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経口免疫療法Q&A

経口免疫療法Q&A published on

乳児健診や一般診療の場で,小児の診察に携わるすべての方にお勧めしたい

小児科診療 Vol.76 No.1(2013年1月号) 書評より

評者:西本 創(さいたま市民医療センター小児科)

これまで即時型のアレルギー反応をきたす食物抗原に対しては,自然寛解が多いため,除去食を基本とし,自然寛解を待つのが一般的な対応であった.そんな中,2007年に神奈川県立こども医療センターから急速特異的経口耐性誘導療法が報告されたのは衝撃的だった.対症療法が主だった食物アレルギーに対し,根治的治療法の可能性が示唆されたのである.本書はその経口免疫療法をQ&A形式でわかりやすく紹介している.
第1章は食物アレルギーのトピックスについて紹介されており,Q1は「妊娠中の食物除去は有効ですか?」と日常診療で聞かれることが多い質問からはじまる.ここ数年で食物アレルギーに関する新しい知見が数多く発表され,食物除去に対するガイドラインは激変している.アレルギー診療を専門としない医師がすべてを網羅するのはなかなか困難であるが,本書では学会で話題となったテーマを紹介している.Lackらが2008年に報告したdual-allergen-exposure hypothesis (二重抗原曝露仮説)のイラストはこのところの学会で紹介されないことがないくらいだが,ピンとこない方は最近の経皮感作・経口免疫寛容の総論としてぜひ一読いただきたい.
第2章は「経口免疫療法の実際」と題し,実際に行われている方法について詳細に紹介されている.第3章は「経口免疫療法の理論」である.個人的に一番興味をそそられたのは第4章「症例-こんなに違う対応法」であった.当院でも緩徐・急速法とも施行しているが,ひとりひとりの違いに驚かされ,また学ぶことが多い.著者らの発表を聞いた際に,症例を丹念に観察しているという印象をもったが,その通りであった.15例の症例報告には治療で行き詰ったときのヒントが散りばめられている.
NHKスペシャルで特集が放送されて以来,患者家族より質問されることが多くなった.しかし,得られる情報も少なく,返答に窮することもあるだろう.経口免疫療法に興味がある方だけでなく,乳児健診や一般診療の場で,小児の診察に携わるすべての方にお勧めしたい.
最後に確認となるが,小児アレルギー学会食物アレルギー委貝会の見解は「経口免疫療法は専門医が体制の整った環境で研究的に行う段階の治療であり,一般診療として推奨しない」と位置づけていることを忘れてはならない.

クリティカルケア看護技術の実践と根拠

クリティカルケア看護技術の実践と根拠 published on
ベストナース 2012年2月号 Book Reviewより

医療の高度化に伴い進歩を遂げてきたクリティカルケア領域。どのようなケアを選択し実践すべきか臨床で迷う場面が多いなか、現場で活躍する看護師が身に付けたい正しいケアの手技とその根拠について、多彩な図表を用いて解説しています。基礎知識を「総論」にまとめ、「看護技術の実践と根拠」では各ケアの疑問にQ&A形式で要点をおさえながら答えています。

キャリアアップをめざす!!ナースのための資格受験ガイド77

キャリアアップをめざす!!ナースのための資格受験ガイド77 published on
ベストナース、2010年3月号 Book Reviewより

専門性を高めキャリアアップを目指したいナース必読の資格ガイドブック。保健師・助産師から専門看護師・認定看護師、学会等認定資格の日本糖尿病療養指導士、フットケア指導士、不妊カウンセラーなど、看護業務に関連する主な77資格の情報を収めています。1資格1頁ごとに概要と取得方法がコンパクトに紹介されており、各資格を比較しながら情報収集できます。

がんペプチドワクチン療法

がんペプチドワクチン療法 published on

もっとも信頼のおける筆者によってまとめられたがん医療に携わる方必読の書

がん看護 15巻3号(2010 Mar/Apr) BOOKより

評者:武藤徹一郎(癌研有明病院名誉院長)

がんはわが国の国民病である.2人に1人はがんになり,3人に1人はがんで死ぬのが現実の世界である.逆に言えば,日本人はがんで死ぬほど長生きするようになったということであろう.発展途上国では感染症,飢え,栄養障害が問題であり,がんに罹るまで長生きできないことが多いことに思いを至さねばならない.

