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ニュースタンダード整形外科の臨床 4 頚椎・胸椎の痛みと障害

ニュースタンダード整形外科の臨床 4 頚椎・胸椎の痛みと障害 published on
評者:渡辺雅彦(東海大学医学部外科学系整形外科学教授)

整形外科開業医や一般病院勤務医の先生方は,すべての整形外科受診患者さんに対応をしなければならない.しかしながら,ご自分の専門領域外のことも多く,一言に整形外科といっても対象とする疾患やその治療法は多種多岐にわたり,また日々進歩していて,知識のupdateには非常にご苦労されていることと推察する.《ニュースタンダード整形外科の臨床》はそのような臨床の場に役立つ,広範にわたる整形外科疾患の診断と治療法を網羅した指南書である.編集委員である田中栄先生,松本守雄先生,井尻慎一郎先生が各領域のエキスパートである専門編集員を指名し,総論と各論で11のテーマについてシリーズを形成している.第4巻の本書もそうであるが,各論の多くに「痛みと障害」というタイトルが付けられているところが興味深い.患者さんは決して疾患名では受診されずに,その方その方の独特な表現で愁訴を語られ受診される.まずは臨床に即した「症状ありき」が,このタイトルから伺え,通常の教科書の「疾患ありき」と一線を画しているシリーズであることが分かる.臨床の場で患者さんの愁訴を聞き,本書を紐解く,そういった書物と言えよう.

さて,シリーズ4巻目,各論1巻目は『頚椎・胸椎の痛みと障害』,「診断の精度を上げ,患者満足度を高める」として群馬大学大学院医学系研究科整形外科学教授の筑田博隆先生が専門編集をお務めになり,今回めでたく上梓された.

1章では「診察の基本」として外来での診察のポイントがまとめられている.本章では,診断書の記載および障害等級の評価の留意点や指定難病等についての記載もあり,専門外の先生方にとってまさに親切なガイドブックとなっている.2章は「検査・診断の基本」であるが,診察手技や各種評価法,また特にMMT評価のコツは,動画も付属してポイントが再確認できる.3章「首(肩甲帯)の痛み」,4章「上肢の痛み・しびれ」,5章「背中の痛み」,6章「外傷による首・背中の痛み」,7章「筋のやせ,手に力が入らない」,8章「麻痺・歩行障害」,9章「斜頚・首下がり」,10章「背骨の変形」と各論が続くが,患者さんが訴える愁訴はほぼカバーできているように思う.また頚椎捻挫等,外来診療で対応に苦労することが多い疾患は特に丁寧な記載がされており,外来診療の強力な応援ツールになっている.

筑田博隆先生にはガイドラインや種々の委員会で御指導を頂いてきた.先生のお話は常に理路整然としているが,先生の日々の臨床も理路整然と「診断の精度を上げ!」を実践されているのだと思う.種々の愁訴から,理路整然とした思考過程と手順でその原因・病態を正確に導き出すこと,最も大切なことである. 本書がその一助となり,すべての整形外科医にとって,使い勝手の良い,無くてはならない,首と背中の病気の指南書となることを信じている.

ニュースタンダード整形外科の臨床 3 整形外科の薬物療法・保存療法

ニュースタンダード整形外科の臨床 3 整形外科の薬物療法・保存療法 published on
Orthopaedics Vol.38 No.10(2025年10月号)「Book Review」より

評者:清水克時(医療法人 社団登豊会 近石病院 院長/岐阜大学整形外科名誉教授)

私は,この本の編集者,井尻慎一郎先生と同じ京都大学整形外科の出身です.医学部を卒業し,大学病院で半年間研修を受けた後,医局の研修プログラムで島根県の玉造厚生年金病院に3年間勤務しました.玉造病院では,たくさんの手術を経験しましたが,それに加えて,整形外科的保存治療の妙味を体験しました.病床には余裕があり,保存治療のための入院も可能で,先輩の医師や,PT,OT,看護師からたくさんのことを教えていただきました.病院の中に義肢科があり,義肢装具士が働いている工房によく出入りしました.私が卒業した1973年頃は,骨折や運動器変性疾患に対するインプラントが進歩し,手術的整形外科が飛躍的に発展する時代でした.大学病院のカンファレンスや学会では,手術を中心に議論が交わされ,私もそれにあこがれて入局したのですが,玉造病院の3年間で学んだことは,整形外科には保存治療も重要で,むしろこちらが本流だという事実でした.卒業直後の早い時期にこのことを学べたのは大変よかったと思います.

