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はじめての学会発表 症例報告

はじめての学会発表 症例報告 published on

ああ,この本があったら,もっとクールな発表ができただろうな……

medicina Vol.53 No.9(2016年8月号) 書評より

書評者:山中克郎(諏訪中央病院総合内科)

私は國松淳和先生の活躍を非常に期待している.ユニークな課題へ果敢にチャレンジする精神,そして問題解決における着眼点が素晴らしい.不定愁訴や不明熱という皆が苦手な領域にもグイグイと切り込んで,理論的にわかりやすく解説していく.この本では「学会発表」「症例報告」がテーマである.
國松先生(Dr. K)の熱い指導を受けて,かわいい初期研修医が初めて学会報告を準備する様子が描かれている.「先生,学会で症例発表してみない?」と指導医から突然言われたら,研修医は緊張するだろうな……
まず症例の選び方,次に発表する学会をどう決めるかである.そして,抄録作成が始まる.漫画が効果的に使用されているので,若手医師は大事な流れをつかみやすいだろう.初期研修医による抄録の実例が提示されている.
作成された抄録に対する國松先生による赤ペン添削の実録まで記載されているのが嬉しい.「そうか,こんな点に着目してアドバイスすればいいのか」と若手医師から修正を頼まれる指導医にとっても大変参考になるに違いない.スライドで用いる視覚的効果の高い図表づくりでは.「セクシーかどうか」がポイントだという.なるほど,こんなスライドなら臨床経過は一目瞭然だ.聴衆を一気に魅了するに違いない.ポスター発表の準備では口演とは異なり「盛り込む」作業の重要性が強調されている.
最後は発表した内容を英語論文にすることである.ここまでできれば素晴らしい.この症例報告により,世界の誰かの命を将来救うことができるかもしれない.巻末には國松先生に指導を受けた先輩達からの温かいアドバイスがついている.
私の初めての学会発表は米国での基礎医学の学会においてだった.スーツで身を包み緊張でガチガチになりながら,たどたどしい英語で発表した.私の次に壇上に現れたのは,スポーツウェアを着た若者である.公園をジョギングし帰ってきたばかりという格好である.流れるように発表を終えフロアから多くの質問を受ける.隣でボスが「あの研究は最近Natureにアクセプトされたものだ」とつぶやくのを聞き,「学会発表は外見ではない,中身こそ大切」と思い知らされた.ああ,この本があったら,もっとクールな発表ができただろうな……


具体的ノウハウがスラスラと分かる

メディカル朝日 2016年8月号 BOOKS PICKUPより

多くの研修医を指導してきた著者が、経験をもとに学会発表・症例報告のノウハウをやさしくひもとく。指導医、初期研修医、後期研修医の3人が登場するマンガで、学会発表を勧められる場面から実際の発表後までの流れを解説した。それぞれの段階で基本的かつ重要な事項の解説と知っておきたい知識、エッセンスがまとめてあり分かりやすい。指導医にも大いに役立つ。

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号24-2029)
朝日新聞出版に無断で転載することを禁止します

高齢者プライマリケア漢方薬ガイド-チーム医療で必ず役立つ56処方

高齢者プライマリケア漢方薬ガイド-チーム医療で必ず役立つ56処方 published on

初学者でも抵抗なく漢方薬を使える配慮が随所に散りばめられている

総合診療 Vol.26 No.8(2016年8月号) GM Library 私の読んだ本より

書評者:前野哲博(筑波大学附属病院総合診療科)