かつてがんの治療といえば手術と決まっていた.手術で取れるか取れないかに,患者さんおよびその家族は一喜一憂したものだ.最近ではそれに抗がん剤による化学療法と放射線治療が加わった.古典的な化学療法に分子生物学の進歩の産物として生まれた分子標的薬が加わり,化学療法の守備範囲は著しく拡大した.一方,放射線治療の技術的進歩も著しく,一部のがん腫では化学療法との併用による放射線化学療法においては,手術療法と同等の治療効果を得ることが可能になってきた.しかし,いずれの治療法も正常組織への影響は避け難く,そのために発生する合併症の問題が残されている.

そこに第4の治療法として免疫療法が登場してきた.免疫学の著しい進歩により,免疫療法は基礎研究の段階から臨床の場へと移行することになった.ペプチドワクチンはその中で最も研究が進んでおり,将来が期待されている治療法である.抗がん剤や放射線照射という,がん以外の細胞に影響を与える治療法とは異なり,ペプチドワクチン療法は自己の免疫力を利用するという点で副作用が最も少ないという利点がある.本書を編集した中村祐輔教授は外科医から基礎研究者となり,その知識を携えて臨床の場での応用を目指そうとしている.この道ではもっとも信頼のおける学者である.本書はペプチドワクチン療法の基礎から臓器別の診療までを誠に要領よくわかりやすくまとめており,がん医療に携わる者の必読の書としてお薦めしたい.


やさしく分かる新治療法の機序と効果

メディカル朝日 2010年5月号 p.73 BOOKS PICKUPより

がん治療で外科療法、化学療法、放射線療法に次ぐと目される免疫療法。なかでも細胞療法は、全身転移例への効果が期待されるという。本書は、がんの新生血管細胞を標的としたペプチドワクチン療法を平易に紹介した。臨床編ではこの療法の有効性の立証と普及に向けて、多様ながんの症例を示しながら、これまで確認された治療効果、今後の課題・展望をまとめた。

ベスト・プラクティス コレクション がん疼痛ケアガイド

ベスト・プラクティス コレクション がん疼痛ケアガイド published on

がんと痛みについて広く知っておきたい場合に,すぐに役立つ貴重な情報源

がん看護 Vol.17, No.3(2012年11-12月号) BOOKより

評者:山田雅子(聖路加看護大学看護実践開発研究センター)

がんと痛みについて全体を理解することのできる1冊の本について紹介する.
「がん」と「痛み」の2つのキーワードが並べられていると,ついつい終末期をイメージしてしまう看護師にはぜひ読んでほしい.この本は,がんの痛みは終末期特有のものではないという思想に基づいて,治療期にある患者に対しても痛みといった切り口でアセスメントする視点を広げるためのさまざまな材料を提供してくれる.
構成は,2つの切り口すなわち,身体部位別とがん腫別にみた痛みの特徴が前半に示されており,後半には,療養の場の選択も含めたセルフケアからの視点,そして痛みに対する治療とケアの視点が示されている.最後には精神的およびスピリチュアルペインのとらえ方が発達段階別に整理されている.
感心したのは,部位別の痛みに関する取り上げ方だ.たとえば「頭痛」では,がんに関連した頭痛はもちろんのこと,「がん以外による痛み」として脳出血などについても言及している.病名だけで判断できない患者の症状の見極めに際して,多くの引き出しを準備しておくことの必要性が示されている.
がん看護分野において専門的に役割を果たしている看護師にとっては,物足りなさはあるだろうが,がんと痛みについて広く知っておきたい場合には,すぐに役に立つ貴重な情報源となるだろう.
院内だけでなく,訪問看護など院外でのがん看護に精通した角田氏と濱本氏が編集した本だけに,「高齢者とがん」「がん患者のための生活とケア」についての視点が明確に示されていることも大きな特徴である.患者・家族の「痛み」を正しく評価してケアにつなげていくために,多様な臨床の場で活用してほしいと願う.


