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ヴィジュアル糖尿病臨床のすべて 最新インスリン療法

ヴィジュアル糖尿病臨床のすべて 最新インスリン療法 published on

どこから読んでも面白い 最先端情報と実臨床の知恵が凝集

糖尿病診療マスター Vol.9 No.6(2011年11月号) New Booksより

評者:大西由希子(朝日生命成人病研究所 糖尿病代謝科 治験部長)

この本を最初に手にしたときに思った.「研修医のときにこの本が手元にほしかった!」そして,ぱらぱらとページをめくりながら感じた.「糖尿病臨床の現場で困ったときや研修医を指導するときにこういう本があると助かる!」じっくり読んでみると「糖尿病専門医の自分にとても役立つありがたい本だ!」と内容のレベルが高く充実していることを知った.

図表を使ってビジュアルに理解をしやすい構成になっており,ポイントが箇条書きでまとまっているため,どこから読んでも読みやすく面白い.理論にとどまらず,実践の場において出くわすさまざまな問題にも対処できるよう,最先端情報と実臨床の知恵が凝集されている.

第1章「インスリン治療の基本」ではインスリンの生理的生合成と作用機序,インスリンの分泌と抵抗性の評価についての記載ののち,インスリン製剤の歴史やインスリンの体内動態,インスリン投与量についての理論が紹介されている.さらにはインスリン製剤の種類と特性が述べられ,体内におけるインスリンの役割とインスリン治療の概要の基礎的理解が深まる.

第2章「2型糖尿病のインスリン治療」の「インスリン自己注射治療」では,手技や理論にとどまらず患者心理をふまえたうえで実臨床に役立つ国内外の大規模調査をわかりやすい図やグラフを用いて示し,エキスパートの糖尿病専門医の経験も盛り込まれている.低血糖やシックデイなど,インスリン治療を行う際に絶対に忘れてはならない注意事項の病態の理解と治療の実践にも役立つ.「外来インスリン導入例」ではさまざまな場合の具体的な症例が多数示され,インスリン導入を習得する医師のためにとても良いガイダンスになるだろう.「病棟でのインスリン治療」では糖尿病昏睡,糖尿病合併妊娠,ステロイド糖尿病,手術前後の血糖管理,肝硬変・肝疾患,腎不全・透析患者など頻度は多くなくとも重要である特殊な状況におけるインスリン治療についての解説がされている.MAT療法など新しい概念での治療法についての紹介も興味深い.「インスリン治療がしばしば難渋するケース」ではインスリンアレルギー,皮下硬結,インスリン抗体などインスリン治療に伴い遭遇する問題について扱い,また高齢者,認知症,精神疾患,高度肥満などインスリン治療を困難にする状態のインスリン治療についても解説する.

第3章「1型糖尿病のインスリン治療」では用量設定の考え方に始まり,若年患者に対する指導のポイントやカーボカウント,インスリンポンプなどについて解説し,膵臓・膵島移植についての最新の話題にもふれている.

これから糖尿病臨床を学ぶ初期研修医,糖尿病専門医を志す内科医師,血糖コントロールが難しい症例に出合って困っている糖尿病専門医,あるいは糖尿病を専門としないが糖尿病患者を診療する医師……さまざまな読者層に対してそれぞれの立場に役立つ情報が満載の本だ.

