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小児診療 Knowledge & Skill 3 領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療

小児診療 Knowledge & Skill 3 領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療 published on

診療の現場に新たな「羅針盤」を

評者:野津寛大(神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科 教授)

小児科の一般診療において、腎・泌尿器疾患に遭遇する頻度は決して低くありません。本書『領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療』は、小児腎臓学と小児泌尿器科学を網羅的にカバーする必携の1冊であり、小児腎臓病学と小児泌尿器科学の双方の専門家が結集して執筆されています。

本書の最大の特長は、タイトルにもある通り「領域横断的視点」にあります。「腎臓の機能と尿路の形態は不可分である」という認識のもと、知識が体系化されています。目次を紐解くと、その網羅性に驚かされます。尿検査や超音波検査といった基礎的な評価方法から始まり、輸液・食事療法、ステロイドや免疫抑制薬(リツキシマブ等)による薬物療法、さらには小児泌尿器の手術や腎移植に至るまで、内科・外科の双方向からアプローチがなされています。

また、本書が現代の医療ニーズを的確に捉えている点として、「ライフステージアプローチ」の視点が随所に盛り込まれていることが挙げられます。小児期に診断・治療をして終わりではなく、その後の成人期に向けた慢性腎臓病(CKD)への移行リスクを見据え、将来の健康を守るための長期的な視点が提供されています。最終章においては「成人診療科への移行」や「社会適応をめざした支援」についても項が割かれており、患者の人生に寄り添う医療者の姿勢が強く感じられます。

具体的な疾患各論においても、ネフローゼ症候群やIgA腎症といった代表的な疾患から、遺伝性疾患、夜尿症、性感染症に至るまで幅広くカバーされており、まさに日々の診療における頼れるガイドブックと言えるでしょう。

序文において張田先生が「日々の診療に役立つ羅針盤となることを心より願っております」と述べている通り、本書は小児の腎・泌尿器疾患に関わるすべての医療従事者にとって、手元に置くべき必携の書です。短期的な治療のみならず、患者の長い人生を見据えた診療の質を高めるための、確かな道しるべとなるに違いありません。

触診とゴロで覚える 四肢&体幹の機能解剖学

触診とゴロで覚える 四肢&体幹の機能解剖学 published on
評者:松永篤彦(北里大学大学院医療系研究科 教授)

リハビリテーション診療の一翼を担うセラピストにとって、解剖学を学ぶという試練は、養成校に入学して直ちに訪れ、そして間違いなく卒業しても終わることはない。それは、単に筋肉(筋群)の名称を覚えただけでは不十分であり、その筋群の「構造と機能」が日常生活動作(たとえば歩行)においてどのような役割を果たしているのかを、生体運動学と結びつけて理解していなければ、実臨床では役立たないからである。すなわち、解剖学を起点とした応用的知識の学びには終わりがない。また、頭の中に知識として詰め込むだけでなく、実際にその筋群を診て、触れて、動きを実感しながら機能を評価することが求められる。敢えて「試練」と表現したが、学生にとっても、有資格者にとっても避けては通れない膨大な学習領域である。

このような試練に立ち向かううえで大きな味方となるのが、本書『触診とゴロで覚える 四肢&体幹の機能解剖学』(中山書店)である。本書は、同社から既に出版されている『ゴロから覚える筋肉&神経』の進化形ともいえる。ページを開くと直ちに目を引くのは、①筋(群)の作用、②筋(群)名、③生体運動としての特徴(動作における役割、他筋との関係、特徴など)、④支配神経、⑤起始・停止(図)、⑥触診の方法(図:姿勢と位置)、⑦覚え方(ゴロ)、⑧POINT、⑨MEMOのすべてが例外なく整理されている点である。これらの番号は紙面上に明示されてはいないが、筆者が読者に本書の構成と充実度を伝えるために敢えて列挙した。しかも、A5サイズにも満たないコンパクトな判型の中に、これだけの情報が片面ごとに見やすく配置されている。

特筆すべきは③の生体運動に関する記述である。最も重要で実践的な知識が短文・箇条書きで整理されており、覚えやすく臨床で即使える内容になっている。⑤の起始・停止図は立体的で視認性が高く、⑥の触診図は実際の人体写真を用い、触診部位だけでなく触れやすい姿勢もひと目で理解できる。また⑧・⑨の項目では、臨床で遭遇する病態との関連知識が端的にまとめられており、実践の中での応用を想定した構成となっている。筆者はこれほど限られたスペースに、これほどまでに重要な知識を無駄なく配置した書をほとんど見たことがない。

