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総合小児医療カンパニア 予防接種マネジメント

総合小児医療カンパニア 予防接種マネジメント published on
メディカル朝日 2013年8月号 BOOKS PICKUPより

接種の実際に役立つ情報を整理

PC医が基礎臨床能力を備えて総合診療力を高めることを目標に刊行中の、全10巻シリーズ2巻目。今年4月の予防接種法改正の最新情報にのっとり、総論でワクチンの基礎知識、在庫管理、接種勧奨・実践法、個別の接種スケジュールの立て方、接種ミス回避法、保護者の質問への答え方などを、各論では各疾患の概説、接種目的・方法、副反応、注意事項を詳しく解説した。

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号24-2029)
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本書の執筆者たちの願いは,わが国のすべての子どもたちが,あらゆるVPDの脅威から確実に守られること

小児科診療 Vol.76 No.8(2013年8月号) 書評より

評者:松平隆光(松平小児科)

今ほど子どもの医療に携わる医療関係者が予防接種に関心をもったことはない.これは,定期接種の種類が増え,ワクチンで防げる病気(vaccine preventable diseases: VPD)から子どもを守ることの重要性を再認識したためである.しかし,ワクチンを安全に有効的に使うためには,日々変るワクチン事業に精通しておく必要がある.
本書は毎日臨床の第一線で予防接種の実務に携わっている小児科医が執筆者となっており,その内容は豊富な知識と経験によるものである.また読者が理解しやすいように「ワクチンについて知る」,「ワクチン接種を行う」,「役に立つ情報を利用する」の3部から構成されている.2013年3月に可決・成立した予防接種法改正案を盛り込み,各ワクチンの接種法はもちろん,ワクチンプラン,接種勧奨のタイミング,予診票のチェック,ワクチン在庫管理,副反応への対応,接種ミス回避など,接種医として当然知っておくべき事項が記載されている.
本書の執筆者たちの願いは,わが国のすべての子どもたちが,あらゆるVPDの脅威から確実に守られることである.


パンを切り分けて食べるように実地医家の先生方の知識が惜しみなく分け与えられている

小児内科 Vol.45 No.6(2013年6月号) Book Reviewより

評者:窪田満(埼玉県立小児医療センター総合診療科)

この本は,「総合小児医療カンパニア」シリーズの2冊目である。「カンパニア」とは,パンを分け合う人々という意味とのことである。そういえば,「カンパーニュ」という素朴なパンがある。そのパンを切り分けて食べるように,実地医家の先生方の知識が惜しみなく分け与えられているのが,このシリーズの最大の魅力だろう。
例えば,今まで数多くの予防接種に関する本が出ているが,ワクチンの発注の仕方を教えてくれる本はあっただろうか。保護者の質問にどう答えるか,接種ミスを起こさないようにするにはどうするかなど,ガイドラインを読んだだけでは分からないような,明日から役に立つ知識が記載されており,執筆者の先生方の真摯な思いに触れる気がする。本物の小児科医がそこにいて,大切なものを分け与えてくださっている感覚だ。
各論では,各ワクチンに関する解説の後の「接種勧奨に役立つフレーズ」や「このワクチンのツボ」が興味深い。さらにその後の1ページに,患者さんにそのままコピーをお渡しできる解説文が記載されている。ここまで実地医家の先生方が,その知識,技術を分け与えてくださるのかと,感嘆せざるを得ない。文書類の解説も,実に実際的である。
この分け与えて頂いたカンパーニュは,見た目は派手ではないが,経験に裏打ちされた,味のある,素晴らしいものである。この本を,予防接種に関わる全ての小児科医にお勧めする。


子どもたちと保護者に寄り添う医療のための秘訣や知恵が凝縮された一冊

田中美紀(一般社団法人 細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会 代表理事)

一般社団法人 細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会の田中です.私たちの会は,2006年以降,細菌性髄膜炎を患ったご本人,お子さんをもつご家族,医療従事者,一般の賛同者で構成され,当事者家族の交流や疾患の情報提供などとともに,日本で起こる細菌性髄膜炎の多くを防ぐことのできるヒブ,小児用肺炎球菌ワクチンの導入・普及を訴えてまいりました.
その過程で,全国の多くの小児科の先生方からご支援やご助言を得,そして私たちの声に耳を傾け,ともに行動を起こしてくださった結果,切に願ったヒブ,小児用肺炎球菌,両ワクチンの定期接種化へとつながりました.
本書でも指摘されているように予防接種制度にはまだまだ多くの課題が残されておりますが,一歩前進したことはたいへん喜ばしいことです.しかしながら,いくら目の前に良いワクチンがあり,制度が整っても実際に接種行動を保護者に起していただかなければ,子どもたちを守ることはできません.まだ判断力がない幼い子どもたちに代わって,保護者が理解し納得したうえで接種することが必要不可欠になってまいります.
しかし,保護者の知識や理解度も千差万別なため,各保護者にマッチした説明や情報提供が必要です.精選された先生方が小児医療の現場で培われた豊富なご経験をもとに書かれた知識,手法,アドバイスは,多くの疑問や不安を抱える保護者に寄り添い,良い関係の元で子どもたちを守ろうと思ってくださる医療者にとって必読の内容だと感じました.
また,専門知識の乏しい私にも理解できるような情報の整理がなされてたいへん読み進めやすく,医師だけではなく小児の予防接種に関わるすべての方に読んでいただきたいオススメの一冊となっています.

