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整形外科手術イラストレイテッド 下腿・足の手術

整形外科手術イラストレイテッド 下腿・足の手術 published on
Orthopaedics Vol.33 No.5(2020年5月号)「Book Review」より

評者:山本晴康(愛媛大学名誉教授/千葉・柏リハビリテーション病院院長)

現代は高齢化が進み,加齢による変形,変性,筋力低下,老化を予防するためのスポーツ活動,代謝障害などにより下腿・足関節・足部の外傷・障害が増えている.立位・歩行・走行が損なわれ,日常生活に支障をきたす方が増加し,整形外科の外来を受診して,手術に至ることが多い.
手術を受ける患者さんは,手術が合併症なく成功し,手術後早期に元の生活,元のスポーツに復帰することを強く希望している.そのため手術に携わる者には安全,確実な手術が要求される.
これらを目的の一つとして日本足の外科学会は2008年より「日本足の外科学会教育研修会」,2010年より「足の外科普及プロジェクト」,2013年より「機能解剖セミナー」を毎年開催し,足の外科に興味がある方々のレベルアップを図っている.
本書の専門編集の木下光雄先生は日本足の外科学会の前理事長で,在任中は前述の企画を強力に推進された.その流れから先生は整形外科の先生方の下腿,足関節,足部の手術の更なるレベルアップを図るために本書を上梓されたのではないかと推察する.
本書の構成は,Ⅰ 進入法,Ⅱ 手術法:骨・関節外傷の手術,軟部組織の手術,絞扼性神経障害の手術,足関節の手術,足関節症の手術,足変形の手術,趾変形の手術,小児足変形の手術,切断術・関節離断術となっていて,現在遭遇する頻度の高い疾患を取り上げている.また,近年行われている関節鏡視下手術,最小侵襲手術などの手術手技も取り込んでいる.
執筆は日本足の外科学会の理事・評議員の方々で,それぞれの分野に精通している実力者である.本書の特徴は簡にして要を得ている解説(分担執筆にもかかわらず文体が一定で読みやすい),大きく美しいイラスト(木下先生はレオナルド・ダ・ヴィンチの解剖図を意識されたようである),分かりやすい術中写真とX線像,手術の際に注意するポイントとコツの書き込みなどであり,さらに動画が理解を深めるために役立っている.
評者は術前に必ずイメージ手術を行い,不確かな場合は解剖書や手術書を紐解き手術手技を確実にし,手術に臨んでいる.本書はそのために大変有用である.また手術室に持ち込んで困った時に参考にすることもできるだろう.
以上に述べたようにイラストや術中写真が多く,読みやすく,理解し易い本書は,下腿・足の手術を行う整形外科の専門医や認定医,そして整形外科を目指している研修医や専修医,また手術を手伝っていただく看護スタッフに自信をもってお薦めできる一冊である.

整形外科診療のためのガイドライン活用術

整形外科診療のためのガイドライン活用術 published on
Orthopaedics Vol.32 No.11(2019年11月号)「Book Review」より

評者:山下敏彦(札幌医科大学医学部整形外科学講座)

