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ニュースタンダード整形外科の臨床 2 整形外科の外傷処置 捻挫・打撲・脱臼・骨折

ニュースタンダード整形外科の臨床 2 整形外科の外傷処置 捻挫・打撲・脱臼・骨折 published on

これは面白い! 役に立つ!

Orthopaedics Vol.38 No.8(2025年8月号)「Book Review」より

評者:井口哲弘(恕和会松田病院整形外科・リウマチ科部長/元兵庫県立リハビリテーション中央病院院長)

大規模病院や中小規模病院の整形外科で、そして25年間の開業医として、外傷診療の第一線治療を経験されてきた井尻整形外科院長の井尻慎一郎先生が、中山書店の整形外科シリーズ《ニュースタンダード整形外科の臨床》の第2弾『整形外科の外傷処置』を編集、このたび刊行された。

この本は、実際に救急医療を経験しないとわからないノウハウが詰まった貴重な本であることがわかる。「整形外科医でも知っておいた方がよい救急外傷」では、皮下異物(トゲ)の除去方法が図解入りでわかりやすく書いてある。爪下異物では爪の切除方法が、種々の動物咬傷では治療法に加え、安静期間とリハビリテーションの方法まで書いてある。普通の本では指輪のはずし方は簡単な図解が多いが、6枚の連続写真で詳しく説明してある。要するに、豊富な写真、レントゲン、図解、イラストを駆使して、読者に理解しやすい細やかな配慮がされている。「こんな方法があったのか、もっと早く知りたかった」と思わせる内容である。

目を見張る二つ目は、分野と執筆陣の充実である。基礎、捻挫・靭帯損傷・肉離れ、打撲・骨挫傷、脱臼、骨折、末梢神経、外傷合併症の各分野で67項目を、治療の第一線で活躍中の70名以上の先生方が執筆されている。環軸椎回旋位固定などの小児疾患から高齢者脊椎脆弱性骨折まで、よくこんなに多くの先生方に執筆をお願いできたと驚いている。もちろん井尻先生のみならず共同編集委員の田中栄先生や松本守雄先生のご尽力であることは間違いない。私が気に入っている執筆方針は、それぞれに「治療に対する考え方」が記載されている点である。例えば手指の屈筋腱損傷や足関節果部骨折などで、保存的治療か手術的治療か、どちらを選択するかの考え方が示されている。治療原則がわかり、病態の理解がしやすい。

そして三つ目は、動画がついている。肩の各種テストのやり方、指腱損傷の診断の方法、ハムストリング肉離れの徒手検査法、踵骨骨折での大本法のやり方など20項目がスマホで簡単に見ることができる。整形外科医へのアンケートによると一番自信のない手技は、肩関節脱臼の整復法であったそうである。私もそうで、改めてゼロポジション法、Kocher法、Stimson法の整復法を動画で確認できて大変勉強になった。図で見るのと動画では、理解のしやすさが「天と地」である。

以上のように、実際にこの本を手に取ると、買って読みたくなることは間違いがない。関西弁では「このほん、じゅうぶん、もとがとれまっせ」と言える。

ニュースタンダード整形外科の臨床 1 整形外科の病態と診察・診断

ニュースタンダード整形外科の臨床 1 整形外科の病態と診察・診断 published on
Orthopaedics No.38(2025年3月号)「Book Review」より

評者:新井貞男(あらい整形外科院長)

本書は,「整形外科開業医や一般病院整形外科勤務医に真に役立つ書籍」を提供することを目的として編集された.整形外科医は新生児から高齢者までのすべての世代を,また骨折・打撲・捻挫等の急性外傷から,「腰痛症」「関節症」などの慢性疾患までを対象としている.こうした幅広い年代と疾患を整形外科外来で診察する際,短時間の診察や検査で診断を行う必要がある.疾患によっては基幹病院や大学病院の専門外来に紹介する必要がある.自院での処置治療や消炎鎮痛処置や運動器リハビリなどの保存療法で治療できるか,更には専門外来に紹介するかを診断するのは経験豊富な整形外科医でも迷うところである.そこで,従来の手術療法を主とするようなものでなく,整形外科開業医や一般病院の整形外科外来医師にとって直ぐに役立つようにと本書は編集された.

まず,『整形外科の病態と診察・診断』として第1巻が刊行された.

第1章は「運動器の病態生理と治癒機転」として,運動器の構成要素である,骨・関節・靭帯・関節包・筋・末梢神経の基礎知識と治癒機転について述べている.

第2章は「体表解剖と痛みやしびれから想定される病態」として,頚部・肩関節周辺・肘・手関節と手・胸部と背部・腰部・骨盤と股関節・大腿・膝関節周辺・下腿・足関節・足と整形外科のすべての守備範囲を網羅している.

第3章は「診察法(患者問診・診察・検査・診断)」として,頚部・肩関節周辺・肘・手関節と手・胸部と背部・腰部・骨盤と股関節・大腿・膝関節周辺・膝関節損傷・下腿・足関節・足・小児を紹介している.研修医は勿論,経験豊富な医師でも動画で診察法を再確認することは有用である.

第4章では「整形外科の代表的な病態と治療」として,痛み・炎症・急性慢性の違い・関連痛,放散痛などの病態を解説している.日常よく遭遇する,関節炎・骨挫傷,不顕性骨折・骨粗鬆症・関節リウマチ・痛風,偽痛風・肩こり・首下がり症候群・ストレートネック・いわゆる腰痛症・骨腫瘍及び軟部腫瘍・ロコモフレイルサルコペニア・成長痛などを分かりやすく解説している.

本書の特徴として写真や図だけでなく,QRコードを用いて動画を用いて解説していることである.診察法,体操療法,理学療法,装具療法などは動画で見ることにより理解しやすくなる.写真や図を何度見ても理解できなかったものも,動画を見ると直ぐに理解できる.

今までにない,現場で役立つリアルな新しい整形外科医の必携書である.