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はじめての学会発表 症例報告

はじめての学会発表 症例報告 published on

ああ,この本があったら,もっとクールな発表ができただろうな……

medicina Vol.53 No.9(2016年8月号) 書評より

書評者:山中克郎(諏訪中央病院総合内科)

私は國松淳和先生の活躍を非常に期待している.ユニークな課題へ果敢にチャレンジする精神,そして問題解決における着眼点が素晴らしい.不定愁訴や不明熱という皆が苦手な領域にもグイグイと切り込んで,理論的にわかりやすく解説していく.この本では「学会発表」「症例報告」がテーマである.
國松先生(Dr. K)の熱い指導を受けて,かわいい初期研修医が初めて学会報告を準備する様子が描かれている.「先生,学会で症例発表してみない?」と指導医から突然言われたら,研修医は緊張するだろうな……
まず症例の選び方,次に発表する学会をどう決めるかである.そして,抄録作成が始まる.漫画が効果的に使用されているので,若手医師は大事な流れをつかみやすいだろう.初期研修医による抄録の実例が提示されている.
作成された抄録に対する國松先生による赤ペン添削の実録まで記載されているのが嬉しい.「そうか,こんな点に着目してアドバイスすればいいのか」と若手医師から修正を頼まれる指導医にとっても大変参考になるに違いない.スライドで用いる視覚的効果の高い図表づくりでは.「セクシーかどうか」がポイントだという.なるほど,こんなスライドなら臨床経過は一目瞭然だ.聴衆を一気に魅了するに違いない.ポスター発表の準備では口演とは異なり「盛り込む」作業の重要性が強調されている.
最後は発表した内容を英語論文にすることである.ここまでできれば素晴らしい.この症例報告により,世界の誰かの命を将来救うことができるかもしれない.巻末には國松先生に指導を受けた先輩達からの温かいアドバイスがついている.
私の初めての学会発表は米国での基礎医学の学会においてだった.スーツで身を包み緊張でガチガチになりながら,たどたどしい英語で発表した.私の次に壇上に現れたのは,スポーツウェアを着た若者である.公園をジョギングし帰ってきたばかりという格好である.流れるように発表を終えフロアから多くの質問を受ける.隣でボスが「あの研究は最近Natureにアクセプトされたものだ」とつぶやくのを聞き,「学会発表は外見ではない,中身こそ大切」と思い知らされた.ああ,この本があったら,もっとクールな発表ができただろうな……


具体的ノウハウがスラスラと分かる

メディカル朝日 2016年8月号 BOOKS PICKUPより

多くの研修医を指導してきた著者が、経験をもとに学会発表・症例報告のノウハウをやさしくひもとく。指導医、初期研修医、後期研修医の3人が登場するマンガで、学会発表を勧められる場面から実際の発表後までの流れを解説した。それぞれの段階で基本的かつ重要な事項の解説と知っておきたい知識、エッセンスがまとめてあり分かりやすい。指導医にも大いに役立つ。

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号24-2029)
朝日新聞出版に無断で転載することを禁止します

総合診療専門医シリーズ 総合診療専門医 腕の見せどころ症例

総合診療専門医シリーズ 総合診療専門医 腕の見せどころ症例 published on

親しみやすく,また実際の研修の様子もイメージしやすい

総合診療 Vol.26 No.7(2016年7月号) GM Library 私の読んだ本より

書評者:前野哲博(筑波大学附属病院総合診療科)