2005年に初めて日本整形外科学会から「腰椎椎間板ヘルニア」「頸椎症性脊髄症」など5疾患に関する診療ガイドラインが発行されて以来,徐々に対象疾患は広がり,現在では整形外科疾患のガイドライン数は16にのぼる.さらに「骨粗鬆症」「関節リウマチ」など整形外科関連・周辺領域も含めると,きわめて多くのガイドラインが存在する.診療ガイドラインは,本来,診断・治療の標準化をはかり,より安全で有効な医療の実現を目指すものである.しかし,これだけ多くのガイドラインに囲まれると,その全てに目を通し内容を把握することは困難であり,また実際の臨床症例に適用する際にも若干の戸惑いや躊躇を覚えることもある.
このような状況を背景に,本書は,整形外科医が様々な疾患の標準治療の概要を短時間で把握でき,ガイドラインの実臨床でのスムーズな適用が可能となるよう配慮されている.日常の整形外科診療において頻繁に遭遇する疾患ごとに,まず「概要」「診療ガイドラインの現況」「標準治療のポイント」が簡潔に解説されている.ここで,読者は各疾患治療の「トレンド」について頭の整理ができる.次に,具体的な症例を「典型例」「非典型例」に分けて提示し,ガイドラインに沿った実際の治療の考え方と進め方を示している.実臨床における症例はもちろん画一的ではなく,臨機応変な対応が求められるが,本書では非典型例など多くのバリエーションを示している.さらに「患者説明のポイント」の項目を設けるなど,臨床の現場を意識しているのが大きな特徴と言える.また随所に診断・治療の流れがアルゴリズムで示されているのも理解の助けとなるだろう.
疾患の中には,まだ診療ガイドラインが存在しないものも含まれる.これらに対しては,海外のガイドラインを紹介したり,現状におけるエキスパートコンセンサスを提示して,それらに沿った標準的治療が解説されている.本書の最終章「リスク管理」では,「疼痛管理」「術後感染予防」「症候性静脈血栓塞栓症の予防」「医療放射線被曝」など,整形外科臨床において極めて重要なテーマについて最新の考え方や対処法が簡潔にまとめられており,本書の最も有用な部分の一つとなっている.
本書は,多くの診療ガイドラインが林立する現代の整形外科というフィールドを,われわれ整形外科医がスムーズかつ安全に往来するための有用な「ガイド」となってくれるだろう.

整形外科手術イラストレイテッド 頚椎・胸椎の手術

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通読すべき価値のある手術書─術式はどこかで繋がっている

Orthopaedics Vol.31 No.8(2018年8月号) BookReviewより

評者:米延策雄(大阪行岡医療大学)

どのような手術書を読んだのか? それを聞くことで,その外科医の技量が分かる,と考えていた.しかし昨今,大部の手術書は持っていないと答える若い脊椎外科医がいる.どのような方法で知識を得ているのか? 月刊誌の特集や単独術式についてのMookが多いという.日本の医学書出版業界のパワーに感心するとともに一抹の寂しさ,不安を感じる.より抜きの知識で手術ができるのか? 危機に対応できるのか? 技量の発展性はあるのか?
外科医に社会が求めているのは,「神の手」だろうか? 否,患者の状態に応じた手術が,標準的にできる外科医だろう.そのような外科医たるには教科書的な手術書を何度も通読して欲しい.いろいろな術式はどこかで繋がっている.
その意味で本書は通読すべき要素を備えている.まず,注目すべきは各項目の体裁である.ほとんどの項目で,(1)術前準備に始まり,(2)体位,(3)皮切,(4)展開などと術式の各ステップが明示的であり,分かりやすい.本書の特長は,シリーズ名に冠せられている“イラストレイテッド”が表しているとおり,イラストが多用されていることである.実用的である.外科解剖や手術操作が上手くイラストで表現されている.さらに,頻用される手術については動画がDVDで付き,イラストを補っている.助手として外科解剖や手術操作を体験し,本書のイラストと説明で体験した手術を振り返る.恐らく一段と深いレベルでの理解となり,自信をもって次の手術に臨むことができるのではないか? また,深い理解や潜む危機への,より良い対応のために,留意すべきポイント,上手に進めるためのコツ,そして知って避けるべきピットフォールのメモが手術のステップごとにある.経験豊富な著者の知恵を得る仕組みである.
目次を見る.4つの章として,「I 進入法」,「II 頭蓋頚椎移行部・上位頚椎除圧再建手術」,「III 中下位頚椎除圧再建手術」,「IV 胸椎除圧再建手術」がある.「I 進入法」では,頚椎の2つの基本的アプローチ,頚椎前方法,後頭骨頚椎後方法に加えて,行うことは稀だが,知識として知っておきたい胸骨縦割法とcostotransversectomyの項目がある.「II 頭蓋頚椎移行部・上位頚椎除圧再建手術」では,古典的な環軸椎固定術であるBrooks法からインストゥルメンテーション手術まで網羅されている.高齢者の転倒による上位頚椎骨折が増えている現在,前方スクリュー固定による歯突起骨折骨接合術は知っておきたい術式である.「III 中下位頚椎除圧再建手術」は除圧と頚椎再建とに分けられ,脊髄除圧では椎弓形成術の定型である片開き式と棘突起縦割式,さらには選択的椎弓切除術と椎間孔拡大術がある.頚椎再建では前方,後方それぞれ各種のインストゥルメンテーション手術の項目があり,現行の術式が網羅されている.「IV 胸椎除圧再建手術」でも,現在一般的に行われている術式が幅広く項目立てされている.除圧や病巣切除としては従来の開胸,さらに内視鏡による胸椎前方法,後方進入前方除圧法,そして脊椎全切除術,一方では脊柱変形に対する術式もhybrid法と椎弓根スクリュー法の2つの術式がある.
繰り返す.日本語の網羅的脊椎手術書は少ない.本書は通読すべき価値のある手術書である.

