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講座 スポーツ整形外科学 1 整形外科医のためのスポーツ医学概論

講座 スポーツ整形外科学 1 整形外科医のためのスポーツ医学概論 published on
臨床スポーツ医学 Vol.39 No.1(2022年1月号)「書評」より

評者:丸毛啓史(学校法人慈恵大学理事)

「整形外科医のためのスポーツ医学概論」は,全4巻で構成される〈講座 スポーツ整形外科学〉シリーズの第1巻で,スポーツ整形外科診療をサポートする実践書として,スポーツ整形外科学の基礎と臨床のすべての内容が体系化されている.
スポーツ医学は,内科,整形外科などの臨床医学をはじめ,体育学,運動生理学,薬理学,栄養学,心理学などの基礎医学や予防医学,さらにはフィールドの最適化やスポーツ器具の開発,改善などのマテリアル研究をも含めた幅広い領域にわたる学問である.このため,自らの専門分野に留まらず,他分野に関する知識や理解が必須である.本書では,こうした広い裾野を持つスポーツ医学の基本となる考え方や基礎知識について解説し,さらにはスポーツ医学の研究手法についても紹介している.また,スポーツ外傷・障害の予防,治療原則,スポーツ整形外科医が知っておくべき他領域の疾患・外傷,スポーツ種目別運動器外傷・障害の特徴について詳説し,実践に役立つ知識が習得できるように工夫している.
スポーツ医学は,近代オリンピック開催を契機として,オリンピックとともに大きく発展してきた.東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が2021年夏に開催され,アスリートの躍動感が脳裏に残るこの時期に,スポーツ整形外科学のテキストシリーズの第1巻である「整形外科医のためのスポーツ医学概論」が上梓されたことは,まさに時宜を得ている.本書は,スポーツ医学の研究や臨床において優れた業績を持っておられる多くの先生が執筆しており,スポーツ医学,スポーツ整形外科に携わる方々の座右の書となることを確信している.

講座 スポーツ整形外科学 3 下肢のスポーツ外傷・障害[大腿・膝関節・下腿・足関節・足部]

講座 スポーツ整形外科学 3 下肢のスポーツ外傷・障害[大腿・膝関節・下腿・足関節・足部] published on

スポーツ整形外科診療に携わる方々の手元に常に置いておきたい実践書

臨床スポーツ医学 Vol.38 No.12(2021年12月号)「書評」より

評者:小川宗宏(奈良県立医科大学スポーツ医学講座)

本書「下肢のスポーツ外傷・障害」は,松本秀男氏が総編集者を務める〈講座 スポーツ整形外科学〉シリーズの1冊として発刊されたものである.松本氏の“シリーズ刊行にあたって”にも述べられているように,スポーツ整形外科は,スポーツ活動での高いパフォーマンスの維持,スポーツ復帰や継続を常に見据えた予防・治療が求められ,運動器の外傷や障害の予防・治療方針決定において,一般の整形外科とは異なる特徴を持ち,アスリートの特殊性,競技種目の特徴,整形外科以外の幅広い知識も要求される.本シリーズでは,スポーツ外傷・障害の予防のためのトレーニングなどを含めて紹介し,さらに治療については単に日常生活に復帰するばかりではなく,スポーツ復帰を念頭に置いて解説するように企画されており,本書もスポーツ整形外科に特徴的な実践書として,各スポーツ外傷・障害の予防と治療の実際を視覚的にもわかりやすく解説している.
本書編者の近藤英司氏も述べているように,下肢はスポーツ外傷・障害が最も発生しやすい部位である.アスリートはもとより子供から高齢者まで広くスポーツが行われるようになり,スポーツ外傷・障害も多様化し,それぞれが求めるレベルへの復帰を支援するためにスポーツ医学領域の最先端医療技術に基づいて適切な治療を行わなくてはならない.本書の特徴は,実際のスポーツ現場における診断の進め方,競技特性を考慮した予防的アプローチ,スポーツ復帰を目指した治療の進め方,競技復帰に向けてのポイントなどに重点を置いて解説されていることであり,スポーツ医学を専門としている整形外科の先生方のみならず,スポーツ整形外科を志す学生,専攻医,スポーツ現場で活躍されているメディカルスタッフにとっての必読書としてお薦めの一冊である.
本書はスポーツ整形外科の臨床特有のアプローチにフォーカスし,写真・イラストを多用したビジュアルな構成になっており,スポーツ外傷・障害の予防と治療・競技復帰に向けたスポーツ整形外科診療に携わる方々の手元に常に置いておきたい実践書であると思われる.