近年、AIなどの技術革新により、豊富な知識を容易に検索できる時代となったが、要点を取捨選択し、学ぶべき本質を端的に整理してくれるものは少ない。本書は、単に「ゴロ」で覚えることを目的とした暗記本ではなく、触診を通して構造と機能を一体的に理解するための実践的な学習書である。著者の高橋仁美氏は、40年以上にわたり理学療法士として臨床・教育の第一線で活躍してきた達人である。本書は、その豊富な経験に裏打ちされた“機能解剖学の指南書”であり、初学者はもちろん、臨床経験を重ねた有資格者にも改めて学びを深める契機となる一冊である。本書を強く推薦する。

小児診療 Knowledge & Skill 2 どう診る?小児感染症

小児診療 Knowledge & Skill 2 どう診る?小児感染症 published on

評者:尾内一信(川崎医療福祉大学 特任教授)

小児感染症の診療では、成長や免疫発達に伴う臨床像の違いを理解し、個々の子どもに最も適した治療を選択することが重要です。特に抗菌薬・抗ウイルス薬の使用は慎重を要し、適正使用の意識が不可欠です。宮入烈先生が編集された『小児診療 Knowledge & Skill』シリーズ2『どう診る? 小児感染症―抗菌薬・抗ウイルス薬の使い方』は、臨床現場での実践に直結する知見をわかりやすく整理した貴重な一冊です。

抗菌薬使用の原則は、不要な投与を避け、できるだけ狭域スペクトラムの薬剤を選ぶことにあります。原因菌が推定できない初期段階では経験的治療が必要な場合もありますが、感受性が判明すれば速やかに薬剤を見直すことが望まれます。投与量や間隔は年齢・体重・腎機能を考慮し、副作用にも注意を払うべきです。

抗ウイルス薬に関しては、使用すべき場面を見極めることが重要です。インフルエンザのように有効性が確立している疾患では早期投与が有効ですが、多くのウイルス感染症では支持療法が中心となります。薬剤の乱用を避け、科学的根拠に基づいた判断が求められます。

さらに、小児科医として、治療の方針を保護者にしっかりと説明することも重要です。薬の効果や必要性、使用の限界を理解してもらうことで、不要な抗菌薬要求や誤解を防ぐことができます。また、治療方針は一律ではなく、子どもの年齢、免疫状態、既往歴、家族歴などを考慮して個別化する必要があります。治療中に症状が変化した場合には、柔軟に対応し、必要に応じて薬剤を変更することも考慮しなければなりません。

私は2009年『小児科臨床ピクシス』シリーズ11巻で『抗菌薬・抗ウイルス薬の使い方』を編集しましたが、それから16年の歳月を経て最新情報が満載された本書が刊行されました。この間新型インフルエンザA(H1N1)pdm09やCOVID-19などの大流行、日本政府の薬剤耐性(AMR)対策などもあり状況は大きく変化しました。宮入烈先生が編集された本書は、最新情報が効率よくまとめられており、小児感染症治療の質を高める一助となると確信しております。是非手に取って熟読していただきたいと思います。

ニュースタンダード整形外科の臨床 3 整形外科の薬物療法・保存療法

ニュースタンダード整形外科の臨床 3 整形外科の薬物療法・保存療法 published on
Orthopaedics Vol.38 No.10(2025年10月号)「Book Review」より

評者:清水克時(医療法人 社団登豊会 近石病院 院長/岐阜大学整形外科名誉教授)

私は,この本の編集者,井尻慎一郎先生と同じ京都大学整形外科の出身です.医学部を卒業し,大学病院で半年間研修を受けた後,医局の研修プログラムで島根県の玉造厚生年金病院に3年間勤務しました.玉造病院では,たくさんの手術を経験しましたが,それに加えて,整形外科的保存治療の妙味を体験しました.病床には余裕があり,保存治療のための入院も可能で,先輩の医師や,PT,OT,看護師からたくさんのことを教えていただきました.病院の中に義肢科があり,義肢装具士が働いている工房によく出入りしました.私が卒業した1973年頃は,骨折や運動器変性疾患に対するインプラントが進歩し,手術的整形外科が飛躍的に発展する時代でした.大学病院のカンファレンスや学会では,手術を中心に議論が交わされ,私もそれにあこがれて入局したのですが,玉造病院の3年間で学んだことは,整形外科には保存治療も重要で,むしろこちらが本流だという事実でした.卒業直後の早い時期にこのことを学べたのは大変よかったと思います.