整形外科手術イラストレイテッド 基本手術手技

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手術手技を考え方から学ぶ指南書
整形外科専門研修で経験するほとんどの手術手技がl冊に凝縮

Orthopaedics Vol.30 No.9(2017年9月号)Book Reviewより

書評者:大川淳(東京医科歯科大学大学院整形外科学教授)

日本整形外科学会ホームページには専門研修にかかわるマニュアルが掲載されている.専門医としての研修の仕方が書かれているが,外科手技に関する記載は意外と少ない.医師患者関係やカルテの書き方,診断などについて細かくinstructionがあるものの,整形「外科医」は手術治療への参加は当然なので,細かな記載が少ないのかもしれない.治療基本手技としては,「ブラッシングやデブリドマンなど基本的創傷処置を正しく実施できる」と書かれているのみである.あとは,「運動器の基本的な手術手技(鏡視下手術を含む)に習熟し,実施できる」とある.基本的な創傷処置や手術手技を正しく実施するためには,まずその考え方を理解し,手技を学ぶ必要がある.現在では昔と違って,学部や初期臨床研修のあいだにシミュレーションセンターで外科手技のトレーニングを行い,メスの持ち方やハサミの使い方はとりあえず訓練されている.しかし,現実世界でひとたび手術台に向かえば,鉗子をどう使って皮膚を持ち上げ,どこから切開を始めればよいのか,頭の中が真っ白になってしまうこともあるかもしれない.
シミュレーションでは,正しいデブリドマンは当然教わるはずもない.一例ずつ違う開放創に対して,どこまでどのようにキレイにすればよいのか,はたと困るのが初心者である.しかし,本書をみれば,軟部組織の取り扱い方や開放骨折でのデブリドマンまできれいに図示されている.それ以外にも,本書では整形外科専門研修のほぼ4年間に経験するであろう,ほとんどの手術における手技が網羅されている.骨折に対するプレート固定や髄内釘から始まり,腱縫合,切断,骨軟骨移植などのどの部位にも共通する手技から,人工関節にまで及ぶ.部位別の手術書であれば導入部分に書かれている内容かもしれないが,1冊に凝縮されていることがすばらしい. 本書ほど,整形外科専門研修を始めるときの手術書として便利なものはないように思う.サブスペシャルティを決めていない若手にとっては,当然ながら経済的でもある.また,すでに進むべき道が決まった専門医であっても,当面のあいだは利用できるほどの内容を誇る.編集者の戸山芳昭先生が序文に書かれているように,本書とともに解剖書を座右に置けば,まさに鬼に金棒であろう.
整形外科に限らず,手術のトレーニングは将来VR(virtual reality)が一般的になるだろう. しかし,そうなってもなお,VRに向かって手を動かす前に覚えるべき,原理原則がある.イラストを中心に,きわめて豊富な診断画像,術中写真,動画を組み合わせた手術指南書である本書は,それを学ぶに必須といってよい.

整形外科手術イラストレイテッド 上腕・肘・前腕の手術

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上腕・肘・前腕の標準的な手術を網羅した一冊

Orthopaedics Vol.28 No.9(2015年9月号) BookReview

書評者:酒井昭典(産業医科大学整形外科学教室)