運動器スペシャリストのための整形外科外来診療の実際

運動器スペシャリストのための整形外科外来診療の実際 published on

整形外科医のみならず,理学療法士・作業療法士や看護師など運動器に関わるメディカルスタッフにとっても必須の書

Orthopaedics Vol.27 No.12(2014年11月号) BookReview

書評者:帖佐悦男(宮崎大学医学部整形外科)

2007年,日本整形外科学会がロコモティブシンドローム(ロコモ;運動器症候群)を提唱してから,運動器の重要性やロコモ予防の大切さが国民に少しずつ広まってきている.そのロコモ対策の一翼を担っている日本臨床整形外科学会は一般社団法人化され,NPO法人全国ストップ・ザ・ロコモ協議会(SLOC)を立ち上げるなど,これまでにもましてロコモ対策に取り組んでいる.現在ロコモの対象者は予備軍も含めると全国に約4700万人いると推定され,そのうち,運動器の障害が原因と思われる患者は,最寄りの整形外科を受診することとなる.「医学」は,もともと診断・治療が中心であったが,ロコモティブシンドロームが提唱されたのを契機に予防医学にも重点が置かれ始めている.
そうしたなか,このほど運動器を扱うスペシャリストのための必須の書として『整形外科 外来診療の実際』が発刊された.本書は,臨床の第一線で活躍されている先生が,個々の経験やエビデンスに基づき,最新の知見を交えて執筆されている.また,保存療法や予防的介入を中心に,すでに開業されている先生のみならず新規に開業される先生や若手医師にとって必要な診療の基本的知識や実際の診療でのコツ・極意や患者指導,さらに必要書類作成のポイントを盛り込むなど,臨床家の立場に立って編集されている.
この本では,整形外科外来診療にあたり必須の内容をわかりやすく10章に分け系統立てて記述してある.第1章では運動器疾患の診察に必要な極意のみならず,診療上大切な子どもの疼痛性疾患の鑑別や2016年度から実施予定の学童期運動器検診についても取り上げられている.この章を読むことで運動器疾患の診察法をマスターすることが可能である.
第2章では成長期の子どもたちや高齢者の診療上必要な運動器疾患の評価法のみならず,患者立脚型評価,ロコチェック,見逃すと後遺症を残しやすい子どものスポーツ肘,関節リウマチの評価法まで網羅され,各々の部位でポイントとなる評価法,最新のMRI画像や関節鏡写真などが満載されている.
第3章「検査・診断のコツ」では,検査診断の進め方と鑑別のポイントに加え,実際の現場でよく遭遇する疾患の検査・診断法が記載されており,すぐに役立つ内容となっている.
第4章「保存療法の実際と成功の秘訣」では,保存療法の具体的実施法とともにベテラン臨床整形外科医の保存療法の極意がコンパクトにまとめられている.
第5章「保存療法の限界と手術適応を考えるポイント」では,患者にとって最も大切な「絶好の機会;Windows of opportunity」について代表的疾患ごとにわかりやすく記載されている.保存療法は最も大切な治療法であるが,漫然と保存療法を続けていると早期の社会復帰や治療後の合併症を残す可能性がある.そのためにも手術適応は現場の臨床医にとって重要である.
クリニックでも症例によっては,外来処置や外来小手術が必要不可欠な場合がある.第6章はその時の注意点からコツについて系統立ててまとめてある.
第7章は,現在の医療にとって大切な予防法に関し,臨床整形外科医の立場からすぐに臨床家が実践できるように具体的な介入法の知と技がまとめられている.
第8章は,患者の満足度をより高めるためになすべきこと,また,医療安全の観点から診療で必須の「患者指導・患者対応の心得」を簡潔にまとめてある.
第9章は,診療には避けて通ることのできない書類作成のポイントを実例で示し,初めて書類を作成する医師やベテランの医師にとっても有用な章となっている.
診断・患者説明には,昨今の画像診断の発展も加わり画像を示すことが必須になってきている.しかし,運動器の多くの疾患について精通するのは大変困難である.そこで最終章の第10章では,運動器のすべての分野の画像診断を患者説明の際に活用しやすいようにまとめてある.
本書は,運動器スペシャリストにとって必須となる整形外科外来診療の実際をコンパクトにまとめた診療マニュアルであるとともに,患者への説明や診療にまつわる書類作成の際の参考となるガイドブックとしても利用できる.整形外科医のみならず,理学療法士・作業療法士や看護師など運動器に関わるメディカルスタッフにとっても必須の書としておすすめしたい.