整形外科が手術分野として発展することができたのは,無菌的手術,麻酔, Ⅹ線診断の進歩に後押しされたからですが,それはほんの100年間くらいのことです.一方,保存的治療には,整形外科(ORTHOPAEDICS)という名称ができてからでも300年近くの長い伝統があります.《ニュースタンダード整形外科の臨床》 第3巻『整形外科の薬物療法・保存療法』のページをひらくと第1章,普天間朝拓先生の「外用消炎鎮痛薬」の記載で「貼付剤に切れ込みを入れて密着をはかる方法」が私の目に飛び込んできました.湿布薬を有効に使うための優れた方法で,湿布を医療保険でカバーすべきか? という昨今の医療経済論議に対する現場からの回答のようにも思いました.普天間先生と患者さんの会話が聞こえてくるような写真です.このほかにも,臨床現場で役に立つ知識をできるだけ具体的に解説するという編集者の意図は,すべての執筆者によく伝わっていて,実際の臨床に即した知識が満載されています.

第1,2,3巻を通読してみて,全11巻におよぶシリーズのなかで,この3冊はまさにジェネラリストのための基本的教科書だと思いました.とくに第3巻は秀逸です.私が臨床医として働き始めてから半世紀が過ぎました.最近は,ふたたび一般整形外科の診療が増えてきたので,診療のあいまにこの本を読んで重宝しています.本書をすべての世代の整形外科医におすすめします.

ニュースタンダード整形外科の臨床 2 整形外科の外傷処置 捻挫・打撲・脱臼・骨折

ニュースタンダード整形外科の臨床 2 整形外科の外傷処置 捻挫・打撲・脱臼・骨折 published on

これは面白い! 役に立つ!

Orthopaedics Vol.38 No.8(2025年8月号)「Book Review」より

評者:井口哲弘(恕和会松田病院整形外科・リウマチ科部長/元兵庫県立リハビリテーション中央病院院長)

大規模病院や中小規模病院の整形外科で、そして25年間の開業医として、外傷診療の第一線治療を経験されてきた井尻整形外科院長の井尻慎一郎先生が、中山書店の整形外科シリーズ《ニュースタンダード整形外科の臨床》の第2弾『整形外科の外傷処置』を編集、このたび刊行された。

この本は、実際に救急医療を経験しないとわからないノウハウが詰まった貴重な本であることがわかる。「整形外科医でも知っておいた方がよい救急外傷」では、皮下異物(トゲ)の除去方法が図解入りでわかりやすく書いてある。爪下異物では爪の切除方法が、種々の動物咬傷では治療法に加え、安静期間とリハビリテーションの方法まで書いてある。普通の本では指輪のはずし方は簡単な図解が多いが、6枚の連続写真で詳しく説明してある。要するに、豊富な写真、レントゲン、図解、イラストを駆使して、読者に理解しやすい細やかな配慮がされている。「こんな方法があったのか、もっと早く知りたかった」と思わせる内容である。

目を見張る二つ目は、分野と執筆陣の充実である。基礎、捻挫・靭帯損傷・肉離れ、打撲・骨挫傷、脱臼、骨折、末梢神経、外傷合併症の各分野で67項目を、治療の第一線で活躍中の70名以上の先生方が執筆されている。環軸椎回旋位固定などの小児疾患から高齢者脊椎脆弱性骨折まで、よくこんなに多くの先生方に執筆をお願いできたと驚いている。もちろん井尻先生のみならず共同編集委員の田中栄先生や松本守雄先生のご尽力であることは間違いない。私が気に入っている執筆方針は、それぞれに「治療に対する考え方」が記載されている点である。例えば手指の屈筋腱損傷や足関節果部骨折などで、保存的治療か手術的治療か、どちらを選択するかの考え方が示されている。治療原則がわかり、病態の理解がしやすい。

