「予防接種」に関する解説書として「すぐれもの」と評価できる

小児科診療 Vol.77 No.9(2014年9月号) 書評

書評者:富樫武弘(札幌市立大学)

わが国の小児を接種対象とした予防接種の動向には,近年めざましいものがある.つい最近までのわが国は「ワクチン後進国」と揶揄されていた.しかしながら,ここ数年間に新たな定期接種が採用されたり.用法・用量が国際標準に変更されたワクチンは数々あり,その様相は「後進国」を脱した感がある.
本書は総編集を国立成育医療研究センターの五十嵐隆先生が,専門編集を帝京大学医学部附属溝口病院の渡辺 博先生が担当しており,2008年12月の初版刊行から5年を経てこのたび全面改訂された.
その道の大家34名の分担執筆による本書は,予防接種総論と各論からなっており.本文に加え脚注を重視してEBM情報,キーポイント,補足説明に分けて解説され,さらに近年に変更された事項も丁寧に書き込まれている.2012~2013年にわが国で流行した成人を中心とした風疹とこれに続く先天性風疹症候群の発生動向.2013~2014年に発生した麻疹の流行にまで言及しており,さらに本年10月に定期接種化が予定されている水痘,成人への肺炎球菌ワクチンも紹介している.各論には定期接種に限ることなく,必要とされるワクチンを接種開始年齢順に並べて記載しており.その面でも使いやすい構成となっている.
本書は.現在わが国で使われる「予防接種」に関する解説書として「すぐれもの」と評価できるとともに,渡辺先生の本書に対する「思い入れ」がところどころに感じられ,よいガイドブックが完成したそのご尽力に感謝したい.