しつこい痛みへの対処がわかる がん疼痛ケアのバイブル

ナース専科 Vol.32 No.6(2012年12月号) ナースの本棚より

がんの痛みには、がんによるもの、治療によるもの、精神的要因によるものがあり、弱いものから非常に強いものまでさまざまです。本書は、この複雑ながんの痛みとケアを理解する上で欠かせない、家族支援からスピリチュアルケアまでも網羅したがん疼痛ケアのバイブルです。


「がん疼痛患者へのケア方法」を網羅した1冊

コミュニティケア Vol.14 No.9(2012年8月号) BOOKSより

“生活支援”の現場で遭遇するがんに関連した“痛み”を抱える患者へのケアのポイントが述べられている。身体部位別・病態別の疼痛アセスメント方法が事例とともに紹介され、すぐ実践で使える内容だ。また、身体の“痛み”だけでなく、それに伴う精神的な“痛み”(スピリチュアルペイン)を持つ患者とのかかわり方や家族に対する支援方法もまとめられ、「がん疼痛患者へのケア方法」を網羅した1冊となっている。

癌診療指針のための病理診断プラクティス 大腸癌

癌診療指針のための病理診断プラクティス 大腸癌 published on

写真が綺麗で説得力があり,図表も多く診断のポイントが随所に記されている

消化器外科 Vol.36 No.1(2013年1月号) 書評より

評者:平田一郎(藤田保健衛生大学医学部消化管内科教授)

従来より病理は基礎医学の範躊に組み込まれているが,人体病理は患者と直に対面しないものの診療を行ううえで重要な役割を有しており,臨床科として位置づけられるべきと考える。病理と臨床の間では,患者の病態に関する情報の共有と意見交換は常に綿密に行われるべきである。そうすることによって,適切な診断と治療が可能となり,また病気の本態に迫ることもできるといえよう。良き病理医は良き臨床医を育てるが,逆もまた真なりである。本書は正にそのことを具現化した名著であり,専門編集者である八尾隆史教授の見識と情熱がひしひしと伝わってくる。本書は,大腸癌の診断・治療に関する新しい知識やトピックスが余すことなく盛り込まれているのみならず,従来の病理学書と異なり,大腸癌に対する診断・治療の考え方,進め方が臨場感あふれ伝わってくるような内容構成である。
本書の第1章では,大腸上皮性腫瘍を病理診断するにあたり治療方針決定に重要とされる因子を正しく評価すべきことが強調され,そこには常に臨床のニーズを理解しそれに真摯に厳しく向き合う編集者の姿勢が伺われる。
第2章では,大腸腫瘍における基本的なHE診断に加え,免疫組織化学やゲノム解析などにおける新しい知見が解説されている。近年,大腸腫瘍に対する分子生物学的解析が,大腸癌の分子標的治療のみならず,その発育進展の解明,サーベイランス診断,予防的介入治療などに応用されつつあり,将来を見据えての内容となっている。また,ピットパターンやNBIなど内視鏡の拡大観察による大腸腫瘍診断と内視鏡的治療,大腸癌の病期分類による治療選択基準,外科・化学療法・放射線治療などに関しても第一人者の臨床医が新しい知見をまじえて詳細に解説している。これら知識は,病理医が臨床医とコミュニケーションを取るうえで有用である。
第3章では,大腸SM癌の治療方針決定に重要な病理項目の評価法,鋸歯状病変,神経内分泌腫瘍などに関する内容が最新の知見とともに論じられている。
第4章では病理検体の取り扱いが述べられているが,これらは病理医のみならず臨床医もぜひ知っておくべきである。切除標本の切り出しは,可能な限り病理医と臨床医がdiscussionをしながら一緒に行うべきである。
本書は写真が綺麗で説得力があり,図表も多く診断のポイントが随所に記されているので読者に理解されやすいものとなっている。本書を熟読すれば,大腸上皮性腫瘍に関するほぼすべての事項が最新の知見と共に習得でき,病理医のみならず臨床医も必読の書と言えよう。