新しい専門医制度の目玉として,総合診療専門医に注目が集まっている.その一方で,実際どんな診療をするのか,専門医をどのように養成するのか,といったイメージがつかみにくいため,混乱を招いているのも事実である.本「総合診療専門医シリーズ」は,この問題に正面から取り組んだ意欲的なシリーズで,第一線で活躍する総合診療のエキスパートが総力を結集して作り上げたものである.その第2巻(0巻があるので実質的には3冊目)では,専門研修に欠かすことのできない「ポートフォリオ」を取り上げている.
総合診療医の専門性については,手術手技のように,難度は高いものの到達目標が明確なものは少なく,「未分化で多様かつ複雑な問題への対応」のように,標準化・体系化が難しい暗黙知が求められるものが多い.その修得には「省察を繰り返して学びを深める」プロセスが不可欠であり,それが,総合診療専門研修においてポートフォリオが課されている大きな理由である.その一方で,ポートフォリオについてはあまり馴染みがなく,専攻医だけでなく指導医も,どうすればよいのか困ることが多いのが現状ではないだろうか.
本書は,ポートフォリオの記載方法のマニュアルではなく,どのようにポートフォリオに用いる症例を選び,その学びを深めていくか,を示した本である.本来,ポートフォリオは「研修終了間際に慌てて過去の症例を引っ張り出して作成する」ものではなく,「研修中に該当するケースを見つけ,研修の流れの中で学びを深めていくプロセスを記録する」ものである.したがって,良いポートフォリオを作るには,専攻医・指導医ともに,日頃の研修のなかでつねにアンテナを張っておき,各エントリー領域にフィットする事例に遭遇した時にすかさず「これはポートフォリオに使えるかも!」というスイッチを入れる,という関わりが求められる.その意味で,まず具体的なケースの例示から始まり,専攻医が指導医との対話を通して学びを深めていく様子が会話形式でまとめられている本書は,その実践的なプロセスを学ぶのに最適である.また同時に,教科書だけでは理解が難しい総合診療医の専門性についても,指導場面のダイアログと解説を通して,より実践的に理解を深めることができる.
本書はイラストも豊富で,「まんが めざせっ! 総合診療専門医」の若宮先生をはじめ,おなじみのキャラクターが登場するので,親しみやすく,また実際の研修の様子もイメージしやすい.総合診療専門医を目指す専攻医,指導に当たる指導医にとって,まさに本書の副題通り「最上のポートフォリオに向けて」お勧めの一冊である.

高齢者プライマリケア漢方薬ガイド-チーム医療で必ず役立つ56処方

高齢者プライマリケア漢方薬ガイド-チーム医療で必ず役立つ56処方 published on

初学者でも抵抗なく漢方薬を使える配慮が随所に散りばめられている

総合診療 Vol.26 No.8(2016年8月号) GM Library 私の読んだ本より

書評者:前野哲博(筑波大学附属病院総合診療科)

このたび,『高齢者プライマリケア漢方薬ガイド』が上梓された.著者の加藤士郎先生は,大変お忙しい診療の傍ら,毎週,当大学の医学生に懇切丁寧にご指導いただいている.また,頻繁に漢方セミナーを開かれ,漢方に興味をもつ医療者への指導にも熱心に取り組まれている.本書は,先生の温かいお人柄そのままに,初学者でも抵抗なく漢方薬を使える配慮が随所に散りばめられている.
漢方にあまり詳しくない医師でも,能書や解説本を読めば,候補となる薬剤をリストアップするのは,ある程度可能である.問題は,実際に処方する薬を1つに絞り込むところであり,どうしてAやBではなくCを選択するのか,という理由づけが難しい.もちろん,それぞれの使用目標となる証は書いてあるのだが,いわゆる「病名漢方」のレベルにとどまっている初学者には理解が難しい.また,薬理学的機序で分類できる西洋薬と異なり,漢方薬は1つひとつの薬剤のイメージを把握するのが難しいことも大きなハードルになっている.
本書は,初学者のこのような状況を熟知したうえで,迷わずに処方薬を決定できるような工夫が凝らされている.高齢者のプライマリ・ケアにおいて遭遇することの多い29の疾患・病態それぞれについて,まずファーストラインとなる薬剤が3つ示される.そして,その3つを使い分けるポイントが明快に示されている.特筆すべきは,その3つの薬剤について,イラストで適応となる患者のイメージと使いこなしのポイントが明示されていることである.さらに,典型例の症例提示,それぞれの構成生薬や使用目標のまとめが示されているので,各薬剤の位置づけを感覚的に理解でき,よりスムーズな薬剤選択につなげることができる.
それに加えて,体力と急性期~回復期のステージ別に薬剤の位置づけが一覧表で示され,処方期間や減量・中止の進め方も記載されている.まさに至れり尽くせりで,この一冊があれば,あまり経験のない医師でも,かなり安心して漢方治療を始めることができるだろう.
また,本書の副題は「チーム医療で必ず役立つ56処方」である.本書は,医師以外の看護師・薬剤師はもちろん,介護職や事務職,一般の方にも役立ててもらうことを意図して執筆されており,イラストを多用し,平易で簡潔な文章で記載されている.もちろん,難しい証の話は一切出てこない.まさに,漢方に気軽に取り組んでみたいすべての方に,お勧めの一冊である.