医療現場の清浄と滅菌

医療現場の清浄と滅菌 published on

滅菌業務に関わる全てのスタッフを対象に,初心者にも理解できる内容になっている

Medical Tribune 2012年12月27日 本の広場より

病院やクリニックで患者の治療に使用される全ての機器や医療材料は,絶対的に安全なものでなくてはならない。日本医療機器学会の認定で2000年に第二種滅菌技士が,2003年に第一種滅菌技師が誕生して以来,わが国の滅菌に関する知識や技術水準は飛躍的に進歩を遂げてきた。その一方で,医育機関では滅菌に関する教育カリキュラムが充実しておらず,医師や看護師が滅菌に関する技術や知識を学ぶ機会は少ない。
滅菌の要諦は,医療機器を患者に対して安全に使用できるようにし,患者と作業者の双方にとって不用意に危険が降りかからないように処理することである。滅菌作業にかかる責務は「確実な安全性の保証」にある。
滅菌業務に関わる全てのスタッフを対象に,感染性徴生物の増殖力や生物学的対策,滅菌の基本である高圧蒸気滅菌の原理と仕組みを中心に,初心者にも理解できる内容になっている。

新しい体位変換

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動的外力によって生じた褥瘡の特徴や発生のメカニズムについて,症例で詳しく説明

臨牀看護 Vol.39 No.14(2013年12月号) 書評より

書評者:田中秀子(淑徳大学看護栄養学部教授)

体位変換の目的は,治療や処置に必要な体位を保持することと,同一体位による関節拘縮,循環障害,呼吸障害,褥瘡の発生を予防することである。通常,仰臥位から側臥位へ,また仰臥位から長座位へなどに,枕や毛布,クッション,スライディングシートなどの物品を用いながら,看護者の手によって行われる。
褥瘡が最も発生しやすい部位は仙骨部であるが,とくにファーラー位などでは仙骨部にずれを生じ,褥瘡の悪化をまねくとして注意が促されてきた。そのためファーラー位にしたときには必ず,体位変換で生じたずれを取り除くために,ベッドから身体を離して「背抜き」を行うことが推奨され,背抜きは浸透しつつある。しかし,そのほかの移送時や対象者の体位を変えるときはどうだろうか。看護者は“体位を変えること”に主眼をおき,そのときに生ずるずれへの配慮は十分とはいえなかったのではないか。
本書では,褥瘡の創の悪化(変化・変形)の原因が,不適切な体位変換,身体移動,ベッド操作やおむつ交換にあると指摘している。著者はこれまでも多くの症例を経験し,その症例の分析によって出された結論から体位変換の危険性について述べている。
看護職として非常にショッキングであったのは,「(人の手による)体位変換によって褥瘡が悪化する」という内容である。つまり,今までの体位変換の方法には,褥瘡創面へ悪影響を及ぼす動作が含まれているということである。著者は「静的外力」と「動的外力」について解説しているが,「静的外力」とは重力のもと,身体にかかる過剰な圧のことで,これは体圧分散寝具によって軽減できるものであるが,一方「動的外力」は身体が他の力によって動かされることによって生じる外力であり,例えば手を背部に滑り込ませるときに無理やり押し込むことによって生じる。高齢者などは,そのときに皮膚がよれ,重なり,それが褥瘡発生につながりかねない。この動的外力が問題であると著者は指摘している。看護職としては耳の痛いところであるが,悔しいかな現場の忙しい臨床では,それぞれの対象者の特性や疾患に適した体位変換は行われてはいないのが現実であろう。
本書ではこの動的外力によって生じた褥瘡の特徴や発生のメカニズムについて,症例で詳しく説明している。褥瘡があるときの体位変換の方法についてもわかりやすく言及されており,実践に活かせる内容になっている。
本書の内容は看護界に一石を投じるものである。褥瘡ケアの専門家ばかりでなく,広く看護や介護に従事する人たちにも必携の書である。