癌診療指針のための病理診断プラクティス 食道癌・胃癌

癌診療指針のための病理診断プラクティス 食道癌・胃癌 published on

画像診断,免疫組織化学などが普及した今日,時宜を得た書

胃と腸 Vol.47 No.9(2012年8月号) 書評より

評者:恒吉正澄(福岡山王病院病理診断科病理部長・検査部長)

本シリーズの総編集を担当する青笹克之先生はユニークな感覚をもって人体病理学に取り組んでいる病理学者である.青笹先生の提唱されたPAL(pyothorax-associated lymphoma 膿胸に随伴する悪性リンパ腫)は慢性の肺疾患である肺結核に伴う悪性リンパ腫で,1例を丹念に解析された後に,長年の忍耐強い疫学調査を基盤に解明されたものである.1例1例の診断の重要さを物語っている.
この「病理診断プラクティス」の各シリーズは臓器別に取り扱われ,写真,シェーマ,図・表を駆使した実践的なアトラスの面と,各疾患を系統的に解説する教科書的な面を併せ持つ力作である.写真は大半が光学顕微鏡のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色の組織像であるが,X線写真,内視鏡写真,肉眼写真なども積極的に取り入れ,また随所に免疫組織化学写真も加えられている.
医学・医療の高度化に伴い専門化が進み,各領域の専門性が要請されるが,大局的に物事の全体を把握することも必要である.病理組織診断は治療方針の決定に大きく関与する.本書は病理診断医が腫瘍の診断の現場で最も知識・情報が必要とされるテーマについて,その道のエキスパートが診断の真髄を披露し,明日からすぐに診断の役に立つシリーズを目指して企画されたものである.

病変を臓器別に配列
本シリーズは臓器別にまとめてあり,診断に到達するまでに必要な経緯として,「病理診断の流れ」,「診断のための基礎知識」,臨床医も加わり,写真とシェーマを豊富に用いた「診断のポイント」,「鑑別診断のフローチャート」が簡明に記載され,「臨床所見」,「病理所見」,「悪性度,予後」,「鑑別診断」などの項目に沿って,読みやすく整理されており,判りやすい.また,重要な項目は特に詳細に記述され,読者への配慮が感ぜられる.

類似疾患について理路整然と鑑別
本書では癌の診断に到達するのに臨床像,X線像,組織像,免疫組織化学所見を総合した判断が大切なことが強調されている.その一つとして,鑑別診断の項目に力点が置かれ,類似疾患について図表を駆使して理路整然と鑑別されている.この点は本書の一つの特徴であり,実践的参考書としての意義が大きいと思われる.

臨床医,若手病理医にも有用
本書は病理診断に携わる病理専門医のみならず,若手病理医さらに臨床医にも有用な参考書になると考えられる.実例を肉眼と組織のカラー写真にまとめて掲載し,また最後の章では実際の症例呈示により読者の興味が一層喚起される工夫がなされている.本書はやや厚めの書ではあるが,うまく利用すればpractical guideとして有用であり,また画像診断,免疫組織化学などが普及した今日,まことに時宜を得た書であると思う.

私事にわたって恐縮であるが,1985年,米国ニューヨーク市の留学先で骨腫瘍の世界的権威者Dorfman教授の言葉が印象深い.「大きなシリーズの例をまとめた論文も大切だが,未だ十分認識されていない数例を克明に解析した論文は貴重な価値がある.」診断病理医を志向している私は改めて一例一例の病理診断の重要さを諭され,その後,一年間近く,世界各地から送られてくるコンサルテーション例をディスカッション顕微鏡で同教授の指導の下,全例検鏡できた.

現在,一線病院の病理診断科の一人常勤病理医として臨床医と連携してチーム医療に携わっている中で,一例一例の病理診断の大切さを身を持って感じている.