整形外科手術イラストレイテッド 下腿・足の手術

整形外科手術イラストレイテッド 下腿・足の手術 published on
Orthopaedics Vol.33 No.5(2020年5月号)「Book Review」より

評者:山本晴康(愛媛大学名誉教授/千葉・柏リハビリテーション病院院長)

現代は高齢化が進み,加齢による変形,変性,筋力低下,老化を予防するためのスポーツ活動,代謝障害などにより下腿・足関節・足部の外傷・障害が増えている.立位・歩行・走行が損なわれ,日常生活に支障をきたす方が増加し,整形外科の外来を受診して,手術に至ることが多い.
手術を受ける患者さんは,手術が合併症なく成功し,手術後早期に元の生活,元のスポーツに復帰することを強く希望している.そのため手術に携わる者には安全,確実な手術が要求される.
これらを目的の一つとして日本足の外科学会は2008年より「日本足の外科学会教育研修会」,2010年より「足の外科普及プロジェクト」,2013年より「機能解剖セミナー」を毎年開催し,足の外科に興味がある方々のレベルアップを図っている.
本書の専門編集の木下光雄先生は日本足の外科学会の前理事長で,在任中は前述の企画を強力に推進された.その流れから先生は整形外科の先生方の下腿,足関節,足部の手術の更なるレベルアップを図るために本書を上梓されたのではないかと推察する.
本書の構成は,Ⅰ 進入法,Ⅱ 手術法:骨・関節外傷の手術,軟部組織の手術,絞扼性神経障害の手術,足関節の手術,足関節症の手術,足変形の手術,趾変形の手術,小児足変形の手術,切断術・関節離断術となっていて,現在遭遇する頻度の高い疾患を取り上げている.また,近年行われている関節鏡視下手術,最小侵襲手術などの手術手技も取り込んでいる.
執筆は日本足の外科学会の理事・評議員の方々で,それぞれの分野に精通している実力者である.本書の特徴は簡にして要を得ている解説(分担執筆にもかかわらず文体が一定で読みやすい),大きく美しいイラスト(木下先生はレオナルド・ダ・ヴィンチの解剖図を意識されたようである),分かりやすい術中写真とX線像,手術の際に注意するポイントとコツの書き込みなどであり,さらに動画が理解を深めるために役立っている.
評者は術前に必ずイメージ手術を行い,不確かな場合は解剖書や手術書を紐解き手術手技を確実にし,手術に臨んでいる.本書はそのために大変有用である.また手術室に持ち込んで困った時に参考にすることもできるだろう.
以上に述べたようにイラストや術中写真が多く,読みやすく,理解し易い本書は,下腿・足の手術を行う整形外科の専門医や認定医,そして整形外科を目指している研修医や専修医,また手術を手伝っていただく看護スタッフに自信をもってお薦めできる一冊である.

整形外科診療のためのガイドライン活用術

整形外科診療のためのガイドライン活用術 published on
Orthopaedics Vol.32 No.11(2019年11月号)「Book Review」より

評者:山下敏彦(札幌医科大学医学部整形外科学講座)