整形外科が手術分野として発展することができたのは,無菌的手術,麻酔, Ⅹ線診断の進歩に後押しされたからですが,それはほんの100年間くらいのことです.一方,保存的治療には,整形外科(ORTHOPAEDICS)という名称ができてからでも300年近くの長い伝統があります.《ニュースタンダード整形外科の臨床》 第3巻『整形外科の薬物療法・保存療法』のページをひらくと第1章,普天間朝拓先生の「外用消炎鎮痛薬」の記載で「貼付剤に切れ込みを入れて密着をはかる方法」が私の目に飛び込んできました.湿布薬を有効に使うための優れた方法で,湿布を医療保険でカバーすべきか? という昨今の医療経済論議に対する現場からの回答のようにも思いました.普天間先生と患者さんの会話が聞こえてくるような写真です.このほかにも,臨床現場で役に立つ知識をできるだけ具体的に解説するという編集者の意図は,すべての執筆者によく伝わっていて,実際の臨床に即した知識が満載されています.

第1,2,3巻を通読してみて,全11巻におよぶシリーズのなかで,この3冊はまさにジェネラリストのための基本的教科書だと思いました.とくに第3巻は秀逸です.私が臨床医として働き始めてから半世紀が過ぎました.最近は,ふたたび一般整形外科の診療が増えてきたので,診療のあいまにこの本を読んで重宝しています.本書をすべての世代の整形外科医におすすめします.

臨床区域麻酔科学書

臨床区域麻酔科学書 published on
麻酔 Vol.74 No.9(2025年9月号)「書評」より

評者:内田寛治(東京大学医学部附属病院麻酔科・痛みセンター)

区域麻酔は,全身麻酔に比して合併症のリスクを軽減し,術後の回復をより良好に導く麻酔手法である。単独でも,全身麻酔と併用しても用いられ,その臨床的有用性は高く,周術期医療における選択肢として今後さらに重視されることが予想される。また,術後鎮痛や慢性疼痛治療へとつながることから,ペインクリニック領域への橋渡し的な意義も持っている。

近年,全身麻酔は薬剤の進歩やモニタリング技術の発展により,一定の安全性と標準化が確立されている。一方,区域麻酔は,神経解剖の深い理解,超音波画像の的確な読解,ブロック技術の巧拙など,術者の裁量と熟練度が大きく問われる分野である。術式や解剖のバリエーション,患者背景の多様性に応じた判断と対応が求められるため,探究心と創造力を持った医師にとって,大きなやりがいと挑戦の余地がある。実際に,区域麻酔に取り組む麻酔科医には学術意欲の高い人材が多く,学会やハンズオンセミナーも活発に行われている。

本書『臨床区域麻酔科学書』は,一般社団法人日本麻酔科医会連合出版部による書籍としては,『臨床麻酔薬理学書』に続く2冊目の刊行物であるが,それに先立ち,同様の編集体制により出版された『臨床麻酔科学書』を含めれば,シリーズ第3作にあたる。いずれの書籍も,現場に根ざした内容と学術的水準の高さを兼ね備え,多くの読者に評価されてきた。本書もその流れを汲みつつ,区域麻酔という専門領域に焦点を当て,実践的かつ体系的にまとめられている。

執筆陣には,日本国内外で高い評価を得ている専門家が多数名を連ねており,その層の厚さには圧倒される。これだけの筆者を取りまとめ,教科書としての一貫性と完成度を保った編集主幹・廣田和美先生の見識と人脈,そして熱意に深く敬意を表したい。

構成面でも工夫が凝らされている。図表や写真に加え, Webを介した動画コンテンツも掲載され,読者は現場で即座に応用できる知識や技術を具体的に学ぶことができる。動画コンテンツは今後さらに拡充されていくことを大いに期待したい。また,各章のコラムやトピックは,読者の素朴な疑問に寄り添い,筆者の経験と知恵に触れることができる構成となっている。

