対し,皮膚科医は,さしずめ「髪を剃られたサムソン」状態であったといえよう.

このような現状を打破すべく,東京医科大学の坪井良治教授の下に,多くの勇士が結集し,本書が上梓されたのはまことに喜ばしい.これまでも脱毛に関する図書はあったが,経験論に基づくものが多く,本書のように確実なエビデンスに則って網羅的に編集されたものは皆無であった.まさに脱毛症治療のバイブル,いや日常診療での脱毛症治療への救世主降臨とでも言うべきであろうか.

日本皮膚科学会の脱毛症診療ガイドラインの作成委員である脱毛症治療のエキスパートたちが読者の側に座って,ガイドラインの内容を図表を豊富に駆使し,経験もまじえて懇切丁寧にわかりやすく説明し直してくれる……そのような気にさせてくれる本である.そして,だれしもが苦手としていた脱毛症治療に関し,本書一読後には,「こんな方法があったのか.自分もやってみよう!」という気になるであろう一書となっている.

また毛の生物学的基礎,遺伝子解析の最新知見,トリコスコピーなどの最新診断技術,各疾患のメカニズムも詳細かつきわめてわかりやすく記載されており,患者への説明の際のバックボーンを与えてくれる仕組みになっている(このバックボーンの体得が患者への納得感に大きくつながるのである).さらに,百戦錬磨の脱毛症のエキスパートたちによるものだけに,患者の心のケアに関するコメントも忘れられていないのはさすがである.

また,ヘアケアの実際,かつらの選択法,レーザー脱毛,染毛剤,パーマネント・ウェーブ剤,シャンプー,コンディショナー,フケ用香粧品に関する章から髪にまつわる迷信のコーナーまであり,まさに「痒い所に手が届く」心憎い編集になっている.300ページほどもある大著ながら,筆者はその面白さからあっという間に読破してしまった.

本書の魅力のために長々と書いてしまったが,本書の最大の意義は,「脱毛症という難治性疾患治療に関し,皮膚科医の一般臨床能力を非常に底上げする力の源泉となれる書」ということに尽きると思う.少なくとも皮膚科を標榜する医師は,すべからく本書を一読して頂きたいものと考える.

皮膚科臨床アセット 5 皮膚の血管炎・血行障害

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この領域に造詣の深い気鋭の皮膚科医の叡智が結集された力作

Derma No.198(2012年11月号) BookReviewより

評者:衛藤光(聖路加国際病院皮膚科部長)

皮膚の血管炎と血行障害は混沌とした領域である.1994年のChapel Hill 分類により,全身性血管炎に関してはある程度整理された感があるが,皮膚の血管炎に関しては「皮膚白血球破砕性血管炎」として包括され,その詳細は皮膚科医自身の手にゆだねられている.この分野の研究の歴史は古く,ドイツ学派を主流とする欧州の皮膚科学と米国の新しい皮膚科学の二大潮流があり,用語の解釈から疾患概念まで大きく異なる.さらに欧州においてもドイツとフランスでは,分類や考え方が異なる.現代の日本の皮膚科学はこれらの潮流の合流点にあり,両者の考えを理解したうえで新たな解釈と考え方を発信していく最適な立ち位置にある.
シリーズ第5巻の『皮膚の血管炎・血行障害』は,日本皮膚科学会の血管炎の診療ガイドラインを作成したメンバーを中心に,この領域に造詣の深い気鋭の皮膚科医の叡智が結集された力作である.血管炎を正しく理解するためには臨床像と病理像を緊密に対応させて考える必要があるが,優れた臨床医かつ皮膚病理学者が多い本邦皮膚科学の特徴が,随所に発揮されている.本書はこの一見難しい領域を明快に理解するための,至宝の一冊といえよう.
内容でとくに注目されるのは,血管炎・血行障害を理解するのに不可欠な「livedo(網状皮斑)」などのキーワードに多くのページがさかれている点である.また,欧米では既に歴史的概念となりつつある「皮膚アレルギー性血管炎(Ruiter)」についてもしっかりと記載があり,臨床上重要なHenoch-Schönlein紫斑病との鑑別に一章をさいている点は臨床家にとって有り難い.日進月歩の「抗リン脂質抗体症候群」の最新の知識に至るまで網羅されている点も実地臨床に有用である.
本書は外来や病棟に常備してマニュアルブックとして使うことも可能だが,できれば通読することをお薦めする.なぜなら,それにより皮膚血管炎と血行障害の全貌が見えてくるからである.本書は専門医を目指す初心者はもとより,皮膚科専門医や教育職につく者にも役立つ内容が満載されている.血管に興味のある皮膚科臨床医すべてにお薦めしたい一冊である.

皮膚科外来診療スーパーガイド

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皮膚科外来診療に役立ててほしい座右の書

日本医事新報 No.4598(2012年6月9日) BOOK REVIEWより

評者:本田光芳(日本医科大学名誉教授(皮膚科))

本書は,上田由紀子,畑 三恵子両先生を中心に,2人を心からサポートする14名の著者たちによる,全30章からなる“皮膚科外来診療”のための,文字通りの“スーパーガイド”である.
上田,畑両先生は,常日頃,真摯に各自の診療所で,得意分野を活かした皮膚科診療に従事する傍ら,皮膚科学会,美容皮膚科学会,皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会など多くの学会で大変華やかに活躍されている.
本書は,自らも謳っているように,まさに“教科書にない実践ヒント集!”である.「Part 1 皮膚科医にお勧めできる治療のヒント」では,多様なかぶれの症例を呈示,貼布試験により原因を確定・除去し,その後に使用すべきシャンプー・石鹸,化粧品,外用薬などを一般商品名で記載,販売価格,製造会社,問い合わせ電話番号,メールアドレスまで付記している.さらに肌着,靴下,イオントフォレーゼ,ピーリング,レーザー脱毛,化粧品指導(アトピー性皮膚炎,ざ瘡,光老化予防と改善)など,こまやかな指導方法が懇切丁寧に述べられ,“痒い所に手が届く”配慮が心憎い.
「Part 2 皮膚科治療に役立つ知識」では,栄養の知識から始まり,頸のシワ,足のタコ,外反母趾,便秘,若返りなどのためのトレーニングとエクササイズ,肌によい温泉,ヘアスタイル,顔色を引き立てるカラーコーディネート,禁煙によるよい変化と,多岐多彩で,真にユニークである.禁酒によるよい変化が欠落しているのは,上田,畑両先生のアルコールに対する寛容さを暗示するところであろうか.
いま,まさに脂の乗りきったお2人,と言えば女性に失礼なので,換言すれば,カサブランカのごとく薫り高い上田,畑両先生が,情熱を傾けて完成した本書は,諸先生方の座右の書として大いに役立つものと確信し,心から推薦する次第である.