総合小児医療カンパニア 初期診療を磨く

総合小児医療カンパニア 初期診療を磨く published on

まさに珠玉の小児科初期診断学のサイエンスとアートのパール集

小児科診療 Vol.76 No.4(2013年4月号) 書評より

評者:永井 章(国立成育医療研究センター 総合診療部小児期・思春期診療科医長)

医学は,サイエンスに基づくアートであると述べたのは,著名な内科医William Oslerであるが,診断学においても,その徴候から適切に鑑別診断をあげ,適切に臨床推論を進めていくサイエンスの部分と,いかに診断に必要な医療情報を良好な閔係性をもとに適切に聞き出し取集するなどの熟練された技術より成り立つアートの要素が欠かせない.
第一線で活躍されている実施小児科医家により著された本書は,これまでの小児科診断学の成書にはない,サイエンスの部分のみならず,このアートの部分に大きく光があてられ非常に秀逸なものとなっている.診断のプロセスが非常に臨場感をもって記載され,それぞれのクリニカルパールには貴重なメッセージが込められ,読む者に直に伝わってくる.
本書は,カンパニアシリーズの初刊号であり,カンパニアは「共に分け合う」ということを意味するそうであるが,著者からのアートを伝承,共有するという,強い情熱も加わり,本書をより魅力的なものとしている.まさに珠玉の小児科初期診断学のサイエンスとアートのパール集であり,多くの第一線の小児診療の携わる小児科医にとって,必ずや新たな学びと共感を得られるものと確信する.ぜひ,ご一読を,薦めたい.

先天代謝異常ハンドブック

先天代謝異常ハンドブック published on

しばしば治療に難渋する腎症の診療・研究の方向性を明確に示している

小児科診療 Vol.76 No.6(2013年6月号) 書評より

評者:田村正徳(埼玉医科大学総合医療センター小児科主任教授)

「タンデムマス法により日本の新生児マススクリーニングの対象が大幅に広がった」という情報につられて軽い気持ちで本書を手にしました.ところが予想に反して小生の苦手とする代謝サイクル図もポイントを絞っていて理解しやすく,臨床最優先の視点から病態・症状・診断・治療・予後が簡潔明瞭に解説されているため,ぐいぐいと引き込まれて徹夜して最後まで読み通すことになりました.
本書は“ハンドブック”でありながら2012年までの最新の検査法や治療法の情報がつまっています.読み進めるにつれて,小生の30年以上の小児科医師の人生の中で,確定診断がつかないまま死なせてしまった子どもたちや“○○症候群”という診断名だけですませていた予後不良の赤ちゃんの顔が次々と思い出されてきて,「なぜ先天代謝異常の可能性を疑ってここまでの検査をせずにすませてしまったのだろう」と,後悔の念にさいなまれました.
小生のような悔いを残さないためにも,ぜひ臨床医を自負する小児科医師の皆様方には本書を手元に置いておくだけでなく,必ず通読しておくことをお薦めします.また一部には胎児診断のポイントも記載されていますので,小児科医師だけでなく出生前診断や胎児治療に従事する産科医師や麻酔科医師にも一読をお薦めする次第です.
文末になりますが,おそらくは一癖も二癖もある(失礼!)129名の専門家の最新の知見をもとにした記述を,かようにもわかりやすく統一した書式で纏めあげられた総編集者と専門編集者の統率力と監修力に最大限の敬意を表したいと思います.

小児科臨床ピクシス 30 小児画像診断

小児科臨床ピクシス 30 小児画像診断 published on

画像に関する大切な知識がもたらされ,診断力は確実にアップする

小児科診療 Vol.75 No.8(2012年8月号) 書評より

評者:市橋光(自治医科大学附属さいたま医療センター小児科)

本書1冊で,疾患群では中枢神経,頸部,呼吸器,心大血管,腹部,腎・泌尿器,整形外科,新生児,胎児,検査ではX線写真,CT,MRI,超音波,核医学の内容が含まれ,小児科医が診療しなければならない幅広い領域の画像診断に対応できる充実した内容となっている.
1章の総論では画像の成り立ち,検査の適応と方法,放射線被ばくの問題について述べられている.これらを知ることで,患者への負担を最小限にし,診断に必要な画像を鮮明に撮ることが可能となる.さらに,系統的読影手順が示されており,小児科医が見落としなく読影できる方法を伝授してくれている.
2章以降では具体的な疾患ごとに,まず疾患の簡潔な説明があり,続いて鮮明な画像が豊富に掲載されている.画像の多くに矢印を入れてていねいな解説が施されているのでわかりやすい.画像の特徴が示されるとともに,なぜそのような画像を呈するのかを疾患の病態をもとに説明されているので,単なる暗記ではなく,疾患の病態と画像を結びつけて覚えることができる.
本書を通じて,画像に関する大切な知識が小児科医にもたらされることにより,その診断能力は確実にアップする.多くの小児科医に活用していただきたい1冊である.