特に総論では,区域麻酔の歴史的背景,神経生理,薬理学など,基礎的領域への丁寧な記述が際立っている。こうした不変の知識は,日々進化する医療現場において,判断力と応用力の拠り所となる。また,周術期チーム医療を束ねる医師には,周囲への指導教育能力が不可欠であり,その立場に堪えるためにも本書が提供する体系的な基礎知識は極めて有用である。

区域麻酔学会認定医を志す医師にとっては必携であるとともに,すべての麻酔科医にとって実践と教育を支える信頼の書として,座右に置く価値のある一冊であると確信している。

小児診療 Knowledge & Skill 1 小児白血病の最新診療

小児診療 Knowledge & Skill 1 小児白血病の最新診療 published on
評者:真部 淳(北海道大学大学院医学研究院小児科学教室教授/JCCG理事長2023~2025年)

 日本では1年間に約2,000人が小児がんに罹患しますが、その半数は白血病やリンパ腫などの血液腫瘍です。その中で、急性リンパ性白血病(ALL)は1960年代にはほとんど長期生存は望めませんでしたが、2010年代には90%近くの患者が治癒するようになりました。それは世界中で行われた臨床試験の積み重ねにより達成されたものです。ところで、1970年代にALLの中枢神経再発を予防するために導入された全脳照射は、治癒率の上昇に大きく寄与する一方、認知機能の低下や、稀ながら二次がんとして脳腫瘍の発生を招来するなど、晩期合併症の問題を認識させました。現在、臨床試験の目的には治癒率の改善のみならず、合併症の軽減も入っています。

 国内では2014年に日本小児がん研究グループ(JCCG)が結成されました。その結果、病理や画像の中央診断が可能となり、データセンターができて治療の結果や長期フォローアップのデータが蓄積され、事務局体制が強化されることにより、厚労省やAMEDなどの競争的研究費を獲得しやすくなりました。実際に2013年以降、血液腫瘍疾患については、22,891人の患者が登録され、31の特定臨床研究が行われ、固形腫瘍についても10,772人の患者が登録され、12の特定臨床研究が行われました。JCCGではALL委員会やAML委員会などの疾患委員会のみならず、長期フォローアップ委員会、支持療法委員会、遺伝性腫瘍委員会などの領域横断的な委員会も活動しています。

 前置きが長くなりました。本書は小児白血病診療に関するあらゆる問題点に直接応える内容となっています。各疾患(ALL、AML、MDS、JMML、CML)の診断と治療についての詳細な解説、アスパラギナーゼやメトトレキサートなど重要な薬剤の解説、移植治療と免疫療法、支持療法、長期フォローアップ、ゲノム医療、AI、国際協力まで、微に入り細に入って記載されています。執筆陣には現在、JCCGの各委員会で中心的に活躍している旬のメンバーが選ばれており、万全です。現代はPubMedをはじめとする媒体から様々な情報が瞬時に入ってきます。それは便利な反面、正しい情報の把握が困難です。本書は小児白血病の診療に関わるすべての人に現時点での正しい情報を提供するでしょう。読者の皆さんは、これまでの歴史と現在の問題点を理解し、今後得られる新たな知見を正確に評価する必要があります。私は数年前に『小児白血病の世界』という小著を出版しました。それはコロナのおかげでまとまった時間ができたこともあって、一人で小児白血病の研究と臨床の歴史を紐解いたものでした。エッセイ的なことも加え、書いていて楽しかったのですが、対象にした領域の広さと深さに圧倒されたことも確かでした。今回、あまり時を経ずに『小児白血病の最新診療』を手にして感じたのは、活きの良いたくさんの著者を得た大著の迫力でした。私は、本書に接した読者の皆さんが、将来は小児白血病診療のさらなる進歩に関わっていくことを期待しています。

ニュースタンダード整形外科の臨床 2 整形外科の外傷処置 捻挫・打撲・脱臼・骨折

ニュースタンダード整形外科の臨床 2 整形外科の外傷処置 捻挫・打撲・脱臼・骨折 published on

これは面白い! 役に立つ!