これから漢方を手がけたいと思っている医療従事者必携

Medical Tribune 2016年4月28日 本の広場より

漢方薬は,疾患を臓器ごとに診断する近代西洋医学と異なり,患者の容体や症状を診ながら処方する。本書は,そうした漢方薬の処方を患者の訴えが多い29疾患に絞り込み,実地診療での活用を図っている。各疾患の処方に広く有効性が認められているファーストラインの3処方の選択を中心に,その適応症状や処方のポイントを平易な文章とイラストで分かりやすく解説。各症例は主訴から始め,現病歴,現症,治療など各項目にわたり具体例を示している。これから漢方を手がけたいと思っている医療従事者必携のガイドブックである。


ビジュアルで理解できるポケット版

メディカル朝日 2013年8月号 BOOKS PICKUPより

高齢者で漢方薬を用いることが多い29疾患について、症状、体質、体力などの要素を組み合わせた随証投与という方法を用い、まず挙げられる三つのファーストライン・3処方の典型的な選択を紹介する。3処方の違いは一目で分かるイラストで、それぞれの構成生薬、症状と使用目標、使用時期と期間を表で、症例も示した。医師、コメディカル、患者にも読みやすい解説

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号24-2029)
朝日新聞出版に無断で転載することを禁止します

総合診療専門医シリーズ まんが めざせっ! 総合診療専門医

総合診療専門医シリーズ まんが めざせっ! 総合診療専門医 published on
メディカル朝日 2015年10月号 BOOKS PICKUPより

楽しく誇りを持てる総合診療医への道

後期研修医の夏期セミナーやオリエンテーション、病棟研修、救急研修、在宅診療研修、診療所研修などを通じて学んでいく過程を読みながら、総合診療とはどういった診療科なのか、その魅力を知るコミック。指導医からのワンポイントレッスンも実践的。さらに、2017年からの新専門医制度で設置される総合診療専門医の資格取得に向けて何を学ぶべきかも教示する。

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号23-3094)
朝日新聞出版に無断で転載することを禁止します

臨床医のための医療訴訟を回避するケーススタディ40

臨床医のための医療訴訟を回避するケーススタディ40 published on

医療における訴訟の手続きやその流れ、特に訴えられた場合に我々医師が何をすべきかを分かり易く解説

Anesthesia Network Vol.18 No.2(2014年2号) 麻酔科医に薦めたい本

書評者:廣田和美(弘前大学大学院医学研究科麻酔科学講座 教授)

私のお薦めしたい本は、白崎修一、他編著「臨床医のための医療訴訟を回避するケーススタディ40」です。昨今、医療事故、過誤にまつわる報道やその裁判の報道が新聞やネットによく出てきます。皆さんも、ご自身や身近な同僚が医療事故や過誤に関係した経験がお有りではないでしょうか? 私自身も、北海道にあった病院に勤務していた時に、深夜当直医から、救急車で来院した患者の蘇生の応援を頼まれ蘇生現場に立ち会いました。しかし、ひどい誤嚥性肺炎を起こしており、救命は無理でした。その後、遺族がその当直医の対応に問題があったとして裁判を起こし、私も裁判所に呼ばれ原告側の弁護士と対峙した経験があります。その時は私の意見を裁判官が認めてくれて、当直医の過失は全く無しとなり、ホッとしたことを思い出します。その後も、大学病院ですので何年かに1例くらいは院内での医療事故に関連した訴訟が起きており、身近な問題と感じています。しかし、私白身が法律に疎い上にそれを簡易的に勉強する手段を持っておらず、気になりながらも何もせずに今まで医療を続けてきました。多くの皆さんも同様ではないでしょうか?
本書は、総論で2名の弁護士が、医療における訴訟の手続きやその流れ、特に訴えられた場合に我々医師が何をすべきかを分かり易く解説しています。そして各論では、白崎医師(麻酔科)と澤村医師(脳外科)が、民事医療訴訟の事例および判決を、弁護士のコメントに加えて、医師の立場から我々医療関係者が分かり易いように解説してくれています。各論の40症例の多くは、我々麻酔科医が関与する周術期に関わるもので、いつでも起こりそうな内容ばかりです。特に、Case 2や10の気管挿管困難症例、Case 19の低血圧麻酔による脳障害症例などの麻酔管理そのものが問題となったケースもあります。また、本書では、単に医療事故の経緯だけでなく、判決の基準となった根拠、つまり過誤なのか事故なのか、医療水準、因果関係、説明義務違反の程度などから、起こった事故は同じでも、判決が大きく変わることがあることを示しています。
この一冊を持っていることで、いざそのようなことに遭遇した時、慌てずに冷静に対処できるのではと思い、皆様にお薦めする次第です。