2005年に初めて日本整形外科学会から「腰椎椎間板ヘルニア」「頸椎症性脊髄症」など5疾患に関する診療ガイドラインが発行されて以来,徐々に対象疾患は広がり,現在では整形外科疾患のガイドライン数は16にのぼる.さらに「骨粗鬆症」「関節リウマチ」など整形外科関連・周辺領域も含めると,きわめて多くのガイドラインが存在する.診療ガイドラインは,本来,診断・治療の標準化をはかり,より安全で有効な医療の実現を目指すものである.しかし,これだけ多くのガイドラインに囲まれると,その全てに目を通し内容を把握することは困難であり,また実際の臨床症例に適用する際にも若干の戸惑いや躊躇を覚えることもある.
このような状況を背景に,本書は,整形外科医が様々な疾患の標準治療の概要を短時間で把握でき,ガイドラインの実臨床でのスムーズな適用が可能となるよう配慮されている.日常の整形外科診療において頻繁に遭遇する疾患ごとに,まず「概要」「診療ガイドラインの現況」「標準治療のポイント」が簡潔に解説されている.ここで,読者は各疾患治療の「トレンド」について頭の整理ができる.次に,具体的な症例を「典型例」「非典型例」に分けて提示し,ガイドラインに沿った実際の治療の考え方と進め方を示している.実臨床における症例はもちろん画一的ではなく,臨機応変な対応が求められるが,本書では非典型例など多くのバリエーションを示している.さらに「患者説明のポイント」の項目を設けるなど,臨床の現場を意識しているのが大きな特徴と言える.また随所に診断・治療の流れがアルゴリズムで示されているのも理解の助けとなるだろう.
疾患の中には,まだ診療ガイドラインが存在しないものも含まれる.これらに対しては,海外のガイドラインを紹介したり,現状におけるエキスパートコンセンサスを提示して,それらに沿った標準的治療が解説されている.本書の最終章「リスク管理」では,「疼痛管理」「術後感染予防」「症候性静脈血栓塞栓症の予防」「医療放射線被曝」など,整形外科臨床において極めて重要なテーマについて最新の考え方や対処法が簡潔にまとめられており,本書の最も有用な部分の一つとなっている.
本書は,多くの診療ガイドラインが林立する現代の整形外科というフィールドを,われわれ整形外科医がスムーズかつ安全に往来するための有用な「ガイド」となってくれるだろう.

整形外科手術イラストレイテッド 頚椎・胸椎の手術

整形外科手術イラストレイテッド 頚椎・胸椎の手術 published on

通読すべき価値のある手術書─術式はどこかで繋がっている

Orthopaedics Vol.31 No.8(2018年8月号) BookReviewより

評者:米延策雄(大阪行岡医療大学)

どのような手術書を読んだのか? それを聞くことで,その外科医の技量が分かる,と考えていた.しかし昨今,大部の手術書は持っていないと答える若い脊椎外科医がいる.どのような方法で知識を得ているのか? 月刊誌の特集や単独術式についてのMookが多いという.日本の医学書出版業界のパワーに感心するとともに一抹の寂しさ,不安を感じる.より抜きの知識で手術ができるのか? 危機に対応できるのか? 技量の発展性はあるのか?
外科医に社会が求めているのは,「神の手」だろうか? 否,患者の状態に応じた手術が,標準的にできる外科医だろう.そのような外科医たるには教科書的な手術書を何度も通読して欲しい.いろいろな術式はどこかで繋がっている.
その意味で本書は通読すべき要素を備えている.まず,注目すべきは各項目の体裁である.ほとんどの項目で,(1)術前準備に始まり,(2)体位,(3)皮切,(4)展開などと術式の各ステップが明示的であり,分かりやすい.本書の特長は,シリーズ名に冠せられている“イラストレイテッド”が表しているとおり,イラストが多用されていることである.実用的である.外科解剖や手術操作が上手くイラストで表現されている.さらに,頻用される手術については動画がDVDで付き,イラストを補っている.助手として外科解剖や手術操作を体験し,本書のイラストと説明で体験した手術を振り返る.恐らく一段と深いレベルでの理解となり,自信をもって次の手術に臨むことができるのではないか? また,深い理解や潜む危機への,より良い対応のために,留意すべきポイント,上手に進めるためのコツ,そして知って避けるべきピットフォールのメモが手術のステップごとにある.経験豊富な著者の知恵を得る仕組みである.
目次を見る.4つの章として,「I 進入法」,「II 頭蓋頚椎移行部・上位頚椎除圧再建手術」,「III 中下位頚椎除圧再建手術」,「IV 胸椎除圧再建手術」がある.「I 進入法」では,頚椎の2つの基本的アプローチ,頚椎前方法,後頭骨頚椎後方法に加えて,行うことは稀だが,知識として知っておきたい胸骨縦割法とcostotransversectomyの項目がある.「II 頭蓋頚椎移行部・上位頚椎除圧再建手術」では,古典的な環軸椎固定術であるBrooks法からインストゥルメンテーション手術まで網羅されている.高齢者の転倒による上位頚椎骨折が増えている現在,前方スクリュー固定による歯突起骨折骨接合術は知っておきたい術式である.「III 中下位頚椎除圧再建手術」は除圧と頚椎再建とに分けられ,脊髄除圧では椎弓形成術の定型である片開き式と棘突起縦割式,さらには選択的椎弓切除術と椎間孔拡大術がある.頚椎再建では前方,後方それぞれ各種のインストゥルメンテーション手術の項目があり,現行の術式が網羅されている.「IV 胸椎除圧再建手術」でも,現在一般的に行われている術式が幅広く項目立てされている.除圧や病巣切除としては従来の開胸,さらに内視鏡による胸椎前方法,後方進入前方除圧法,そして脊椎全切除術,一方では脊柱変形に対する術式もhybrid法と椎弓根スクリュー法の2つの術式がある.
繰り返す.日本語の網羅的脊椎手術書は少ない.本書は通読すべき価値のある手術書である.