Orthopaedics Vol.38 No.8(2025年8月号)「Book Review」より

評者:井口哲弘(恕和会松田病院整形外科・リウマチ科部長/元兵庫県立リハビリテーション中央病院院長)

大規模病院や中小規模病院の整形外科で、そして25年間の開業医として、外傷診療の第一線治療を経験されてきた井尻整形外科院長の井尻慎一郎先生が、中山書店の整形外科シリーズ《ニュースタンダード整形外科の臨床》の第2弾『整形外科の外傷処置』を編集、このたび刊行された。

この本は、実際に救急医療を経験しないとわからないノウハウが詰まった貴重な本であることがわかる。「整形外科医でも知っておいた方がよい救急外傷」では、皮下異物(トゲ)の除去方法が図解入りでわかりやすく書いてある。爪下異物では爪の切除方法が、種々の動物咬傷では治療法に加え、安静期間とリハビリテーションの方法まで書いてある。普通の本では指輪のはずし方は簡単な図解が多いが、6枚の連続写真で詳しく説明してある。要するに、豊富な写真、レントゲン、図解、イラストを駆使して、読者に理解しやすい細やかな配慮がされている。「こんな方法があったのか、もっと早く知りたかった」と思わせる内容である。

目を見張る二つ目は、分野と執筆陣の充実である。基礎、捻挫・靭帯損傷・肉離れ、打撲・骨挫傷、脱臼、骨折、末梢神経、外傷合併症の各分野で67項目を、治療の第一線で活躍中の70名以上の先生方が執筆されている。環軸椎回旋位固定などの小児疾患から高齢者脊椎脆弱性骨折まで、よくこんなに多くの先生方に執筆をお願いできたと驚いている。もちろん井尻先生のみならず共同編集委員の田中栄先生や松本守雄先生のご尽力であることは間違いない。私が気に入っている執筆方針は、それぞれに「治療に対する考え方」が記載されている点である。例えば手指の屈筋腱損傷や足関節果部骨折などで、保存的治療か手術的治療か、どちらを選択するかの考え方が示されている。治療原則がわかり、病態の理解がしやすい。

そして三つ目は、動画がついている。肩の各種テストのやり方、指腱損傷の診断の方法、ハムストリング肉離れの徒手検査法、踵骨骨折での大本法のやり方など20項目がスマホで簡単に見ることができる。整形外科医へのアンケートによると一番自信のない手技は、肩関節脱臼の整復法であったそうである。私もそうで、改めてゼロポジション法、Kocher法、Stimson法の整復法を動画で確認できて大変勉強になった。図で見るのと動画では、理解のしやすさが「天と地」である。

以上のように、実際にこの本を手に取ると、買って読みたくなることは間違いがない。関西弁では「このほん、じゅうぶん、もとがとれまっせ」と言える。

呼吸器病の漢方治療ガイド-プライマリ・ケアで役立つ50処方

呼吸器病の漢方治療ガイド-プライマリ・ケアで役立つ50処方 published on

評者:小川純人(東京大学大学院医学系研究科老年病学)

近年、呼吸器疾患の分野でも漢方薬の効果と可能性に注目が集まってきており、かぜ症候群、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚥下性肺炎など、西洋医学によるアプローチだけでは必ずしも十分な効果が得られにくい症状や病態に対して、漢方薬は補完的な治療選択肢、相性の良い併用薬として活用されてきている。本書「呼吸器病の漢方治療ガイド-プライマリ・ケアで役立つ50処方」は、実地医家を含めた医療従事者が呼吸器疾患の診療・ケアに従事する際の実践的な漢方医学の手引き書でもあり、全編にわたりビジュアルに富む構成で非常に読みやすい内容になっている。

本書の特徴は、まず第一にイラストや図表を活用した解説のわかりやすさにある。漢方治療の総論と各論に大別され、前者では呼吸器疾患診療における漢方医学の考え方や診察方法などがイラストとともに解説されている。後者では、代表的な呼吸器疾患に対する漢方医学・漢方薬の活用が豊富なイラストや症例とともに具体的かつわかりやすく示されていて、初学者にもイメージしやすく抵抗なく読める工夫が随所に施されている。

さらに注目したい点として、呼吸器疾患に頻用される約50種の漢方薬について、理解しやすい患者イメージ図に加えて、構成生薬、効能・効果、使用目標などが証の考え方に基づいて丁寧に紹介されていることが挙げられる。また、西洋薬と漢方薬との併用における可能性や安全性、患者への説明ポイントなど、外来や病棟をはじめとする実臨床の現場で実際に生じうるポイントや疑問にも具体的に答えてくれる内容となっている。こうした実践的な情報が満載であるゆえに、忙しい診療の間であっても十分に活用できる点も秀逸である。