このたび,『高齢者プライマリケア漢方薬ガイド』が上梓された.著者の加藤士郎先生は,大変お忙しい診療の傍ら,毎週,当大学の医学生に懇切丁寧にご指導いただいている.また,頻繁に漢方セミナーを開かれ,漢方に興味をもつ医療者への指導にも熱心に取り組まれている.本書は,先生の温かいお人柄そのままに,初学者でも抵抗なく漢方薬を使える配慮が随所に散りばめられている.
漢方にあまり詳しくない医師でも,能書や解説本を読めば,候補となる薬剤をリストアップするのは,ある程度可能である.問題は,実際に処方する薬を1つに絞り込むところであり,どうしてAやBではなくCを選択するのか,という理由づけが難しい.もちろん,それぞれの使用目標となる証は書いてあるのだが,いわゆる「病名漢方」のレベルにとどまっている初学者には理解が難しい.また,薬理学的機序で分類できる西洋薬と異なり,漢方薬は1つひとつの薬剤のイメージを把握するのが難しいことも大きなハードルになっている.
本書は,初学者のこのような状況を熟知したうえで,迷わずに処方薬を決定できるような工夫が凝らされている.高齢者のプライマリ・ケアにおいて遭遇することの多い29の疾患・病態それぞれについて,まずファーストラインとなる薬剤が3つ示される.そして,その3つを使い分けるポイントが明快に示されている.特筆すべきは,その3つの薬剤について,イラストで適応となる患者のイメージと使いこなしのポイントが明示されていることである.さらに,典型例の症例提示,それぞれの構成生薬や使用目標のまとめが示されているので,各薬剤の位置づけを感覚的に理解でき,よりスムーズな薬剤選択につなげることができる.
それに加えて,体力と急性期~回復期のステージ別に薬剤の位置づけが一覧表で示され,処方期間や減量・中止の進め方も記載されている.まさに至れり尽くせりで,この一冊があれば,あまり経験のない医師でも,かなり安心して漢方治療を始めることができるだろう.
また,本書の副題は「チーム医療で必ず役立つ56処方」である.本書は,医師以外の看護師・薬剤師はもちろん,介護職や事務職,一般の方にも役立ててもらうことを意図して執筆されており,イラストを多用し,平易で簡潔な文章で記載されている.もちろん,難しい証の話は一切出てこない.まさに,漢方に気軽に取り組んでみたいすべての方に,お勧めの一冊である.


これから漢方を手がけたいと思っている医療従事者必携

Medical Tribune 2016年4月28日 本の広場より

漢方薬は,疾患を臓器ごとに診断する近代西洋医学と異なり,患者の容体や症状を診ながら処方する。本書は,そうした漢方薬の処方を患者の訴えが多い29疾患に絞り込み,実地診療での活用を図っている。各疾患の処方に広く有効性が認められているファーストラインの3処方の選択を中心に,その適応症状や処方のポイントを平易な文章とイラストで分かりやすく解説。各症例は主訴から始め,現病歴,現症,治療など各項目にわたり具体例を示している。これから漢方を手がけたいと思っている医療従事者必携のガイドブックである。


ビジュアルで理解できるポケット版

メディカル朝日 2013年8月号 BOOKS PICKUPより

高齢者で漢方薬を用いることが多い29疾患について、症状、体質、体力などの要素を組み合わせた随証投与という方法を用い、まず挙げられる三つのファーストライン・3処方の典型的な選択を紹介する。3処方の違いは一目で分かるイラストで、それぞれの構成生薬、症状と使用目標、使用時期と期間を表で、症例も示した。医師、コメディカル、患者にも読みやすい解説

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レジデントのための薬物療法 呼吸器内科 薬のルール73!

レジデントのための薬物療法 呼吸器内科 薬のルール73! published on

実践的な知恵が平易に身に着く

メディカル朝日 2014年2月号 BOOKS PICKUより

種類が多く難解に感じる呼吸器疾患の薬物療法のポイントをつかみやすく、臨床現場ですぐに役立つように解説した一冊。喘息を合併しているか迷う時の対処は? 治療はいつまで続ける? 分子標的薬の使い方は? かぜに薬は必要? しゃっくりはどう治す?…など、興味を引くテーマに、図入りの見開きページで端的に答え、様々な日常診療の疑問を解決。

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号24-0347)
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総合診療専門医シリーズ まんが めざせっ! 総合診療専門医

総合診療専門医シリーズ まんが めざせっ! 総合診療専門医 published on
メディカル朝日 2015年10月号 BOOKS PICKUPより

楽しく誇りを持てる総合診療医への道

後期研修医の夏期セミナーやオリエンテーション、病棟研修、救急研修、在宅診療研修、診療所研修などを通じて学んでいく過程を読みながら、総合診療とはどういった診療科なのか、その魅力を知るコミック。指導医からのワンポイントレッスンも実践的。さらに、2017年からの新専門医制度で設置される総合診療専門医の資格取得に向けて何を学ぶべきかも教示する。

