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第5回 図を描く(その2)-ひな形を使い回す(前半)

第5回 図を描く(その2)-ひな形を使い回す(前半) published on

図を使ったチャートには,同じ形の図を繰り返し使っているものがあります.そうしたチャートを作るとき,ひな形をひとつ作り,使い回すと効率よく作ることが可能です.
具体的には,ひな形を必要な数だけコピーし,位置を調整し,そのあとに文字や色を修正します.
例として下にあげるチャートを作る場合を考えてみましょう.
図1

■ひな形を選択する
効率よく作るポイントは,ひな形となる図を正しく選択することです.この図ならば,ひな形は一番下の「小児救急を含む小児医療」です.
他の長方形の図を選ばない理由は,それらをひな形に選んだ場合,最後の文字を修正するときに,文字が図からはみ出してしまうおそれがあるからです.

■コピーと位置揃えの機能を使う
それでは,チャートを作る手順を見ていきましょう.
(1)タイトルと,ひな形を描きます.
図2

(2)必要な数だけ,ひな形をコピーします.
図3

(3)コピーしてできた5つの要素を縦方向に整列させます.
(PowerPointで整列させるには,複数の図を選んでおいて[ホーム]タブ→[配置]→[オブジェクトの位置]→[配置]をクリックし表示されるメニューから配置方法を選びます)
図4

(4)5つの要素を上下方向に等間隔に並べます.
(PowerPoint で等間隔に並べるには,複数の図を選んでおいて[ホーム]タブ→[配置]→[オブジェクトの位置]→[配置]をクリックし表示されるメニューから配置方法を選びます)
図5

(5)枠の中の文字を修正すれば,完成です.
図6

■ひな形の選択の基準は
チャートを作るには,部分部分をひとつずつ作るのではなく,ひな形をひとつ作って,それを使い回す.その時に,ひな形となる図は,最も文字列の長いものや行数の多いものを選ぶようにすることが大切です.
次回は,こうしたテクニックを使って,もう少し複雑なチャートを作るための実践的な方法を紹介します.

第4回 図を描く(その1)-[shift]キーを使いこなす

第4回 図を描く(その1)-[shift]キーを使いこなす published on

複雑な内容も,図を使って説明すると,すぐに伝わることがあります.時間の限られている発表で,図を使えば効率よく理解してもらうことができます.
今回から数回にわたって,短時間で,みばえのよい図の作り方を取り上げます.第一回目は,[shift]キーを使ったテクニックを取り上げます.

  • 水平線,垂直線を描く
    何本か線を引くときに,方向を統一しておくと,すっきりきれいに見せることができます.  方向を統一するときには,[shift]キーを使います.直線や矢印を描くとき,[shift]キーを押しながら描くと,一定の角度しか線をひくことができません.この方法を使えば,いくつもの水平線や垂直線を手早く描くことができます.
    図1
  • 引出し線は整理して使う
    写真やイラストで引出し線を使うとき,[shift]キーを使って,水平線と垂直線だけを使うようにすれば,センス良く見せることができます.
    図2
  • 正方形,正円を描く
    正方形や正円といった縦横比が同一の図を描くとき,[shift]キーを使うと効率よく描くことができます.[shift]キーを押すことによって,長方形を描く機能は正方形を描く機能へ,楕円を描く機能は正円を描く機能へと変わります.
    さらに,いったん描いた正方形や正円の形の大きさを調整するとき,[shift]キーを押しながら拡大や縮小を行えば(四隅のハンドルをドラッグすれば),縦横比を同一にしたまま,大きさを変えることができます.
    図3
    また図を移動する場合,[shift]キーを押すと,水平・垂直方向にしか移動できなくなるので,位置を整えるときに便利です.