そして三つ目は、動画がついている。肩の各種テストのやり方、指腱損傷の診断の方法、ハムストリング肉離れの徒手検査法、踵骨骨折での大本法のやり方など20項目がスマホで簡単に見ることができる。整形外科医へのアンケートによると一番自信のない手技は、肩関節脱臼の整復法であったそうである。私もそうで、改めてゼロポジション法、Kocher法、Stimson法の整復法を動画で確認できて大変勉強になった。図で見るのと動画では、理解のしやすさが「天と地」である。

以上のように、実際にこの本を手に取ると、買って読みたくなることは間違いがない。関西弁では「このほん、じゅうぶん、もとがとれまっせ」と言える。

ニュースタンダード整形外科の臨床 1 整形外科の病態と診察・診断

ニュースタンダード整形外科の臨床 1 整形外科の病態と診察・診断 published on
Orthopaedics No.38(2025年3月号)「Book Review」より

評者:新井貞男(あらい整形外科院長)

本書は,「整形外科開業医や一般病院整形外科勤務医に真に役立つ書籍」を提供することを目的として編集された.整形外科医は新生児から高齢者までのすべての世代を,また骨折・打撲・捻挫等の急性外傷から,「腰痛症」「関節症」などの慢性疾患までを対象としている.こうした幅広い年代と疾患を整形外科外来で診察する際,短時間の診察や検査で診断を行う必要がある.疾患によっては基幹病院や大学病院の専門外来に紹介する必要がある.自院での処置治療や消炎鎮痛処置や運動器リハビリなどの保存療法で治療できるか,更には専門外来に紹介するかを診断するのは経験豊富な整形外科医でも迷うところである.そこで,従来の手術療法を主とするようなものでなく,整形外科開業医や一般病院の整形外科外来医師にとって直ぐに役立つようにと本書は編集された.

まず,『整形外科の病態と診察・診断』として第1巻が刊行された.

第1章は「運動器の病態生理と治癒機転」として,運動器の構成要素である,骨・関節・靭帯・関節包・筋・末梢神経の基礎知識と治癒機転について述べている.

第2章は「体表解剖と痛みやしびれから想定される病態」として,頚部・肩関節周辺・肘・手関節と手・胸部と背部・腰部・骨盤と股関節・大腿・膝関節周辺・下腿・足関節・足と整形外科のすべての守備範囲を網羅している.

第3章は「診察法(患者問診・診察・検査・診断)」として,頚部・肩関節周辺・肘・手関節と手・胸部と背部・腰部・骨盤と股関節・大腿・膝関節周辺・膝関節損傷・下腿・足関節・足・小児を紹介している.研修医は勿論,経験豊富な医師でも動画で診察法を再確認することは有用である.

第4章では「整形外科の代表的な病態と治療」として,痛み・炎症・急性慢性の違い・関連痛,放散痛などの病態を解説している.日常よく遭遇する,関節炎・骨挫傷,不顕性骨折・骨粗鬆症・関節リウマチ・痛風,偽痛風・肩こり・首下がり症候群・ストレートネック・いわゆる腰痛症・骨腫瘍及び軟部腫瘍・ロコモフレイルサルコペニア・成長痛などを分かりやすく解説している.

本書の特徴として写真や図だけでなく,QRコードを用いて動画を用いて解説していることである.診察法,体操療法,理学療法,装具療法などは動画で見ることにより理解しやすくなる.写真や図を何度見ても理解できなかったものも,動画を見ると直ぐに理解できる.

今までにない,現場で役立つリアルな新しい整形外科医の必携書である.