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離島発 いますぐ使える! 外来診療 小ワザ 離れワザ

離島発 いますぐ使える! 外来診療 小ワザ 離れワザ published on

“Experience Based Medicine”の数々

メディカル朝日 2014年9月号 BOOKS PICKUP

島根県隠岐諸島の西ノ島で総合医として16年間地域医療を支えてきた著者らが、医療機器や専門医に恵まれない限られた環境の中であみ出した「小ワザ」「離れワザ」を紹介する。どれも創意工夫に満ちていて興味深く、特にエコーの様々な使い方は参考になる。また住民に濃密に関わりながら熱心かつ大らかに診療する現場の情景が伝わってきて、読む者にも力が湧いてくる。

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見逃せない・よくある 外臓疾患の診かた・みつけかた

見逃せない・よくある 外臓疾患の診かた・みつけかた published on

主要症候から診療を進めるノウハウ

メディカル朝日 2012年7月号 p.79 BOOKS PICKUPより

「外臓」疾患は、内臓疾患のように血液や画像診断によらず、患部をよくみることが必要となる。しかし臨床研修が必須ではないため、苦手とする医師が多い。眼、耳、口・のど、皮膚、泌尿器、運動器の主要症候の検査・手技、症候・疾患、全身病・他疾患診断への診かたについて、フルカラーの図表や写真とともに、すべての医師に知ってほしいポイントを丁寧に解説した。

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号24-1461)
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マイナー科が苦手な方には特にお薦め

KOKUTAI 2012年4月号 informationより

内臓に対して眼、耳、鼻、口・喉、皮膚、泌尿器、運動器などの外臓疾患の診療に役立つテキストが本書です。主要な症候から診断・治療を進めるノウハウが詳しく解説されている他、オールカラーで写真やイラストも豊富に掲載されていますので、研修医になってからも心強い味方になってくれるはず。マイナー科が苦手な方には特にお薦めです。

マイナスから始める 医学・生物統計

マイナスから始める 医学・生物統計 published on
メディカル朝日 2012年11月号 p.84 BOOKS PICKUPより

前提となる「考え方」から学ぶ

多くの定理や公式のように、毎回普遍の答えに結び付かない統計学。予定調和の考え方に基づいた学問で、数学の一環として学ぼうとすると挫折しがちだ。医学・生物統計学的検定の考え方を理解するために書かれた本書は、その楽しさを日常的なたとえでユーモアを交えながら読みやすく伝える。途中で閉じてしまった統計学入門書を再読する前に読みたい一冊。

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脳卒中データバンク2015

脳卒中データバンク2015 published on

日本の脳卒中の現状を浮き彫りに

メディカル朝日 2015年6月号 p.85 BOOKS PICKUPより

世界でトップクラスの登録者数による急性期脳卒中患者のデータを詳細に解析して臨床の現状を映し出す、貴重で多角的な情報集。本版では、1999年から2012年までの大規模な登録データによって年次推移も追えるようになり、超高齢化による心原性脳塞栓症の増加や、脳ドックなどでの予防手術によるくも膜下出血の減少傾向、t-PA承認後のデータなども解析した。
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日本における脳卒中の現状を浮き彫りにする好評書

Medical Tribune 2015年4月23日 本の広場より

2003年の初版発刊以来,脳卒中データバンクでは着実に参加施設や登録例数が増え続け,海外にも知られるようになった。本書は,2009年版から倍以上に増えた10万例を超える急性期脳卒中患者の登録データを集計・解析した全面改訂版。大規模データならではの多角的な解析で,日本における脳卒中の現状を浮き彫りにする好評書。登録開始から13年以上を経て年次推移も追えるようになった上,超高齢社会の問題点や脳ドックの脳卒中発症予防効果,新薬の治療効果などに関してもグラフや図表で解説している。

チーム医療を成功させる10か条

チーム医療を成功させる10か条 published on

「チーム医療人」に最適のテキスト

看護実践の科学 Vol.38 No.13(2013年12月号) Booksより

書評者:陣田泰子(恩賜財団済生会横浜市南部病院)