整形外科手術イラストレイテッド 基本手術手技

整形外科手術イラストレイテッド 基本手術手技 published on

手術手技を考え方から学ぶ指南書
整形外科専門研修で経験するほとんどの手術手技がl冊に凝縮

Orthopaedics Vol.30 No.9(2017年9月号)Book Reviewより

書評者:大川淳(東京医科歯科大学大学院整形外科学教授)

日本整形外科学会ホームページには専門研修にかかわるマニュアルが掲載されている.専門医としての研修の仕方が書かれているが,外科手技に関する記載は意外と少ない.医師患者関係やカルテの書き方,診断などについて細かくinstructionがあるものの,整形「外科医」は手術治療への参加は当然なので,細かな記載が少ないのかもしれない.治療基本手技としては,「ブラッシングやデブリドマンなど基本的創傷処置を正しく実施できる」と書かれているのみである.あとは,「運動器の基本的な手術手技(鏡視下手術を含む)に習熟し,実施できる」とある.基本的な創傷処置や手術手技を正しく実施するためには,まずその考え方を理解し,手技を学ぶ必要がある.現在では昔と違って,学部や初期臨床研修のあいだにシミュレーションセンターで外科手技のトレーニングを行い,メスの持ち方やハサミの使い方はとりあえず訓練されている.しかし,現実世界でひとたび手術台に向かえば,鉗子をどう使って皮膚を持ち上げ,どこから切開を始めればよいのか,頭の中が真っ白になってしまうこともあるかもしれない.
シミュレーションでは,正しいデブリドマンは当然教わるはずもない.一例ずつ違う開放創に対して,どこまでどのようにキレイにすればよいのか,はたと困るのが初心者である.しかし,本書をみれば,軟部組織の取り扱い方や開放骨折でのデブリドマンまできれいに図示されている.それ以外にも,本書では整形外科専門研修のほぼ4年間に経験するであろう,ほとんどの手術における手技が網羅されている.骨折に対するプレート固定や髄内釘から始まり,腱縫合,切断,骨軟骨移植などのどの部位にも共通する手技から,人工関節にまで及ぶ.部位別の手術書であれば導入部分に書かれている内容かもしれないが,1冊に凝縮されていることがすばらしい. 本書ほど,整形外科専門研修を始めるときの手術書として便利なものはないように思う.サブスペシャルティを決めていない若手にとっては,当然ながら経済的でもある.また,すでに進むべき道が決まった専門医であっても,当面のあいだは利用できるほどの内容を誇る.編集者の戸山芳昭先生が序文に書かれているように,本書とともに解剖書を座右に置けば,まさに鬼に金棒であろう.
整形外科に限らず,手術のトレーニングは将来VR(virtual reality)が一般的になるだろう. しかし,そうなってもなお,VRに向かって手を動かす前に覚えるべき,原理原則がある.イラストを中心に,きわめて豊富な診断画像,術中写真,動画を組み合わせた手術指南書である本書は,それを学ぶに必須といってよい.

離島発 とって隠岐の外来超音波診療

離島発 とって隠岐の外来超音波診療 published on

だから,この本は売れる!

Orthopaedics Vol.30 No.7(2017年7月号) Book Reviewより

書評者:皆川洋至(城東整形外科)