呼吸器疾患の診療に際して、多彩な症状や症候を抑えたり整えたりするアプローチは、患者のQOL向上にもつながり重要である。本書を通じて、症状、体質、体力などの要素を組み合わせた証に基づく考え方が一層浸透し、実臨床における漢方医学や漢方薬の効果的な活用につながることが期待される。

本書は、漢方医学や漢方薬処方の経験が浅い若手医師や研修医だけでなく、西洋医学や西洋薬を中心に呼吸器疾患診療を担っている医師や医療従事者にとって、診療の幅を広げてくれ頼りになる一冊となるだろう。


評者:巽 浩一郎(千葉大学医学部 呼吸器内科)

現在の保険診療では保険病名から診断をつけて,その診断名に沿った薬物療法をする.こうした医療は自宅のパソコンに向かって症状を話せば処方箋を入手できるといったAI診断などの実装化,医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入に親和性がある.さて,呼吸器内科を含む内科を標榜している医療機関には冬季,相当数の急性感染症の患者が来院する.インフルエンザである場合は抗インフルエンザ薬,細菌感染症が疑われる場合は抗菌薬,診断名に沿った薬を処方する.「風邪をひいたみたいなので何かお薬をください」とお願いされることも頻繁にあるが,「かぜ症候群」には治療薬がないので,処方は対症療法となる.著者が丁寧に取り上げているこの「かぜ症候群」には漢方治療では多様な選択肢があり,漢方治療のおもしろさ,奥深さを知っていただくにはとても良い例と思う.

著者は本書冒頭で「漢方薬は基本的に病名ではなく,いくつかの症状,体質,体力などの要素を組み合わせた証という概念を基本として投与する.この証の概念の理解が難しいため投与すべき漢方薬がなかなかひとつに絞り難いことがある.」と述べている.漢方治療に慣れていない読者に向け,第1章『漢方治療総論』では「かぜ症候群」を例に漢方の考え方,望診・聞診・問診・切診,舌診・脈診・腹診といった診察法を用い漢方薬を選択する,医師の判断の流れをわかりやすく伝えてくれている.そこをしっかり読むと漢方治療の基本がわかり,第2章『漢方治療各論』で疾患別に具体的な処方が学べ,第3章では漢方薬の構成生薬,効能・効果,使用目標=証の解説でその理解が深まる.もちろん西洋医学的治療を否定するものではなく,併用例が多数紹介されており,「+漢方薬」の効果にも説得力がある.本書を手引きに漢方治療を実践できるようになるという仕掛けである.

漢方治療は,全人的医療(心身一如の治療),全身の調和を図る医療,診断即治療の医療である.西洋医学的治療では診断に関係のない徴候は主診断からみると捨てることになる(併存症としては扱うかもしれないが).漢方治療では,可能な限りの徴候を拾って病態診断に結びつける.生体を有機体として統合的に認識する.病気でなく病人を診る.AIに簡単にとって変えられない医療のおもしろさと奥深さがある.
この本を手に取った時点で,先生は漢方治療に理解と興味を持っているはず.この本を手掛かりに,もう一歩漢方の世界に踏み込んで欲しい.きっと別の世界観が見えてくるだろう.

ニュースタンダード整形外科の臨床 1 整形外科の病態と診察・診断

ニュースタンダード整形外科の臨床 1 整形外科の病態と診察・診断 published on
Orthopaedics No.38(2025年3月号)「Book Review」より

評者:新井貞男(あらい整形外科院長)

本書は,「整形外科開業医や一般病院整形外科勤務医に真に役立つ書籍」を提供することを目的として編集された.整形外科医は新生児から高齢者までのすべての世代を,また骨折・打撲・捻挫等の急性外傷から,「腰痛症」「関節症」などの慢性疾患までを対象としている.こうした幅広い年代と疾患を整形外科外来で診察する際,短時間の診察や検査で診断を行う必要がある.疾患によっては基幹病院や大学病院の専門外来に紹介する必要がある.自院での処置治療や消炎鎮痛処置や運動器リハビリなどの保存療法で治療できるか,更には専門外来に紹介するかを診断するのは経験豊富な整形外科医でも迷うところである.そこで,従来の手術療法を主とするようなものでなく,整形外科開業医や一般病院の整形外科外来医師にとって直ぐに役立つようにと本書は編集された.