今,医療・福祉の現場で一番使われている言葉が「チーム医療」であることは間違いない。日々の会話での使用頻度の高さもうかがい知れよう。昨今の学会誌・専門書籍などを開けば本テーマが目に入ってくるほどホットな話題である。
古くて,なお新しいこのテーマが今なぜ再燃したのだろうか。本書の冒頭で著者が述べるように2009年,厚生労働省肝いりの「チーム医療の推進に関する検討会」の発足がその機であろう。しかし実際には1997年の入院計画書への医師以外のチームメンバーの記入,その後に続いた各種チームに点数化された診療報酬により政策誘導的に「チーム医療が推進させられた」のである。そのように誘導しなければ進んでいかなかったことに,この問題の深い根が見えてくる。
表層をたどると簡単に映るこの問題を,そうはしなかったところに本書の特徴がある。「表と裏」「プラスとマイナス」,よいことばかりでないのが現実である。著者はジャーナリストとしての視点と方法論を用いて,その両面を探り,「どのようによいことに近づけていくか現場は模索している。時間的経過,プロセスを丁寧に取材し追跡する」。「その足跡をたどる仕事はメディアの役割と感じた」という著者の言葉にその姿勢が見て取れる。
第1章「チーム医療の意義とチーム作りのポイント」では,チーム医療がなぜ今求められているのか,時代背景から記述されている。最初に読んだときは,ここが<山場>であり,後半に続くカギとなるので,もう少しページを割いてあればよいのに……と感じた(その後の感想は後述する)。
第2章は「チーム医療を成功させる10か条―現場に学ぶチームメンバーの心得」である。それぞれの成功要因にふさわしい具体的な病院をあげながら説明しているところに著者の「取材力」が示されている。通常ならば10か条をあげ解説で終わらせてしまいかねないところを,現実を証拠として見せながら各チームの特徴を見抜き,10か条を導き出している。
第5章は「チーム医療の課題―病院経営と患者参加」である。私が第1章で「現実はもう少し……」と思った部分が,実はここに表現されていた。
各職種の専門性とスキルが整理された第6章「チームメンバーの専門性とスキル」は,「多職種協働」をテーマとした研修などの際に即,役立つ。すでに私は参考にさせていただいた。


大勢の声をくみ上げた実践的ヒント集

メディカル朝日 2013年10月号 BOOKS PICKUPより

本誌で連載した記事に加筆。全国12施設をモデルケースに、いかにチーム医療を作り、進化、成熟させていくか、具体策をまとめた。チーム作りのポイント、活発で継続可能なチーム医療に必要な「心得」の提言を中心に、その卒前教育、評価にも触れ、課題克服の術として病院経営と患者参加に焦点を当てて解説した。多岐にわたる職種の専門性や診療報酬加算も簡潔に紹介。

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号23-2330)
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総合小児医療カンパニア 予防接種マネジメント

総合小児医療カンパニア 予防接種マネジメント published on
メディカル朝日 2013年8月号 BOOKS PICKUPより

接種の実際に役立つ情報を整理

PC医が基礎臨床能力を備えて総合診療力を高めることを目標に刊行中の、全10巻シリーズ2巻目。今年4月の予防接種法改正の最新情報にのっとり、総論でワクチンの基礎知識、在庫管理、接種勧奨・実践法、個別の接種スケジュールの立て方、接種ミス回避法、保護者の質問への答え方などを、各論では各疾患の概説、接種目的・方法、副反応、注意事項を詳しく解説した。

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号24-2029)
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本書の執筆者たちの願いは,わが国のすべての子どもたちが,あらゆるVPDの脅威から確実に守られること

小児科診療 Vol.76 No.8(2013年8月号) 書評より

評者:松平隆光(松平小児科)