本書は,2010年から刊行されている《整形外科手術イラストレイテッド》シリーズの7冊目(最新巻)として2015年7月に刊行された.本書の特長は,実際の手術手技を精緻なイラストで示しながら,そのポイント,注意点,臨床的意義について,ひとつのアプローチや手術法あたり概ね5ページ前後にまとめて記載されていることである.視覚的に手順を追って術野の展開と手技を確認しながら手術の様子や実際の動きが理解できるようになっている.さらに,付属のDVDで動画をみることができる.
また本書では,上腕・肘・前腕の主な疾患に対する標準的な手術法が網羅されている.骨折に対する整復固定術,靭帯損傷に対する縫合・再建術,変形性肘関節症に対する観血的授動術,運動機能再建術,離断性骨軟骨炎に対する鏡視下手術,TEAなどについてカラーイラストと手術写真,X線写真を多数用いて具体的に解説されている.手技の“ポイント”と“コツ”,基本的事項をまとめた“サイドメモ”が分かりやすく書かれている.
外科医は高い手術技能を有することが必要である.そのためには,安全で確かな手術手技の伝承と自ら手技を研鑽する不断の努力が必要である.しかし,若手医師は,系統的に手術手技を学ぶ機会は少なく,実際には,臨床現場で経験した個々の症例から習得することになる.習得のレベルと手技の正確度は,経験した症例内容と指導医の教え方に大きく依存することになる.手術手技の標準化が必要である.
手術を予習するうえで,手元に置くべきものは解剖学書と実践的な手術書である.本書に目を通しながら術前に手術をシミュレーションすることができる.整形外科の専門医だけでなく,初期研修医や後期研修医などの若手医師,手術室の看護スタッフの方々にも大いに役立つ手術書である.日本整形外科学会専門医試験における動画を用いた口頭試験にも有用であろう.日常臨床ですぐに役立つ,お勧めの一冊である.

整形外科手術イラストレイテッド 骨盤・股関節の手術

整形外科手術イラストレイテッド 骨盤・股関節の手術 published on

手術テクニック習得のための股関節外科専門医必携の書

Orthopaedics Vol.26 No.6(2013年5月号) BookReviewより

評者:進藤裕幸(長崎大学名誉教授)

《整形外科手術イラストレイテッド》シリーズの5冊目として『骨盤・股関節の手術』が中山書店より上梓された.本シリーズでは,イラストレーションを主な媒体として手術手技を視覚的に明示することに力を注ぐ一方で,説明文を極力少量化してポイントに絞った分かりやすい解説にとどめていることが大きな特長といえる.整形外科領域の主要な手術を網羅する全10冊で構成され,手術手技を視覚的に認知し,その体得を可能にするバイブル的な手術手技教科書のシリーズである.
本書では,股関節へのアプローチとして普遍的な進入法に加えて寛骨臼骨折に対応する腸骨鼡径進入法が詳細に掲示・解説されている.さらに各論的な手術法が21項目に及び,関節温存手術11編,人工関節関連10編が取りあげられるなかで,とくに7編は各種の再置換術に関するもので,まさに時勢に対応した内容となっている.
股関節は深部に位置するため一般に術野が狭く,オリエンテーションがつきにくく,ビデオ等では鮮明な画像情報を提供することが困難とされる.しかし本書では,解剖学的に正確に作成されたきわめて明瞭で美しいイラストが存分に採用されており,イラストを主役とする本シリーズの本領を如何なく発揮している.加えて強調すべき注目点として“吹き出し状の囲い枠内”にきわめて簡潔・明快にまとめられた“手術のポイント”,“手術のコツ”,本書で新たに採用された“ピットホール”が添えられていることも読者には嬉しい贈り物である.多数の当該手術を通じて酸いも甘いも経験を十分に積んだ著者ならではの貴重なコメントが盛り込まれている点は,誠に実践的で効果的な特長であろう.
専門編集の労を取られた内藤正俊氏をはじめ,そして何よりもこの編集形式とその編集主旨に協力を惜しまなかった各著者の真摯な責任感と意気込みが伝わってくる名著といえる.また本書の股関節に関するあらゆる術式が27項目にわたって網羅されている点も,整形外科専門医としてさらに股関節外科専門医を目指す若手医師にとっては,手術テクニック習得のための必携書として本書を推薦するものである.
さらに付録のDVDには15項目の手術ビデオが収載されており,手術への臨場感を含めた立体的なオリエンテーションと各種インストゥルメントの使用法を具体的に理解する重要な助けとなっている.冊子中のイラストはあくまでも2次元での情報であるが,これをしっかりと頭にインプットしたうえでビデオを精観することで,読者は一挙に“著者並みの熟練者になった心地を体験できるかもしれない.
股関節外科医を志す人にとって本書が座右の書となることを願う次第であります.