DSM-5を読み解く 双極性障害および関連障害群,抑うつ障害群,睡眠-覚醒障害群

DSM-5を読み解く 双極性障害および関連障害群,抑うつ障害群,睡眠-覚醒障害群 published on

sourcebookに代わるものとして十分その役目を果たしている

臨床精神医学 Vol.44 No.8(2015年8月号) 書評より

書評者:上島国利(国際医療福祉大学)

本書は「DSM-5を読み解く」シリーズの第3巻であり,I双極性障害および関連障害群,II抑うつ障害群,III睡眠一覚醒障害群の3部により構成されている。
本書の目的は,さまざまな批判をあびながら世界の精神医学界を席巻しているDSM診断体系の成り立ちを伝統的な精神医学の歴史を俯瞰しつつ解説し,それらがDSM-5の成立や今後のよりよい応用に寄与することである。 DSM-IVについては,「The DSM IV Sourcebook」に,改訂作業でどのような論文が参照され,いかなる議論がなされたか記載されているが,DSM-5については,そのような書籍は今のところ発刊されていない。この状況下にあっては,本書は,sourcebookに代わるものとして十分その役目を果たしていると思われる。
まず注目されるのは,従来DSM-III以降われわれが慣れ親しんだ感情障害,気分障害の呼称がなくなり,それらに包括されていた単極性うつ病,双極性障害が分離されて別個に章立てされたという点である。クレペリンにより体系化された躁うつ病が,レオンハルトにより単極性障害と双極性障害に分離されたが,これらはあくまで気分障害の枠内の分離であった。ところがDSM-5では,「双極性障害および関連障害群」は,「統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群」と「抑うつ障害群」の章との間に位置づけられて2つの群の間の橋渡しをする位置にあるとされた。症候論,家族歴,遺伝的観点などが考慮された結果であろうが,DSM-IIへの回帰との指摘もあり,今後この章立ての妥当性についての議論がなされるものと思われる。

I双極性障害および関連障害群
双極性障害概念の拡大に伴う過小診断から過剰診断が危惧されたのが,ここ数年の傾向であったが,DSM-5では,小児期に重篤な気分調整障害を呈する障害が「重篤気分調節症」として抑うつ障害群に加えられた。また双極性エピソードの罹病回数の短縮もなされなかったことは過剰診断抑制策の1つとして考えられる。
また臨床では診断基準どおりの症例は極めて稀であった混合性エピソードは廃止され,「混合性の特徴を件う」という特定用語を用いることになっている。特定用語の活用は病状のより精緻な特徴を明らかにするためにDSM-5の随所で用いられるべきと思われる。

II抑うつ障害群
新たに加わった障害は,重篤気分調節症,持続性抑うつ障害(気分変調症),月経前不快気分障害でありそれぞれ歴史と導入の理由が記載されている。
DSM-IVの抑うつエピソードの診断基準から死別反応除外基準が削除され,死別後でも2週間の持続で診断可能となった。この除外基準の削除に関しては多くの批判があり,今後も論争が続くことも予想される。

III睡眠―覚醒障害群
ナルコレプシーの診断基準で髄液中オレキシン値,終夜睡眠ポリグラフ検査所見,MSLTの客観的検査データが基準の1つとなっているが,他の障害に先がけて生物学的マーカーが採用されたことは画期的なことであり,他の障害も次第に生物学的基準が明らかになっていくことと思われる。

以上DSM-5を読み解くという観点からの論点のいくつかについて紹介した。
DSM-IVまでのDSM体系分類は症状の羅列やその組み合わせから一定数以上の項目を満たす症候群を分離した操作的診断基準であり,病態に迫る生物学的知見がほとんど含まれていないという批判を受け続けてきた。そのような課題を克服するべくDSM-5は集積された臨床論文に基づいて,症候論から病因・病態論を取り入れようとする試みは常になされているが,現在の精神障害の生物学的研究はその域には達しておらず,一部を除いては成功していない。
将来的には,進歩の著しい脳機能画像,脳生理学,認知機能,遺伝要因などの生物学的知見が,症候学的知見と合わせることにより,より洗練されたDSMになりうるものと思われる。
総編集の神庭亜信教授の意図した「伝統的な精神医学が精神疾患をどのように概念化してきたか,DSMやICDの診断体系にどのような影響を与えたのか,DSM-5では何が変わり,何が変わらなかったのか,それはどうしてなのか」等々の課題に関して各筆者が現時点での到達点を記述しており比較的短い期間に読み込み,考察した結果に敬意を表したい。わが国の臨床でのDSM-5の使用経験の積み重ねが更なる発展に結びつくことを期待したい。
なおその使用に関しては,DSMの持つ功罪を吟味し,可能性やその限界については常に念頭に置く謙虚で慎重な態度が望まれる。
DSM-5の活用者が十分な精神病理学を身につけ,患者の呈する症状を懇切丁寧に分析し,適切な診断治療に結びつける素養を涵養することが何より重要といえよう。