臨床に携わっている現場の医師たちには有益な内容のある本

臨床麻酔 Vol.37 No.10(2013年10月号) 書評より

書評者:並木昭義(小樽市病院局長)

このたび「臨床医のための医療訴訟を回避するケーススタディー」の本が中山書店より上梓された.この本の筆頭編著者の白崎修一氏(麻酔科医)は夜間の法科大学院で法律を修得し,医療現場で臨床医が苦悩する訴訟問題に役立てる目的でこの本を企画,出版した.同志の編著者として澤村豊氏(脳神経外科医)および弁護士の田端綾子氏と中村誠也氏が加わった.一読し,この4名のチームワークのすばらしさを感じた.
この本の構成は大きく2部に分かれ,その内容は中身が濃く,豊富であり,かつ明解に書かれてある.Part Iは総論で「医療訴訟でおさえておきたい基礎知識」で2名の弁護士が担当し,医療における訴訟手続きやその流れを分かりやすく解説する.このPartは5つのChapter(章)とそれに関連した項目,さらに細項目から成る.1章は医療事故とはで,3項目がある.2章は医療過誤を起こしてしまったらで,9項目がある.3章は医療過誤と疑われたらで,4項目がある.4章は医療訴訟を起こされてしまったらで,9項目がある.5章は医療事故からの学びで,2項目がある.これらの項目の基本的知識をより実践的な形式にして,読者が興味をもち,理解しやすくするためにQ&A形式にする.それぞれの項目を文章化して質問として表記する.それを解決するために必要な事項に対する医学的知識,情報を提示する.できるだけ図表を多く取り入れて解説する.さらにページ紙面の余白に文中の略語や語句の説明などのコメントを入れる.この項目の内容をまとめ解説する.そして結論として回答を明示する.編著者が重要であると判断した情報のコラムを掲載する.このようにPart Iは法律に疎い臨床の医師らにも明確に理解できる工夫がいろいろとなされており,その内容は大変有益であるので必読することを勧めます.
Part IIは各論で「ケーススタディ」であり,白崎氏と澤村氏が担当する.これまでの医療民事訴訟の中から内科(呼吸器,循環器,消化器),小児科,麻酔科,放射線科,皮膚科,救急,外科(脳神経,整形,消化器),産婦人科,歯科,病理のケース40編を選別し,紹介する.各事例の経緯の文章はよく書かれており感心した.ストーリーを明確にするためにはその内容を図表にまとめてみることである.本文ではその方法を活用する.また,各事例の民事訴訟の判決文の要約を載せる.事例の問題点を挙げてそれについて解説する.その結論をまとめる.まとめるに当たって参考にした各種ガイドラインなどの医学資料を明示する.そして医師として得た教訓と弁護士からのコメントを載せる.
このように各事例の内容は読者に理解してもらう,役立ててもらうための工夫が十分になされてある.私自身はこれまで法廷に直接立ち,意見書,鑑定書を書き,裁判所の専門委員を務めるなど訴訟,裁判に関して多くの経験をしてきた.私は,この本を読んで納得できる場面が多くあり,知識の再整理できたことを喜んでいる.それと同時に臨床に携わっている現場の医師たちには有益な内容のある本であり,参考になるので是非手元に置き,活用されることを勧めます.