人の手によらない体位変換を

月刊ケアマネジメント 2013年10月号 Let’s read Booksより

褥瘡予防・治療の第一人者である著者の最新刊。褥瘡にならないために、これまで推奨されてきた「2時間おきの体位変換」に疑問をなげかけ、むしろ人の手による体位変換が褥瘡を悪化させていることを解き明かしている。
理屈はこうだ。人の手による体位変換は、体圧を受ける部位の移動と分散という「静的外力」を排除する。一方で、圧やずれという「動的外力」を創面に生じさせ、治癒に影響を与えてしまう。つまり体位変換が不要なのではなく、動的外力の影響を少なくした優しい体位変換の方法が必要ということだ。例えば人の手で行う際には、ポジショニング手袋やスライディングシートの使用したり、そのほか自動体位変換マットレス、ポジショニングピローの活用も提案している。
体位変換の意義について考察しつつ、実際の14のケースについて治療経過とケアのポイントを写真つきで紹介している。最新の褥瘡ケアを学びたい看護師はもちろん、介護職も参考になる一冊。

アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 すべてがわかる ALS(筋萎縮性側索硬化症)・運動ニューロン疾患

アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 すべてがわかる ALS(筋萎縮性側索硬化症)・運動ニューロン疾患 published on

我が国の頭脳が結集して作り上げたALS・運動ニューロン疾患の最高の著書

BRAIN and NERVE Vol.65 No.10(2013年10月号) 書評より

書評者:田代邦雄(北海道大学名誉教授/北祐会神経内科病院顧問)

このたび,『すべてがわかるALS・運動ニューロン疾患』と題する書籍が出版された。難病が多い神経疾患,その中でも“難病中の難病”である本疾患に対し,タイトルで“すべてがわかる”と言及されている如く,この領域のトップ・リーダで専門編集者である祖父江元名古屋大学教授が,本邦におけるエキスパートを網羅し,本文総計370ページにわたる単行本を完成されたことに対し,まず心からなる敬意を表する次第である。
その内容は,I章「運動系の構造と機能」に始まり,II章以降は「臨床像と診断」「関連運動ニューロン疾患」「病態関連遺伝子と遺伝子変異」「病態」,そしてVI章の「治療と介護」に至り,さらに最後には興味あるCase Study 5症例を呈示,Lectureとして解説するという構成となっている。
各章内の記載は,そのテーマごとにまず主要論点を薄黄色の下地にPointとして呈示,つづいて鮮明な図表を交えて簡潔・明瞭な解説,そして必須文献を付し,さらに欄外にKey words,Memoを配する本シリーズで用いられている構成で,読者の理解がさらに深まるよう配慮されている。
本書の企画,そして執筆者の人選も含めた重要ポイントについては祖父江先生の序文に簡潔明瞭,しかも実に見事に網羅,紹介されており,また,その期待に応えて我が国の頭脳が結集して作り上げたALS・運動ニューロン疾患の現時点での最高の著書,むしろ“バイブル”とも称することのできるものであり,これらをベースとして今後さらなる発展を目指す心意気も伝わってくるのである。
各章ごとの個々の内容について触れることはできないが,ALSの臨床ならびに研究は世界レベル,そして共同作業にも繋がり,一方,歴史的には「神経学の父」とされるCharcot(1825-1893)まで遡る。また重要な診断基準の策定の歴史は,1990年5月,世界中のALSの権威がWFNの招請でスペインのEl Escorialに集合,1994年にEl Escorial WFN基準として発表,その後1998年に米国Virginia州Airlie Houseで検討・策定したのが「改訂El Escorial基準(Airlie House基準)」である。さらに2006年横浜で開催の第17回ALS/MND国際シンポジウムの後に専門家が淡路島に集合し電気生理学的手段を取り入れた「Awaji基準」を提唱したことも画期的な出来事で,日本の貢献大なることが示されたのである。薬物治療についての大きな進歩は残念ながら達成できていないが,米国での治療の現状はコロンビア大学の三本博先生より,また日本からは患者ケア,リハビリ,災害対策も含めての詳しい解説もなされている。
本疾患の世界的専門誌は1999年に“Amyotrophic Lateral Sclerosis and other motor neuron disease”として発刊され,その後“Amyotrophic Lateral Sclerosis”,そして2013年より誌名を“Amyotrophic Lateral Sclerosis and Frontotemporal Degeneration”へと発展的に変更している。その理由・経緯についても,現在この専門誌のEditorial Boardに名を連ねておられる祖父江先生が簡潔に本書の序文で触れておられ,本疾患の診断,治療,研究の世界的レベルに日本も参画,かつ着実に実績を積み重ねてきていることを実感,今後さらなる発展を期待しつつ書評の纏めとさせていただく。

アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 小脳と運動失調

アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 小脳と運動失調 published on

わが国が誇る小脳研究の金字塔

BRAIN and NERVE Vol.65 No.6(2013年6月号) 書評より

評者:金澤一郎(国際医療福祉大学大学院長)

「小脳はなにをしているのか」という問いに,現在のわが国の英知を結集して挑戦したのが本書である。専門編者である西澤正豊先生が序で書かれたように,わが国には伊藤正男先生という小脳の基礎研究の巨人と,脊髄小脳変性症(SCD)の運動失調に対する治療薬のTRHを世に出された祖父江逸郎先生という小脳疾患研究の巨人がおられる。このことが日本での小脳機能あるいは小脳疾患への関心を高めてきた。その表れが厚生労働省の「運動失調症調査研究班」であり,昭和50年に始まった後,現在までに挙げた功績は数限りない。特に疫学的研究と脊髄小脳変性症各病型の病因遺伝子に関する業績は世界に誇るべきものである。
そうした業績の中で,忘れられている疫学調査の結果が一つある。多系統萎縮症(MSA)には,自律神経症状で始まり,ほぼ2年以内に小脳症状や錐体外路症状が加わるという概念で集積した「SDS」があり,その頻度が日本では全SCDの7%弱に及ぶ。しかもその80%以上が男性であるという事実は見過ごせない(平成元年の平山班の統計)。SDSをないがしろにするのは勝手だが,ここに新発見のヒントがあるに違いないと私は思う。いつか挑戦して欲しいと思っている。
本書は,非常に緻密に物を考える西澤先生の編集になるだけあって,ほぼ完璧な構成になっていて,「わが国が誇る小脳研究の金字塔」と言って良い。小脳の機能局在,症候学,検査法,臨床と分子生物学を合わせた病態,治療,それに非常に役に立つ7例のcase studyが続く。それだけではない。ほとんど全ページがカラー印刷である他,ポイント,コラム,メモ,キーワード,などきめ細かい配慮によって理解を助ける仕掛けも豊富である。また,各ページの外側には4cm以上の余白があって,自分でメモができるようになっている。これほど配慮の行き届いた本を私は知らない。だから,索引を入れて本文336ページの本書が12,000円というのはやや高いという印象があるかも知れないが,その内容を見れば納得する。本書を,是非とも蔵書に加えられることをお薦めする。

アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 最新アプローチ 多発性硬化症と視神経脊髄炎

アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 最新アプローチ 多発性硬化症と視神経脊髄炎 published on

微に入り細に入り読者に理解してもらおうとする努力,編集に感服させられる

BRAIN and NERVE Vol.65 No.3(2013年3月号) 書評より

評者:田代邦雄(北海道大学名誉教授/北祐会神経内科病院顧問)