今ほど子どもの医療に携わる医療関係者が予防接種に関心をもったことはない.これは,定期接種の種類が増え,ワクチンで防げる病気(vaccine preventable diseases: VPD)から子どもを守ることの重要性を再認識したためである.しかし,ワクチンを安全に有効的に使うためには,日々変るワクチン事業に精通しておく必要がある.
本書は毎日臨床の第一線で予防接種の実務に携わっている小児科医が執筆者となっており,その内容は豊富な知識と経験によるものである.また読者が理解しやすいように「ワクチンについて知る」,「ワクチン接種を行う」,「役に立つ情報を利用する」の3部から構成されている.2013年3月に可決・成立した予防接種法改正案を盛り込み,各ワクチンの接種法はもちろん,ワクチンプラン,接種勧奨のタイミング,予診票のチェック,ワクチン在庫管理,副反応への対応,接種ミス回避など,接種医として当然知っておくべき事項が記載されている.
本書の執筆者たちの願いは,わが国のすべての子どもたちが,あらゆるVPDの脅威から確実に守られることである.


パンを切り分けて食べるように実地医家の先生方の知識が惜しみなく分け与えられている

小児内科 Vol.45 No.6(2013年6月号) Book Reviewより

評者:窪田満(埼玉県立小児医療センター総合診療科)

この本は,「総合小児医療カンパニア」シリーズの2冊目である。「カンパニア」とは,パンを分け合う人々という意味とのことである。そういえば,「カンパーニュ」という素朴なパンがある。そのパンを切り分けて食べるように,実地医家の先生方の知識が惜しみなく分け与えられているのが,このシリーズの最大の魅力だろう。
例えば,今まで数多くの予防接種に関する本が出ているが,ワクチンの発注の仕方を教えてくれる本はあっただろうか。保護者の質問にどう答えるか,接種ミスを起こさないようにするにはどうするかなど,ガイドラインを読んだだけでは分からないような,明日から役に立つ知識が記載されており,執筆者の先生方の真摯な思いに触れる気がする。本物の小児科医がそこにいて,大切なものを分け与えてくださっている感覚だ。
各論では,各ワクチンに関する解説の後の「接種勧奨に役立つフレーズ」や「このワクチンのツボ」が興味深い。さらにその後の1ページに,患者さんにそのままコピーをお渡しできる解説文が記載されている。ここまで実地医家の先生方が,その知識,技術を分け与えてくださるのかと,感嘆せざるを得ない。文書類の解説も,実に実際的である。
この分け与えて頂いたカンパーニュは,見た目は派手ではないが,経験に裏打ちされた,味のある,素晴らしいものである。この本を,予防接種に関わる全ての小児科医にお勧めする。


子どもたちと保護者に寄り添う医療のための秘訣や知恵が凝縮された一冊

田中美紀(一般社団法人 細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会 代表理事)

一般社団法人 細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会の田中です.私たちの会は,2006年以降,細菌性髄膜炎を患ったご本人,お子さんをもつご家族,医療従事者,一般の賛同者で構成され,当事者家族の交流や疾患の情報提供などとともに,日本で起こる細菌性髄膜炎の多くを防ぐことのできるヒブ,小児用肺炎球菌ワクチンの導入・普及を訴えてまいりました.
その過程で,全国の多くの小児科の先生方からご支援やご助言を得,そして私たちの声に耳を傾け,ともに行動を起こしてくださった結果,切に願ったヒブ,小児用肺炎球菌,両ワクチンの定期接種化へとつながりました.
本書でも指摘されているように予防接種制度にはまだまだ多くの課題が残されておりますが,一歩前進したことはたいへん喜ばしいことです.しかしながら,いくら目の前に良いワクチンがあり,制度が整っても実際に接種行動を保護者に起していただかなければ,子どもたちを守ることはできません.まだ判断力がない幼い子どもたちに代わって,保護者が理解し納得したうえで接種することが必要不可欠になってまいります.
しかし,保護者の知識や理解度も千差万別なため,各保護者にマッチした説明や情報提供が必要です.精選された先生方が小児医療の現場で培われた豊富なご経験をもとに書かれた知識,手法,アドバイスは,多くの疑問や不安を抱える保護者に寄り添い,良い関係の元で子どもたちを守ろうと思ってくださる医療者にとって必読の内容だと感じました.
また,専門知識の乏しい私にも理解できるような情報の整理がなされてたいへん読み進めやすく,医師だけではなく小児の予防接種に関わるすべての方に読んでいただきたいオススメの一冊となっています.