訴訟を恐れることからくる医療現場の萎縮を抑える一助となる

LiSA Vol.20 No.8(2013年8月号) Medical Booksより

紹介者:白崎修一(札幌秀友会病院)

臨床医は,常に医療事故というリスクに接している。とはいえ,及び腰で医療に従事するというのは悲しいことである。
医療訴訟の判決文は,医療者が読むには非常に難解である。その判決文を医師がリライトし,弁護士からのコメントを加えてケーススタディとして読めるものがあれば,訴訟の流れや争点となった医療行為を理解することができ,それが訴訟を恐れることからくる医療現場の萎縮を抑える一助となるのではないか,と考えて本書を企画した。
前半部分は医療訴訟をよく知る弁護士に,トラブル解決に結びつく観点を訴訟の仕組みとともに医療者目線で書いてもらった。訴訟の仕組みや,裁判で争点がいかに捉えられているかなどを理解しておくことは,必ずや前向きな医療を行っていくのに役立つはずである。


治療する側とされる側の不幸な対立を避けるために読んでおきたい

Medical Tribune 2013年6月27日号 本の広場より

帝王切開手術を受けた産婦が死亡し,執刀医が業務上過失致死と医師法違反の容疑で逮捕された福島県立大野病院の事例は,医療関係者に衝撃を与えた。医療従事者の誰もが医療事故に関する刑事裁判の被告になる恐れがあり,また,誰もが事故原因の説明に不満を感じたり納得できなかったりすれば告発できるのである。今や他人事ではなくなった医療訴訟に対する備え方を,医師と弁護士がケーススタディを交えて解説する。
前半は,医療事故の分類から患者に対する説明義務の在り方,損害賠償額の計算方法など基礎知義か述べられている。2人の弁護士が医療に関する訴訟の手続きや流れを説明する他,さまざまな事件や司法用語に関するコラムも掲載した。
後半の各論部分では,民事訴訟で出された判決文の要約から事例を時系列に基づき再構成し,医師としての立場で得られる教訓や弁護士のコメントを挟んだ。刑事訴訟については個別事例の提示を避け,総論で触れるにとどめた。医療訴訟のケーススタディは40編に及び,現在公表されているガイドラインとの整合性についての解説も付記されている。治療する側とされる側の不幸な対立を避けるために読んでおきたい1冊である。


組織に1冊あると心強い内容

ベストナース 2013年6月号 Book Reviewより

白崎修一・札幌秀友会病院副院長、澤村豊・さわむら脳神経クリニック院長ら札幌の医師、弁護士による医師向けの訴訟リスク対策テキスト。医療分野での訴訟について実際にあった40ケースを読み解き、法と医療の関係を解説しています。判例だけではわかりにくい事件前途の経過の要約を当事者目線で綴り、概略を図解で整理。病院など組織に1冊あると心強い内容です。


白崎、澤村両医師と弁護士2人が解説

介護新聞 2013年4月25日号より

中山書店から発刊された「臨床医のための医療訴訟を回避するケーススタディ40」は実際にあった四十のケースを医師と弁護士が読み解き、法と医療の関係を解説した訴訟リスク対策のテキスト。
編著者は白崎修一札幌秀友会病院副院長、澤村豊さわむら脳神経クリニック院長と札幌の弁護士・田端綾子、中村誠也両氏。
医療者が知っておきたい裁判や医療訴訟の基礎知識として医療過誤と医療水準・因果関係、説明義務、賠償責任のほか、法的責任の種類や医療過誤を起こした場合の対応、刑事裁判、行政処分、無過失補償制度を説明。裁判費用、マスコミ対策、モンスターペイシェント、カルテ記載上の注意点にも言及している。
判例だけでは分かりにくい事件前後の経過要約を、医師二人が当事者目線でつづり、概略がイラストで一目で分かる構成。
訴訟を回避するための教訓を得られ、病院など組織に一冊置いておきたい内容だ。

離島発 いますぐ使える! 外来診療 小ワザ 離れワザ

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“Experience Based Medicine”の数々

メディカル朝日 2014年9月号 BOOKS PICKUP

島根県隠岐諸島の西ノ島で総合医として16年間地域医療を支えてきた著者らが、医療機器や専門医に恵まれない限られた環境の中であみ出した「小ワザ」「離れワザ」を紹介する。どれも創意工夫に満ちていて興味深く、特にエコーの様々な使い方は参考になる。また住民に濃密に関わりながら熱心かつ大らかに診療する現場の情景が伝わってきて、読む者にも力が湧いてくる。

