臨床スポーツ医学 Vol.39 No.1(2022年1月号)「書評」より

評者:丸毛啓史(学校法人慈恵大学理事)

「整形外科医のためのスポーツ医学概論」は,全4巻で構成される〈講座 スポーツ整形外科学〉シリーズの第1巻で,スポーツ整形外科診療をサポートする実践書として,スポーツ整形外科学の基礎と臨床のすべての内容が体系化されている.
スポーツ医学は,内科,整形外科などの臨床医学をはじめ,体育学,運動生理学,薬理学,栄養学,心理学などの基礎医学や予防医学,さらにはフィールドの最適化やスポーツ器具の開発,改善などのマテリアル研究をも含めた幅広い領域にわたる学問である.このため,自らの専門分野に留まらず,他分野に関する知識や理解が必須である.本書では,こうした広い裾野を持つスポーツ医学の基本となる考え方や基礎知識について解説し,さらにはスポーツ医学の研究手法についても紹介している.また,スポーツ外傷・障害の予防,治療原則,スポーツ整形外科医が知っておくべき他領域の疾患・外傷,スポーツ種目別運動器外傷・障害の特徴について詳説し,実践に役立つ知識が習得できるように工夫している.
スポーツ医学は,近代オリンピック開催を契機として,オリンピックとともに大きく発展してきた.東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が2021年夏に開催され,アスリートの躍動感が脳裏に残るこの時期に,スポーツ整形外科学のテキストシリーズの第1巻である「整形外科医のためのスポーツ医学概論」が上梓されたことは,まさに時宜を得ている.本書は,スポーツ医学の研究や臨床において優れた業績を持っておられる多くの先生が執筆しており,スポーツ医学,スポーツ整形外科に携わる方々の座右の書となることを確信している.