著者は整形外科医ではない.運動器を含む全ての臓器を扱う「総合医」である.日本海でクルーザー“White Stone”を乗り回す漁師であり,アワビ養殖や養鶏を自ら営む.最近,猟銃免許も取得した.そればかりではない.信号機のない島で,世界最速の電気自動車テスラを乗り回す暴走族でもある.破天荒医師はへき地診療の神髄をABCDEに集約させる(A:antenna,B:balance,C:communication,D:daily work,E:enjoy).しかし,著者には誰もが踏みとどまる常識の壁がない.東日本大震災直後,妻の裕子医師に「1カ月は帰ってこない」と言い残し,頭を刈り上げ島を飛び出した.まさにF:foolish,ジョブズ顔負けの行動力がある.
隠岐・西ノ島(島根県)の島前病院院長として20年,島民約6千人の命と生活を支えてきた.本土までフェリーで約3時間.隔離された小さな島では,専門医の常套句「うちじゃありません」が通用しない.ガラパゴス環境が生み出した本書は,徹底した解剖の知識と経験に裏付けられた「現場志向」の実用書である.運動器を専門とする整形外科医であれば,パラパラめくっただけで本書の価値を瞬時に理解できるはず,これは使える.「はい,湿布・痛み止め」でお茶を濁す外来診療に無力感を抱く医師には必読書である.手術対象にならない,しかし日常診療でありがちな愁訴を劇的に取り去る最先端手技【エコーガイド下Hydrorelease】のノウハウが満載されているからである.また,エコー時代を担う若手医師には「現場思考」の入門書にもなる.患者の訴えを解決するステップが詳細に読み取れるからである.
いまや頸・腰・肩・膝などパーツの専門家集団になりつつある整形外科.パーツの手術を数多くこなせば,簡単に「自称専門家」になれる.パーツの専門学会では,毎年新たな手術手技がトピックとなり,手術適応がないcommon diseaseには興味・関心が注がれない.医師ファーストが作り出す「専門」の世界は,裾野の狭い尖った山と光が射さない深い谷間を生み出した.専門の壁を取り除き,患者ファーストで経験を積み重ねた非整形外科医が運動器診療の谷間に火を灯したのが本書である.非常に読みやすく分かりやすい,しかも実践すれば患者さんが笑顔になる.スタッフも笑顔,そして何より本人が笑顔.まさに良い実用書とはこういうものである.買って読む価値がある.だから,この本は売れる!

整形外科手術イラストレイテッド 上腕・肘・前腕の手術

整形外科手術イラストレイテッド 上腕・肘・前腕の手術 published on

上腕・肘・前腕の標準的な手術を網羅した一冊

Orthopaedics Vol.28 No.9(2015年9月号) BookReview

書評者:酒井昭典(産業医科大学整形外科学教室)

本書は,2010年から刊行されている《整形外科手術イラストレイテッド》シリーズの7冊目(最新巻)として2015年7月に刊行された.本書の特長は,実際の手術手技を精緻なイラストで示しながら,そのポイント,注意点,臨床的意義について,ひとつのアプローチや手術法あたり概ね5ページ前後にまとめて記載されていることである.視覚的に手順を追って術野の展開と手技を確認しながら手術の様子や実際の動きが理解できるようになっている.さらに,付属のDVDで動画をみることができる.
また本書では,上腕・肘・前腕の主な疾患に対する標準的な手術法が網羅されている.骨折に対する整復固定術,靭帯損傷に対する縫合・再建術,変形性肘関節症に対する観血的授動術,運動機能再建術,離断性骨軟骨炎に対する鏡視下手術,TEAなどについてカラーイラストと手術写真,X線写真を多数用いて具体的に解説されている.手技の“ポイント”と“コツ”,基本的事項をまとめた“サイドメモ”が分かりやすく書かれている.
外科医は高い手術技能を有することが必要である.そのためには,安全で確かな手術手技の伝承と自ら手技を研鑽する不断の努力が必要である.しかし,若手医師は,系統的に手術手技を学ぶ機会は少なく,実際には,臨床現場で経験した個々の症例から習得することになる.習得のレベルと手技の正確度は,経験した症例内容と指導医の教え方に大きく依存することになる.手術手技の標準化が必要である.
手術を予習するうえで,手元に置くべきものは解剖学書と実践的な手術書である.本書に目を通しながら術前に手術をシミュレーションすることができる.整形外科の専門医だけでなく,初期研修医や後期研修医などの若手医師,手術室の看護スタッフの方々にも大いに役立つ手術書である.日本整形外科学会専門医試験における動画を用いた口頭試験にも有用であろう.日常臨床ですぐに役立つ,お勧めの一冊である.