小児科臨床ピクシス 4 予防接種 全訂新版

小児科臨床ピクシス 4 予防接種 全訂新版 published on

「予防接種」に関する解説書として「すぐれもの」と評価できる

小児科診療 Vol.77 No.9(2014年9月号) 書評

書評者:富樫武弘(札幌市立大学)

わが国の小児を接種対象とした予防接種の動向には,近年めざましいものがある.つい最近までのわが国は「ワクチン後進国」と揶揄されていた.しかしながら,ここ数年間に新たな定期接種が採用されたり.用法・用量が国際標準に変更されたワクチンは数々あり,その様相は「後進国」を脱した感がある.
本書は総編集を国立成育医療研究センターの五十嵐隆先生が,専門編集を帝京大学医学部附属溝口病院の渡辺 博先生が担当しており,2008年12月の初版刊行から5年を経てこのたび全面改訂された.
その道の大家34名の分担執筆による本書は,予防接種総論と各論からなっており.本文に加え脚注を重視してEBM情報,キーポイント,補足説明に分けて解説され,さらに近年に変更された事項も丁寧に書き込まれている.2012~2013年にわが国で流行した成人を中心とした風疹とこれに続く先天性風疹症候群の発生動向.2013~2014年に発生した麻疹の流行にまで言及しており,さらに本年10月に定期接種化が予定されている水痘,成人への肺炎球菌ワクチンも紹介している.各論には定期接種に限ることなく,必要とされるワクチンを接種開始年齢順に並べて記載しており.その面でも使いやすい構成となっている.
本書は.現在わが国で使われる「予防接種」に関する解説書として「すぐれもの」と評価できるとともに,渡辺先生の本書に対する「思い入れ」がところどころに感じられ,よいガイドブックが完成したそのご尽力に感謝したい.

経口免疫療法Q&A

経口免疫療法Q&A published on

乳児健診や一般診療の場で,小児の診察に携わるすべての方にお勧めしたい

小児科診療 Vol.76 No.1(2013年1月号) 書評より

評者:西本 創(さいたま市民医療センター小児科)

これまで即時型のアレルギー反応をきたす食物抗原に対しては,自然寛解が多いため,除去食を基本とし,自然寛解を待つのが一般的な対応であった.そんな中,2007年に神奈川県立こども医療センターから急速特異的経口耐性誘導療法が報告されたのは衝撃的だった.対症療法が主だった食物アレルギーに対し,根治的治療法の可能性が示唆されたのである.本書はその経口免疫療法をQ&A形式でわかりやすく紹介している.
第1章は食物アレルギーのトピックスについて紹介されており,Q1は「妊娠中の食物除去は有効ですか?」と日常診療で聞かれることが多い質問からはじまる.ここ数年で食物アレルギーに関する新しい知見が数多く発表され,食物除去に対するガイドラインは激変している.アレルギー診療を専門としない医師がすべてを網羅するのはなかなか困難であるが,本書では学会で話題となったテーマを紹介している.Lackらが2008年に報告したdual-allergen-exposure hypothesis (二重抗原曝露仮説)のイラストはこのところの学会で紹介されないことがないくらいだが,ピンとこない方は最近の経皮感作・経口免疫寛容の総論としてぜひ一読いただきたい.
第2章は「経口免疫療法の実際」と題し,実際に行われている方法について詳細に紹介されている.第3章は「経口免疫療法の理論」である.個人的に一番興味をそそられたのは第4章「症例-こんなに違う対応法」であった.当院でも緩徐・急速法とも施行しているが,ひとりひとりの違いに驚かされ,また学ぶことが多い.著者らの発表を聞いた際に,症例を丹念に観察しているという印象をもったが,その通りであった.15例の症例報告には治療で行き詰ったときのヒントが散りばめられている.
NHKスペシャルで特集が放送されて以来,患者家族より質問されることが多くなった.しかし,得られる情報も少なく,返答に窮することもあるだろう.経口免疫療法に興味がある方だけでなく,乳児健診や一般診療の場で,小児の診察に携わるすべての方にお勧めしたい.
最後に確認となるが,小児アレルギー学会食物アレルギー委貝会の見解は「経口免疫療法は専門医が体制の整った環境で研究的に行う段階の治療であり,一般診療として推奨しない」と位置づけていることを忘れてはならない.