多発性硬化症(multiple sclerosis : MS)は1868年のCharcotによる臨床症候の記載に遡るほど歴史的であるばかりでなく,現在に至るまで神経学領域では最も重要な疾患の一つとされている。その神経症候,病態の理解,そして診断と治療への道筋はもとより,特に近年のこの疾患概念に関する注目度・関心は非常に高く,神経内科を中心に,その関連する基礎ならびに臨床の各専門領域において日進月歩の進展が見られるのである。
このたび,『最新アプローチ 多発性硬化症と視神経脊髄炎』と題する最先端の書が出版されたことの意義は大であり,これらの疾患の重要性かつ論点を提言したことになる。すなわち本書では,この両疾患を並列に取り上げ,それらの病態と診断,治療とケアも含め,各項目に最適なエキスパートを配置して論旨を展開している。
その構成は各項目のトップに「Point」として先ずエッセンスを呈示,さらに豊富でカラフルな図表,必要に応じて重要な事項をColumnとして薄紫のバックを用いて本文の一部にとりあげ,また欄外にはKeywordsの簡潔・明快な解説,さらにMemoとして疑問やその説明を追加するなど,微に入り細に入り読者に理解してもらおうとする努力,編集にも感服させられるのである。
日本における多発性硬化症の臨床像・疾患概念の変遷,診断基準の問題,臨床疫学,神経病理,補助診断法,鑑別診断,病因病態の理解,また治療とケアの諸問題は多岐にわたるが各分担執筆者が見事にまとめているとともに,本書のタイトルにも取り上げられている疾患としての「多発性硬化症」と「視神経脊髄炎」との相互関係はいかなるものであるか! という現在神経学領域で最もホットな話題について,まさに論壇で熱くなるような活発な論議が展開されている。
多発性硬化症そして視神経脊髄炎についてのディベートは,これらの疾患を専門にする神経学関係者は(筆者個人も含めて)各々の見解・結論を既に持っているであろうが,本書の役割は,冒頭にも述べたごとく,この重要課題である多発性硬化症/視神経脊髄炎について日本の神経学が“フランク”そして“オープン”に意見交換することが重要かつ必須であり,本書がそのための試金石になってくれることを信ずるとともに,今回,このテーマをとりあげまとめられた編集担当者,各執筆者の努力に対し心からの敬意を表し,書評のまとめとさせていただくこととする。

アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 てんかんテキスト New Version

アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 てんかんテキスト New Version published on

てんかんも分子生物学の言葉で説明される時代が到来したと実感

BRAIN and NERVE Vol.64 No.10(2012年10月号) 書評より

評者:葛原茂樹(鈴鹿医療科学大学教授)

てんかんは,わが国において患者数が約100万人と推定されている頻度の高い疾患であるにもかかわらず,医学分野では比較的地味な存在であった。ところが,近年,自動車運転中のてんかん発作による交通事故発生を契機に,にわかに大きな社会的関心を集めるようになった。事故の大部分は怠薬による発作であり,きちんと服薬すれば発作の大部分はコントロール可能という成績が示されているので,最新最適のてんかん診療を学び実践することは,患者と社会に対する医師の社会的責任でもある。このような要請に正面から応えることができる指南書として,このたび中山書店から『てんかんテキスト New Version』が刊行された。
本書読了後の第一印象は,てんかんも分子生物学の言葉で説明される時代が到来した,という実感である。従来のてんかん学は,臨床病型に基づく分類と脳波検査を軸とした現象論的記述が主であったのに対して,本書ではニューロンの異常興奮病態と治療薬の作用機序の分子生物学的基盤が詳述されている。総論で,古典的てんかん概念の紹介に続いて,一挙にイオンチャンネルと受容体の分子病態学と分子遺伝学が展開し,焦点性てんかん病巣の病理学の記述が,カラーの顕微鏡写真付きで現れるのも新鮮である。
臨床診断では,高齢期発症てんかんの増加と非痙攣性発作が多いという指摘が注目される。検査は,古典的脳波所見に加えて,外科的治療を念頭に,てんかん原性域(epileptogenic zone)同定に必要な諸検査(硬膜下電極,脳磁図,PETとSPECT,最新のMRI,近赤外線スペクトロスコピィなど)の検査目的・所見・長所・限界が解説され,臨床的初発症状域,脳波上の発作起始域,形態画像の構造異常病変との関係の解説も明快である。治療についてはガイドラインをベースに,古典的薬物と新規薬の作用機序から臨床適用までが解説され,社会生活で問題になる妊娠や運転,生活支援についても具体的に紹介されている。
各項は10頁以内にまとめられ,明快なカラーの図表がふんだんに配置されているので,テンポよく読み進むことができる。ベテランにも初心者にも,是非一読を勧めたい1冊である。

アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 識る 診る 治す 頭痛のすべて

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最も求めていた内容が余すことなく網羅されている

BRAIN and NERVE Vol.64 No.3(2012年3月号) 書評より

評者:岩田誠(東京女子医科大学名誉教授)

日常診療の中で,頭痛は誰にでも生ずる最もありふれた自覚症状の1つであるから,どのような診療科の医師であっても,自分が診ている患者が頭痛を訴える機会に出会うことがあるはずである。そのようなときに,自分は頭痛のことはよくわからないからといって,ろくに話を聞くこともせず頭痛専門医に紹介するというのも悪いことではないが,患者側からみれば,頭痛ごときでわざわざ専門医を受診するなんて,と受け取る人は少なくないだろう。一方では,頭痛を訴えて受診すると,すぐに頭のCTスキャンやMRI,MRAを撮り,何も異常はありませんといわれ,適切な解決策をみつけてくれる医者にめぐり合うまで,痛む頭を抱えて次々と医者廻りをする患者も少なくない。日常診療の場で今もなお繰り返されているこのような浪費的医療の根源にあるのは,一般の医師たちの,頭痛診療の重要性に対する認識不足と,頭痛診療に対する勉強不足であるが,そのような事態をきたしたそもそもの原因は,頭痛のメカニズムに対する科学的な教育と,頭痛の診断と治療に関する実践教育が不十分であったことである。

評者は,今から30年以上前,母校の学生に神経内科学の講義を行うことになったとき,それまで1度もなされたことがなかった頭痛の系統講義を始めた。当時は,頭痛の科学的メカニズムはほとんどわかっておらず,病態を十分に説明できないことに,自分ながらもどかしさを感じていた。ここに紹介する『識る 診る 治す 頭痛のすべて』には,その当時の私が,最も求めていた内容が,余すことなく網羅されている。もし,30年前にこのような書物が存在していたなら,評者は躊躇することなく,ここに書かれていることのすべてを,学生たちに伝えようと試みたであろう。そのような教育を受けた学生たちは,卒業後どのような診療科の医師になったとしても,自分の患者が語る頭痛の訴えに耳を貸し,自らの適切な意見を述べたうえで,頭痛診療の専門医に紹介するだろうし,無駄な画像検査の回数は激減するであろう。頭痛診療の専門家だけではなく,あらゆる分野の臨床に携わっている,あるいはこれから携わろうとする,すべての医師・医学生に読んでいただきたい本である。

アクセプトされる英語医学論文作成術

アクセプトされる英語医学論文作成術 published on

最新論文を実例にスマートな論文を

メディカル朝日 2015年2月号 BOOKS PICKUPより

最近話題のコピペはもちろんご法度。専門分野の先行文献を読解して規則に従った引用、言い換えをしたうえで、自らの主張をreviewersに速やかに認めてもらうためのテクニックを実践的にまとめた。論文作成のイロハから、タイトル、アブストラクト、緒言、図表の説明、方法、結果、考察、よく使われる表現、略語、単位など、投稿の注意点まで、初心者にも役立つ構成。

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号24-0347)
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