ベスト・プラクティス コレクション がん化学療法ケアガイド 改訂版

ベスト・プラクティス コレクション がん化学療法ケアガイド 改訂版 published on

がん化学療法に携わる看護師必読の書

ベストナース 2012年5月号「看護の日・看護週間特集 PART2 特番!ブックレビュー」より

「がん化学療法ケアガイド 改訂版」は、化学療法看護に必要な知識やケアをまとめて好評を博した初版から5年、最新の薬剤やレジメン、それを受けた標準治療の情報を盛り込んだ改訂版。副作用対策やセルフケア支援の内容もバージョンアップし、曝露・副作用対策、外来看護に資する新たな項目を収めています。がん化学療法に携わる看護師必読の書です。

がん化学療法看護ポケットナビ

がん化学療法看護ポケットナビ published on

患者の内なる力をよび起こし,セルフケア能力を賦活させ,患者と一緒に療養生活をマネジメントしようとする姿勢が基本にある

がん看護 Vol.17, No.3(2012年3-4月増大号) BOOKより

評者:内布敦子(兵庫県立大学看護学部)

がん化学療法に携わる看護師の数は,近年飛躍的に増えている.がん化学療法看護認定看護師は844人(2011年12月現在)におよび,がん看護専門看護師のなかにも本書の編集者である本山清美氏,遠藤久美氏のように化学療法をサブスペシャリティにする人が増えている.忙しい外来で流れ作業のようになってしまいがちな患者への対応を,質の高い看護ケアにするためには,充実した知識,徹底した患者中心の考え方が重要である.

本書は形状といい題名といい,いわゆる簡便なマニュアル本のような印象を受けるが,内容は決してそのような単純なものではない.患者の内なる力をよび起こし,セルフケア能力を賦活させ,患者と一緒に療養生活をマネジメントしようとする姿勢が基本にある.これは本書第3章に書かれており,じっくり腰を据え読み込むべき内容である.

有害事象の管理は,看護師がもっとも責任をもって取り組むべき課題である.有害事象は患者のQOLを著しく低下させ,治療完遂率を左右する.看護師のもつ正確な知識,モニタリングの能力,適切な対応能力によって患者の生活は大きく変わる.看護師が患者の力を引き出しながら,上手にマネジメントするために最低限必要な知識が本書には詰まっている.とくに,ありがたいのは分子標的治療薬や経口抗がん薬の治療に伴う看護の知識が充実している点である.ほとんどの治療が外来で行われ,医療者の目は届かなくなるため,患者のもつセルフケア能力をいかに活用するかは治療成功の秘訣となるであろう.

各疾患の説明はポイントをおさえながら簡潔に書かれ,治療レジメンなどの最新情報が盛り込まれている.エビデンスが確認され,新しく導入される治療法が加われば常に情報を新たにする必要があるので,編集者泣かせの本であることは間違いないが,引き続き更新作業を入念に行い,価値ある本であり続けていただきたい.


複雑化する治療や副作用を簡潔に解説

Expert Nurse Vol.28, No.2(February 2012) BOOKレビューより

看護の流れをアルゴリズムで導くシリーズの最新刊。進歩を続け、複雑化しているがん化学療法。本書では看護師が得ておきたい最新知識をコンパクトにわかりやすくまとめている。家族支援のポイントや他職種の役割など,相談や連携をとるときに役立つ内容も含まれている。