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見逃せない・よくある 外臓疾患の診かた・みつけかた

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主要症候から診療を進めるノウハウ

メディカル朝日 2012年7月号 p.79 BOOKS PICKUPより

「外臓」疾患は、内臓疾患のように血液や画像診断によらず、患部をよくみることが必要となる。しかし臨床研修が必須ではないため、苦手とする医師が多い。眼、耳、口・のど、皮膚、泌尿器、運動器の主要症候の検査・手技、症候・疾患、全身病・他疾患診断への診かたについて、フルカラーの図表や写真とともに、すべての医師に知ってほしいポイントを丁寧に解説した。

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号24-1461)
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マイナー科が苦手な方には特にお薦め

KOKUTAI 2012年4月号 informationより

内臓に対して眼、耳、鼻、口・喉、皮膚、泌尿器、運動器などの外臓疾患の診療に役立つテキストが本書です。主要な症候から診断・治療を進めるノウハウが詳しく解説されている他、オールカラーで写真やイラストも豊富に掲載されていますので、研修医になってからも心強い味方になってくれるはず。マイナー科が苦手な方には特にお薦めです。

早わざ外来診断術

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主要徴候からの鑑別診断に強い味方になってくれる1冊

日本医事新報 No.4463(2009年11月7日) BOOK REVIEW 書評より

評者:田妻進(広島大学病院総合内科・総合診療科長・教授)

外来診療とは実に奥が深い。そもそも医療の基本は外来での〝診たて〟であり、とりわけ、診断はその中心である。したがって、迅速かつ精度の高い診断が、外来診療の質を担保する。その観点から、本書のタイトル〝早わざ外来診断術〟は実に魅力的である。

さて、〝早わざ〟とは誰しも望むところではあるが、〝わざ〟とは〝技〟であり、〝術〟でもあるとともに、〝業〟にも通じる。これら①スキル、②アート、③プロフェッショナルを意識しながら本書を評すると、次のようになろうか。

(1) 「主要徴候」から鑑別診断をリストする道標となる。この作業(修行)を繰り返しながら、疾患スクリプトの引き出し(drawer)が豊富になる期待感に誘われる。ただ、挙げられている主要徴候の項目が豊富である反面、〝鑑別診断テクニック〟の情報が割愛されていて、読者自らが汗を流すべき点を提案しているとも受け取れる。

(2) 「主要徴候」は時として複合的であるとともに、その的確な聴き取りも決して容易ではない。その点、本書の冒頭に列挙された〝使い方シミュレーション〟は、読者の立場に配慮した演出として好感が持てる。外来診療(時にはベッドサイド)で直面する主要徴候に関して、自身で鑑別診断が挙げられない場合に、マメ辞典のように用いるのに優れており、また、表や写真も豊富で読者に親切である。

(3) ただ、あくまでも主訴に対する鑑別診断の確認が主体であり、その次のステップ(実際的な鑑別プロセス)には、適当なリリーフを待機させる必要がある。これは読者の側のビジネスである。蛇足ではあるが、〝ポケットサイズ〟というには、少し大きめのポケットを用意しないと収まりそうにないサイズである。

日常診療の外来という土俵で本書を有効に活用するには、主要徴候を診たてるコミュニケーションスキルが前提となるように思えてならないが、ある程度の臨床に関する基礎的知識を持っていても、着目した臨床上の特徴から診断へのアプローチができない場合に、心強い味方になってくれる1冊であることは疑う余地がない。

当直と救急の現場で使える 腹部救急超音波診断

当直と救急の現場で使える 腹部救急超音波診断 published on

見えない時,描出できない時のもう一歩突っ込んだアドバイスが記載されているのは秀逸

medicina Vol.52 No.5(2015年4月号) 書評より

書評者:林 寛之(福井大学医学部附属病院総合診療部)