まず,『整形外科の病態と診察・診断』として第1巻が刊行された.

第1章は「運動器の病態生理と治癒機転」として,運動器の構成要素である,骨・関節・靭帯・関節包・筋・末梢神経の基礎知識と治癒機転について述べている.

第2章は「体表解剖と痛みやしびれから想定される病態」として,頚部・肩関節周辺・肘・手関節と手・胸部と背部・腰部・骨盤と股関節・大腿・膝関節周辺・下腿・足関節・足と整形外科のすべての守備範囲を網羅している.

第3章は「診察法(患者問診・診察・検査・診断)」として,頚部・肩関節周辺・肘・手関節と手・胸部と背部・腰部・骨盤と股関節・大腿・膝関節周辺・膝関節損傷・下腿・足関節・足・小児を紹介している.研修医は勿論,経験豊富な医師でも動画で診察法を再確認することは有用である.

第4章では「整形外科の代表的な病態と治療」として,痛み・炎症・急性慢性の違い・関連痛,放散痛などの病態を解説している.日常よく遭遇する,関節炎・骨挫傷,不顕性骨折・骨粗鬆症・関節リウマチ・痛風,偽痛風・肩こり・首下がり症候群・ストレートネック・いわゆる腰痛症・骨腫瘍及び軟部腫瘍・ロコモフレイルサルコペニア・成長痛などを分かりやすく解説している.

本書の特徴として写真や図だけでなく,QRコードを用いて動画を用いて解説していることである.診察法,体操療法,理学療法,装具療法などは動画で見ることにより理解しやすくなる.写真や図を何度見ても理解できなかったものも,動画を見ると直ぐに理解できる.

今までにない,現場で役立つリアルな新しい整形外科医の必携書である.

プラクティス耳鼻咽喉科の臨床 6 耳鼻咽喉科医のための診療ガイドライン活用マニュアル

プラクティス耳鼻咽喉科の臨床 6 耳鼻咽喉科医のための診療ガイドライン活用マニュアル published on
ENTONI No.304(2024年12月号)「Book Review」より

評者:本間明宏(北海道大学教授)

本書を読んで「これは診療にとても役立つ本だ!」と確信しました.耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域全般の重要な疾患・治療などについて,ガイドライン,標準治療をコンパクトに,そして具体例をあげて説明されており,非常に読みやすく,しかも,わかりやすい内容となっています.また,抗菌薬,インフルエンザ,内視鏡感染防御,抗凝固療法,造影剤の使い方,高齢者,妊産婦・授乳婦への投薬など,日常の診療でわれわれ耳鼻咽喉科・頭頸部外科医も知っておかなければならない関連領域も取り扱ってくれているのも魅力です.

《プラクティス耳鼻咽喉科の臨床》シリーズは,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の最新の進歩を取り込み,耳鼻咽喉科診療と関わる社会的状況を反映した“エビデンスとサイエンスに基づく臨床基準書”を目指して刊行されています.本書,第6巻『耳鼻咽喉科医のための診療ガイドライン活用マニュアル』は,タイトルの通り,明日からの診療における診療ガイドライン活用の道標となることを目指して作られています.

耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域全般について,それぞれの領域のエキスパートにより執筆されており,本書一冊で,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域全般に加え,上述のような関連領域についても標準的な考え・治療について知ることができます.

第1章では,ガイドラインの作成方法が述べられ,ガイドラインがどのように作られたかを知ることができます.第1章で作成方法が理解できると,ガイドラインの記載を見て,その文章に込められた思い,言外のニュアンスを感じ取ることができるのではないかと思います.日々,患者さんと向き合っている先生方は,日常診療ではガイドラインの典型的な記載では対応できない場合には,悩みながら診療していることと思います.本書では,ガイドラインに書ききれなかったすき間を埋めるような記載が多くあり,診療する際に大いに役立つと思われます.

本書で,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域全般の重要な疾患・治療などについて最新のエビデンス,ガイドライン,標準的な考えを学ぶことができ,専攻医からベテランの専門医まで有用な一冊と思います.診療のデスクに常に置いておきたい本として推薦させていただきます.