整形外科手術イラストレイテッド 脊髄の手術

整形外科手術イラストレイテッド 脊髄の手術 published on

正確・実践的・美しい の3つの条件を満たした手術書

Orthopaedics Vol.27 No.6(2014年5月号) BookReview

書評者:德橋泰明(日本大学医学部整形外科学系整形外科学分野)

すばらしい脊髄手術の手術書が刊行されたので,ぜひ紹介したい.
本書は,馬場久敏教授が編集を担当し,各術式についてはエキスパートの先生方が執筆しています.常々,手術書には3つの条件が必要と考えています.一つには正確であること(解剖は正確でなくてはならない),一つには実践的であること(経験に基づいた術者の視点で描かれていること),最後に美しいこと(手術も手術書もfineでなくてはならない)です.本書がこの3条件を満足していることは衆目の一致するところでしょう.また,術者である読者が追記できる白紙のスベースが十分にあり,読者のメモや経験も追加できるように配慮されています.さらに本書では,手術のポイントの場面がDVDに収録されており,立体的な把握に非常に有用です.
しかも今回の手術群は,common diseaseでなく,頻度は少ないがエキスパートとして心して立ち向かわなければならない比較的難度が高く,ハイリスクの手術が多く含まれています.私事ですが,整形外科教室に入局して間もない頃に,明日予定の脊髄腫瘍手術の手術書を医局で開いて予習していたときに先輩から「教授がするような,そんな一生,術者にならないような手術を勉強してどうするんだ.そんな暇があったら保険請求の勉強でもしとけ」と言われたことを思い出します.今になると確かに保険請求ももちろん大事になりましたが,その先輩も本書をみれば,もう少し違った意見を言うのではと思います.確かにすぐれた先人の手術書により私たちは育てていただきました.しかし,本書のようなすばらしい手術書により,よりfineな手術をより多くの方ができるようになり,多くの患者さんを救っていただきたいとつくづく思います.
一度書店でお目通しいただければ,この意味がご理解いただけると存じます.馬場久敏教授をはじめ,筆者の皆様,すばらしい手術書をありがとうございます.

整形外科手術イラストレイテッド 手関節・手指の手術

整形外科手術イラストレイテッド 手関節・手指の手術 published on

イラストと動画による手外科専門医のためのスタンダードな手術書

Orthopaedics Vol.25 No.9(2012年8月号) BookReviewより

評者:牧 裕(一般財団法人新潟手の外科研究所理事長)

中山書店より,三浪明男先生編集の手外科手術手技に関する,綺麗なイラストレーションや写真と手術手技の動画DVDの付いた豪華なテキストが出版された.
手外科領域の手術の種類は多岐にわたり,一つの疾患に対して,いくつもの手術方法があることも稀ではない.本書では外傷,変性疾患,関節リウマチ,先天異常など幅広く,遭遇する頻度の高い手外科領域の疾患を中心に,局所解剖を基にしたアプローチ方法,手術手技の基本的なものが,それぞれの手術に熟達した著者により記述されている.
各手術のコツも書かれており,ある程度手術を経験してきた人にとってはなるほどと思え,手術の幅を拡げることに役立つだろう.しかし手術経験の乏しい人にとっては,この本を読んで,DVDを見たからといって簡単にその手術ができるわけではないだろう.DVDは簡潔に編集されており,その手術に慣れた著者らは,いとも簡単そうに手技をこなしているが,初心者にこの通りやれといっても無理がある.初心者や手術経験に乏しい人は,ベテランの先生方の手術をじっくり見学し,また指導医として助手に入ってもらい,経験を積むことが最も重要であり,その際,手術手順を予め頭の中で整理するための参考書として,この本は大いに役立つであろう.またコメディカルの方々にとってもDVDは手技の確認,道具の使い方の確認に役立つと思われる.ただ術者によって手技や使用する道具に多少の違いがあることを理解しておくべきである.
三浪先生によって編集されたこの本が多くの方々に利用されることを望む次第である.