第3回 スライドの枚数は時間で決める

第3回 スライドの枚数は時間で決める published on

発表用の資料を作るときに,スライドの枚数は,どのように決めていますか.
「一枚ずつ言っておきたいことを入れて作っていったら,この枚数になった」
そう答える人は少なくありません.発表で言っておきたいことをすべて盛り込んだ結果としての枚数ということですが,このやり方では,発表時間で説明が全部収まらなかったということになりかねません.

■発表時間から枚数を考えてみる
スライドの枚数は伝えておきたい内容ではなく,発表時間から考えるようにしましょう.短い時間の発表ならば,一枚のスライドは30秒から1分間.少し時間がある発表の場合ならば,一枚,2分間から,どれほど長くても4分間程度までにしておきます.短時間でスライドを切り替えれば,理解が未消化になったり,せわしない印象を与えたりする一方で,同じスライドをあまり長い時間見せられれば,視覚的に飽きてしまい,内容への関心も低下してしまいます.
もちろん,ちょっと見せればよいだけのスライド,たとえば表紙や目次であれば,もっと短くてもいいですし,ムービーを使ったものであれば長くても大丈夫です.

■「このスライドでは,このことについて理解してもらう」をはっきりと
短時間で,内容を確実に伝えるには,一枚一枚のスライドで,何を伝えるかをはっきりさせておく必要があります.たとえば1分間で説明するスライドであれば,その1分間という時間を使って説明し,1分後に何が伝わっていればよいかを明確にしておきます.
スライドで理解してもらいたいことが決まったら,そのために必要不可欠な情報が何かを考えます.このときのポイントは本当に必要なものだけに絞ることです.関連があるからといって,あれもこれもと入れていけば,盛りだくさんとなり,限られた時間で内容を理解することができなくなってしまいます.
思い切って余計なものを捨て去ったら,より理解しやすい見せ方を検討し,表現を決めてゆきます.

第2回 発表用スライドの変遷を語る

第2回 発表用スライドの変遷を語る published on

第2回は発表用スライドの変遷について取り上げます.(本稿は『驚くほど相手に伝わる学会発表の技術』の「発表用スライドの変遷と本書の位置づけ」を抄録しました)

まず,パソコンの代表的なプレゼンテーションソフトであるPowerPointが1987年,Aldus Persuasionが翌1988年に米国でリリースされ,パソコンを活用したスライドによる発表が本格的にスタートした.

・導入期
米国に出張した医師がプレゼンテーションソフトで作成された35ミリフィルムによる発表を目にして国内に導入した.併行してほぼ同時期に外資系企業の日本法人がプロジェクタを使った発表にプレゼンテーションソフトで作成された資料を使用していた.

・普及期
90年代後半に職場や家庭にパソコンが急速に普及し,プレゼンテーションソフトも広まっていく.さらにカラープリンタやプロジェクタの普及で,カラーの資料も珍しくなくなっていったが,その一方で,けばけばしい色づかいや「またあれか」と思わせる使い古されたデザイン,意味のないアニメーションがしばしば使われ,どのような資料を作ったらよいのか答をさがす模索と混乱が続けられた.

・デザイン期
混乱にピリオドを打ったのはアップルのスティーブ・ジョブズによるプレゼンテーションだった.洗練されたデザインと自信にあふれる姿は多くの人に大きなインパクトを与え,さまざまな分野で真似しようという人が現れた.一般の人にもデザインの重要性が改めて認識された.
しかしながら,実際に真似して説明してみると期待したような成果が得られない.あらためて考えてみると,スティーブ・ジョブズが行うプレゼテーションは,構想や新ビジネスや新商品を説明する場で,革新的な内容,説明スタイル,受け入れる聴衆が揃って成り立つものだということに気づき,スタイルだけまねてみてもうまくいかないということがはっきりしていった.
現在 ,デザインの重要性を踏まえながら,演出過剰にならないで伝えるべき内容をきちんと伝えるためにはどうすべきかが課題となっている.

『驚くほど相手に伝わる学会発表の技術』は,その答を提示しようとしてまとめたものである.

発表用スライドの変遷