まさに珠玉の小児科初期診断学のサイエンスとアートのパール集

小児科診療 Vol.76 No.4(2013年4月号) 書評より

評者:永井 章(国立成育医療研究センター 総合診療部小児期・思春期診療科医長)

医学は,サイエンスに基づくアートであると述べたのは,著名な内科医William Oslerであるが,診断学においても,その徴候から適切に鑑別診断をあげ,適切に臨床推論を進めていくサイエンスの部分と,いかに診断に必要な医療情報を良好な閔係性をもとに適切に聞き出し取集するなどの熟練された技術より成り立つアートの要素が欠かせない.
第一線で活躍されている実施小児科医家により著された本書は,これまでの小児科診断学の成書にはない,サイエンスの部分のみならず,このアートの部分に大きく光があてられ非常に秀逸なものとなっている.診断のプロセスが非常に臨場感をもって記載され,それぞれのクリニカルパールには貴重なメッセージが込められ,読む者に直に伝わってくる.
本書は,カンパニアシリーズの初刊号であり,カンパニアは「共に分け合う」ということを意味するそうであるが,著者からのアートを伝承,共有するという,強い情熱も加わり,本書をより魅力的なものとしている.まさに珠玉の小児科初期診断学のサイエンスとアートのパール集であり,多くの第一線の小児診療の携わる小児科医にとって,必ずや新たな学びと共感を得られるものと確信する.ぜひ,ご一読を,薦めたい.