運動器スペシャリストのための整形外科外来診療の実際

運動器スペシャリストのための整形外科外来診療の実際 published on

整形外科医のみならず,理学療法士・作業療法士や看護師など運動器に関わるメディカルスタッフにとっても必須の書

Orthopaedics Vol.27 No.12(2014年11月号) BookReview

書評者:帖佐悦男(宮崎大学医学部整形外科)

2007年,日本整形外科学会がロコモティブシンドローム(ロコモ;運動器症候群)を提唱してから,運動器の重要性やロコモ予防の大切さが国民に少しずつ広まってきている.そのロコモ対策の一翼を担っている日本臨床整形外科学会は一般社団法人化され,NPO法人全国ストップ・ザ・ロコモ協議会(SLOC)を立ち上げるなど,これまでにもましてロコモ対策に取り組んでいる.現在ロコモの対象者は予備軍も含めると全国に約4700万人いると推定され,そのうち,運動器の障害が原因と思われる患者は,最寄りの整形外科を受診することとなる.「医学」は,もともと診断・治療が中心であったが,ロコモティブシンドロームが提唱されたのを契機に予防医学にも重点が置かれ始めている.
そうしたなか,このほど運動器を扱うスペシャリストのための必須の書として『整形外科 外来診療の実際』が発刊された.本書は,臨床の第一線で活躍されている先生が,個々の経験やエビデンスに基づき,最新の知見を交えて執筆されている.また,保存療法や予防的介入を中心に,すでに開業されている先生のみならず新規に開業される先生や若手医師にとって必要な診療の基本的知識や実際の診療でのコツ・極意や患者指導,さらに必要書類作成のポイントを盛り込むなど,臨床家の立場に立って編集されている.
この本では,整形外科外来診療にあたり必須の内容をわかりやすく10章に分け系統立てて記述してある.第1章では運動器疾患の診察に必要な極意のみならず,診療上大切な子どもの疼痛性疾患の鑑別や2016年度から実施予定の学童期運動器検診についても取り上げられている.この章を読むことで運動器疾患の診察法をマスターすることが可能である.
第2章では成長期の子どもたちや高齢者の診療上必要な運動器疾患の評価法のみならず,患者立脚型評価,ロコチェック,見逃すと後遺症を残しやすい子どものスポーツ肘,関節リウマチの評価法まで網羅され,各々の部位でポイントとなる評価法,最新のMRI画像や関節鏡写真などが満載されている.
第3章「検査・診断のコツ」では,検査診断の進め方と鑑別のポイントに加え,実際の現場でよく遭遇する疾患の検査・診断法が記載されており,すぐに役立つ内容となっている.
第4章「保存療法の実際と成功の秘訣」では,保存療法の具体的実施法とともにベテラン臨床整形外科医の保存療法の極意がコンパクトにまとめられている.
第5章「保存療法の限界と手術適応を考えるポイント」では,患者にとって最も大切な「絶好の機会;Windows of opportunity」について代表的疾患ごとにわかりやすく記載されている.保存療法は最も大切な治療法であるが,漫然と保存療法を続けていると早期の社会復帰や治療後の合併症を残す可能性がある.そのためにも手術適応は現場の臨床医にとって重要である.
クリニックでも症例によっては,外来処置や外来小手術が必要不可欠な場合がある.第6章はその時の注意点からコツについて系統立ててまとめてある.
第7章は,現在の医療にとって大切な予防法に関し,臨床整形外科医の立場からすぐに臨床家が実践できるように具体的な介入法の知と技がまとめられている.
第8章は,患者の満足度をより高めるためになすべきこと,また,医療安全の観点から診療で必須の「患者指導・患者対応の心得」を簡潔にまとめてある.
第9章は,診療には避けて通ることのできない書類作成のポイントを実例で示し,初めて書類を作成する医師やベテランの医師にとっても有用な章となっている.
診断・患者説明には,昨今の画像診断の発展も加わり画像を示すことが必須になってきている.しかし,運動器の多くの疾患について精通するのは大変困難である.そこで最終章の第10章では,運動器のすべての分野の画像診断を患者説明の際に活用しやすいようにまとめてある.
本書は,運動器スペシャリストにとって必須となる整形外科外来診療の実際をコンパクトにまとめた診療マニュアルであるとともに,患者への説明や診療にまつわる書類作成の際の参考となるガイドブックとしても利用できる.整形外科医のみならず,理学療法士・作業療法士や看護師など運動器に関わるメディカルスタッフにとっても必須の書としておすすめしたい.