「チーム医療人」に最適のテキスト

看護実践の科学 Vol.38 No.13(2013年12月号) Booksより

書評者:陣田泰子(恩賜財団済生会横浜市南部病院)

今,医療・福祉の現場で一番使われている言葉が「チーム医療」であることは間違いない。日々の会話での使用頻度の高さもうかがい知れよう。昨今の学会誌・専門書籍などを開けば本テーマが目に入ってくるほどホットな話題である。
古くて,なお新しいこのテーマが今なぜ再燃したのだろうか。本書の冒頭で著者が述べるように2009年,厚生労働省肝いりの「チーム医療の推進に関する検討会」の発足がその機であろう。しかし実際には1997年の入院計画書への医師以外のチームメンバーの記入,その後に続いた各種チームに点数化された診療報酬により政策誘導的に「チーム医療が推進させられた」のである。そのように誘導しなければ進んでいかなかったことに,この問題の深い根が見えてくる。
表層をたどると簡単に映るこの問題を,そうはしなかったところに本書の特徴がある。「表と裏」「プラスとマイナス」,よいことばかりでないのが現実である。著者はジャーナリストとしての視点と方法論を用いて,その両面を探り,「どのようによいことに近づけていくか現場は模索している。時間的経過,プロセスを丁寧に取材し追跡する」。「その足跡をたどる仕事はメディアの役割と感じた」という著者の言葉にその姿勢が見て取れる。
第1章「チーム医療の意義とチーム作りのポイント」では,チーム医療がなぜ今求められているのか,時代背景から記述されている。最初に読んだときは,ここが<山場>であり,後半に続くカギとなるので,もう少しページを割いてあればよいのに……と感じた(その後の感想は後述する)。
第2章は「チーム医療を成功させる10か条―現場に学ぶチームメンバーの心得」である。それぞれの成功要因にふさわしい具体的な病院をあげながら説明しているところに著者の「取材力」が示されている。通常ならば10か条をあげ解説で終わらせてしまいかねないところを,現実を証拠として見せながら各チームの特徴を見抜き,10か条を導き出している。
第5章は「チーム医療の課題―病院経営と患者参加」である。私が第1章で「現実はもう少し……」と思った部分が,実はここに表現されていた。
各職種の専門性とスキルが整理された第6章「チームメンバーの専門性とスキル」は,「多職種協働」をテーマとした研修などの際に即,役立つ。すでに私は参考にさせていただいた。


大勢の声をくみ上げた実践的ヒント集

メディカル朝日 2013年10月号 BOOKS PICKUPより

本誌で連載した記事に加筆。全国12施設をモデルケースに、いかにチーム医療を作り、進化、成熟させていくか、具体策をまとめた。チーム作りのポイント、活発で継続可能なチーム医療に必要な「心得」の提言を中心に、その卒前教育、評価にも触れ、課題克服の術として病院経営と患者参加に焦点を当てて解説した。多岐にわたる職種の専門性や診療報酬加算も簡潔に紹介。

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