超音波はいまや聴診器より気軽に,正確に使えないといけない必須の武器と言える.将来医者一人に一台持ち歩く時代になるんじゃないかしら?
超音波がうまくなりたいと切実に願う初学者も多いだろう.小児の虫垂炎だって超音波だけで診断すればいいのに,CTばかりとっているようではダメチンだ.
超音波の本って世の中たくさんあるが,本書の特筆すべき点は,まず正常像の描出の仕方がきちんと書いてあることだ.病気がわかりやすく目の前にやってくるはずもなく,まずは正常の臓器がどう見えるのか,どうしたら描出できるのかを知らないとまったく役に立たない.初学者はまず正常の超音波検査をたくさんやって,瞬時に目的臓器を描出できるようにならないと,病変をうまく描出できるはずもない.描出のポイント,観察点がきちんと最初にまとまっているので,初学者はまずここを覚えてかかるといい.
プローブの操作法が細かく記載されているのは,読者に実際に使ってもらうためのコツであり,なかなかかゆいところに手が届いている.「ここでこうやったら見えるよ」的な安直な書き方ではなく,見えない時,描出できない時のもう一歩突っ込んだアドバイスが記載されているのは秀逸であり,当直や救急の現場で使うには実にうれしい.検査手順がわからずにやみくもに超音波を使っているあなた.まずは本書を通読しましょう.
各論も充実している.単なる検査本ではなく臨床上知っておくべき知識が最初に「検査前に理解しておくポイント」としてまとまっている.続いて検査の進め方が実践的に記載してある.超音波画像の解説も,白黒反転した画像も併載してあり,解剖学的な位置関係がわかりやすくなっている.
巻末の「サインとアーチファクト」ってなんとなくいい感じ♪超音波をするうえでは知っておくと便利な知識がうまくまとまっている.ちょっとしたウンチクを知っているとうれしいものだ.
しいてリクエストするとしたら,お腹を出しているモデルがもっと……(○△□※怖くて書けない(-_-)/~~~ピシー!ピシー!)

チーム医療を成功させる10か条

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「チーム医療人」に最適のテキスト

看護実践の科学 Vol.38 No.13(2013年12月号) Booksより

書評者:陣田泰子(恩賜財団済生会横浜市南部病院)

今,医療・福祉の現場で一番使われている言葉が「チーム医療」であることは間違いない。日々の会話での使用頻度の高さもうかがい知れよう。昨今の学会誌・専門書籍などを開けば本テーマが目に入ってくるほどホットな話題である。
古くて,なお新しいこのテーマが今なぜ再燃したのだろうか。本書の冒頭で著者が述べるように2009年,厚生労働省肝いりの「チーム医療の推進に関する検討会」の発足がその機であろう。しかし実際には1997年の入院計画書への医師以外のチームメンバーの記入,その後に続いた各種チームに点数化された診療報酬により政策誘導的に「チーム医療が推進させられた」のである。そのように誘導しなければ進んでいかなかったことに,この問題の深い根が見えてくる。
表層をたどると簡単に映るこの問題を,そうはしなかったところに本書の特徴がある。「表と裏」「プラスとマイナス」,よいことばかりでないのが現実である。著者はジャーナリストとしての視点と方法論を用いて,その両面を探り,「どのようによいことに近づけていくか現場は模索している。時間的経過,プロセスを丁寧に取材し追跡する」。「その足跡をたどる仕事はメディアの役割と感じた」という著者の言葉にその姿勢が見て取れる。
第1章「チーム医療の意義とチーム作りのポイント」では,チーム医療がなぜ今求められているのか,時代背景から記述されている。最初に読んだときは,ここが<山場>であり,後半に続くカギとなるので,もう少しページを割いてあればよいのに……と感じた(その後の感想は後述する)。
第2章は「チーム医療を成功させる10か条―現場に学ぶチームメンバーの心得」である。それぞれの成功要因にふさわしい具体的な病院をあげながら説明しているところに著者の「取材力」が示されている。通常ならば10か条をあげ解説で終わらせてしまいかねないところを,現実を証拠として見せながら各チームの特徴を見抜き,10か条を導き出している。
第5章は「チーム医療の課題―病院経営と患者参加」である。私が第1章で「現実はもう少し……」と思った部分が,実はここに表現されていた。
各職種の専門性とスキルが整理された第6章「チームメンバーの専門性とスキル」は,「多職種協働」をテーマとした研修などの際に即,役立つ。すでに私は参考にさせていただいた。


大勢の声をくみ上げた実践的ヒント集

メディカル朝日 2013年10月号 BOOKS PICKUPより

本誌で連載した記事に加筆。全国12施設をモデルケースに、いかにチーム医療を作り、進化、成熟させていくか、具体策をまとめた。チーム作りのポイント、活発で継続可能なチーム医療に必要な「心得」の提言を中心に、その卒前教育、評価にも触れ、課題克服の術として病院経営と患者参加に焦点を当てて解説した。多岐にわたる職種の専門性や診療報酬加算も簡潔に紹介。

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号23-2330)
朝日新聞出版に無断で転載することを禁止します