整形外科手術イラストレイテッド 骨盤・股関節の手術

整形外科手術イラストレイテッド 骨盤・股関節の手術 published on

手術テクニック習得のための股関節外科専門医必携の書

Orthopaedics Vol.26 No.6(2013年5月号) BookReviewより

評者:進藤裕幸(長崎大学名誉教授)

《整形外科手術イラストレイテッド》シリーズの5冊目として『骨盤・股関節の手術』が中山書店より上梓された.本シリーズでは,イラストレーションを主な媒体として手術手技を視覚的に明示することに力を注ぐ一方で,説明文を極力少量化してポイントに絞った分かりやすい解説にとどめていることが大きな特長といえる.整形外科領域の主要な手術を網羅する全10冊で構成され,手術手技を視覚的に認知し,その体得を可能にするバイブル的な手術手技教科書のシリーズである.
本書では,股関節へのアプローチとして普遍的な進入法に加えて寛骨臼骨折に対応する腸骨鼡径進入法が詳細に掲示・解説されている.さらに各論的な手術法が21項目に及び,関節温存手術11編,人工関節関連10編が取りあげられるなかで,とくに7編は各種の再置換術に関するもので,まさに時勢に対応した内容となっている.
股関節は深部に位置するため一般に術野が狭く,オリエンテーションがつきにくく,ビデオ等では鮮明な画像情報を提供することが困難とされる.しかし本書では,解剖学的に正確に作成されたきわめて明瞭で美しいイラストが存分に採用されており,イラストを主役とする本シリーズの本領を如何なく発揮している.加えて強調すべき注目点として“吹き出し状の囲い枠内”にきわめて簡潔・明快にまとめられた“手術のポイント”,“手術のコツ”,本書で新たに採用された“ピットホール”が添えられていることも読者には嬉しい贈り物である.多数の当該手術を通じて酸いも甘いも経験を十分に積んだ著者ならではの貴重なコメントが盛り込まれている点は,誠に実践的で効果的な特長であろう.
専門編集の労を取られた内藤正俊氏をはじめ,そして何よりもこの編集形式とその編集主旨に協力を惜しまなかった各著者の真摯な責任感と意気込みが伝わってくる名著といえる.また本書の股関節に関するあらゆる術式が27項目にわたって網羅されている点も,整形外科専門医としてさらに股関節外科専門医を目指す若手医師にとっては,手術テクニック習得のための必携書として本書を推薦するものである.
さらに付録のDVDには15項目の手術ビデオが収載されており,手術への臨場感を含めた立体的なオリエンテーションと各種インストゥルメントの使用法を具体的に理解する重要な助けとなっている.冊子中のイラストはあくまでも2次元での情報であるが,これをしっかりと頭にインプットしたうえでビデオを精観することで,読者は一挙に“著者並みの熟練者になった心地を体験できるかもしれない.
股関節外科医を志す人にとって本書が座右の書となることを願う次第であります.

整形外科臨床パサージュ 1 腰痛クリニカルプラクティス

整形外科臨床パサージュ 1 腰痛クリニカルプラクティス published on

腰痛診断のアルゴリズムをフローチャートで示し、多彩な図表で分かりやすく解説

ベストナース、2010年11月号 「必見! 2010年秋のお薦め図書総覧」より抜粋

整形外科臨床パサージュ・シリーズ第1巻として出版された「腰痛クリニカルプラクティス」。中村耕三・東京大学大学院医学系研究科整形外科学教授が総編集、札幌医科大学の山下教授が専門編集しました。患者の症状から訴え、診断、治療法選択に至る考え方の道筋を分かりやすく示し、専門医を目指す若い医師、第一線で活躍する運動疾患診療の専門医の日常診療をサポートする実用書になっています。

「日本人に一番多い主訴である腰痛から、どのようなことが考えられるか。診断アルゴリズムをフローチャートで示す一方、図表などを多く取り入れて、分かりやすく解説しました」と特徴を語ります。

高齢者、青少年、小児・成長期の腰・下肢痛からどのような疾患を考えるか、身体所見のとり方、補助診断法、評価法、治療方針の決め方、治療の進め方、主な疾患の診断の進め方、腰・下肢痛をきたす非脊柱疾患、難知(ママ)性慢性下肢痛の病態と治療を記載。エビデンスベースに、アップトゥデートな最新知見・先端技術も盛り込んでいます。

腰痛患者への生活指導、腰痛の運動療法も若年者、中高齢者ごとに記述するなど、看護師も活用できる分かりやすい書籍になっています。

今後、膝痛、運動器画像診断、骨粗鬆症、手・肘痛、軟部腫瘍、下肢スポーツ外傷などが発刊予定です。