Skip to content

15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 運動療法学

15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 運動療法学 published on

実に飽きさせないつくりになっている

理学療法ジャーナル Vol.49 No.2(2015年2月号) 書評より

書評者:高橋仁美(市立秋田総合病院リハビリテーション科)

好評教科書である中山書店の「15レクチャーシリーズ」から「運動療法学」が発刊された.運動療法は,疾病に侵されたものや障害を受けたものに対して,運動という手段を科学的に適用させる治療法であり,理学療法の中核として位置づけられる.理学療法士にとってはまさに治療の要となるわけだが,そのような意味からも本シリーズ待望の書と言える.
本書の最大の特徴は,運動療法を行ううえで必要な知識と技術を15回の講義で基礎から臨床まで深く理解できるようにまとめられている点である.学生はもちろんだが,教員にとっても非常に有用な教科書である.内容をみると,運動療法の基礎・リスク管理,そしてコンディショニング(全身調整)のための手段を最初に取り上げてから,関節可動域制限,筋機能障害,協調運動障害(運動失調とバランス機能障害)のそれぞれに対する運動療法,さらに基本動作能力・歩行能力再獲得と全身持久力改善のための運動療法が解説されており,背景となる基本的な理論と実際の介入方法をわかりやすく学ぶことできる.
意外であったのは,各論部分にあたるいわゆる疾患別の項である.感覚機能障害,がん,腎機能障害,熱傷,産科領域,高齢者,健康増進分野を対象としており,診療報酬体系の疾患別リハビリテーション料にある心大血管疾患,脳血管疾患等,運動器疾患,呼吸器疾患といった代表疾患については触れられていないことであった.しかし,この疑問は15レクチャーシリーズの他のテキストを参照することで理解できた.これらの代表疾患を含め理学療法の対象となる疾患の運動療法については,このシリーズの別のテキストで十分に記されているのである.15レクチャーシリーズは,限られた時間のなかで理学療法を効率的に教育できるよう工夫され,非常によくバランスがとれており,総編集の石川先生や責任編集の解良先生,そして玉木先生によるこのような着想力は流石であると感じた.
学生になった気分であらためて本書をじっくり拝読すると,実に飽きさせないつくりになっていると感じた.「図・写真・表」のほか,「MEMO」,「ここがポイント」,「覚えよう」,「気をつけよう」,「調べてみよう」などを欄外に入れることで,理解度を深めながら集中力が持続するように配慮されている.また,最初に到達目標,講義を理解するために必要なこと,講義後に確認することが明記されており,学生にとってはレクチャーごとに何を学ぶべきかが明確になっている.さらに,少し雑学的な要素も入った「Step up」や国家試験の備えにもなる「TEST試験」もうれしい.
本書によって,理学療法学の中心である運動療法学の講義を効率的に進めることができるものと確信する.このテキストは,学生の心をつかむことができる良書である.

15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 運動器障害理学療法学 II

15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 運動器障害理学療法学 II published on

教育の本質をよく理解した執筆・編集陣によって完成度の高い内容にまとまっている

理学療法ジャーナル Vol.46 No.3(2012年3月号) 書評より

評者:内山靖(名古屋大学医学部保健学科)

わが国の理学療法士免許登録者は9万人を超え,理学療法士養成課程の一学年総定員数は18歳人口のおよそ1%を占めるに至っている.理学療法士の増加に伴い医学書に占める理学療法関連の書籍はここ10年で急増し,最近ではさまざまな特色を打ち出したシリーズ書も続々と発刊されている.

このような時流において,伝統ある医学書籍の出版社である中山書店から「15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト」が発刊されたことは誠に喜ばしい.本シリーズは,タイトルからも明らかなように,15コマで構成される講義形式に則った学生を読者対象に特化したものである.そのコンセプトに基づき,冒頭にはシラバスとともに流れがつかみやすい丁寧な目次が掲載され,本文には豊富な図表が取り入れられている.

今回紹介する運動器障害理学療法学は,IとIIの2冊に分けて30章で構成されている.特筆すべきは,講義と実技を連続した章として扱い,学生は病態を予め学んだうえで科学的背景に基づいた理学療法の評価と治療を一連の過程で学べるように工夫されている点である.実技の章では,実際の対象者や忠実なモデルによる写真が満載で,効率的かつ効果的な学習が展開されるように配慮されている.しかも,総分量を抑えた短文で表記されていながら,内容は基本に忠実で精選されている.ともすると,このくらいは分かっていてほしいという教員の願望から,内容が多岐にわたりかえって学習到達度を下げてしまうことがあるが,本書は教育の本質をよく理解した執筆・編集陣によって完成度の高い内容にまとまっている.まさに,学生主体のテキストであり,若手の教員への力強い教本ともいえるだろう.また,執筆は責任編集者と意思疎通がとれ認識を共有できる関係にある数人に限定されているため,全体の整合性が高く,細部にわたる統一感は学習者にとって理解を促す要素となる.

評者の役割としてあえて課題を提示するとしたら,運動器や運動器障害理学療法の枠組みや特徴について,明確に解説する総論部が見当たらないことである.15章の後にある試験のcomment欄で,運動器疾患について学んだ内容はすべての対象者に接するうえで生かすことができること,運動器疾患の理学療法は比較的理解しやすくほかの基本となる内容が数多く含まれていることが記載されているので,その具体的な内容を冒頭で記してあれば学生の学習意欲と理解が一層高まるものだろう.また,全項目を理学療法士のみで執筆することが最善かどうかは意見が分かれるところである.

いずれにしても本書は,これまでわが国で出版された学生を対象としたテキストのよい部分を存分に取り入れ,後発ゆえの利点を最大限に生かした所作である.教科書としてだけでなく,専門学校の学生はもとより大学生の自己学習書として,また,臨床学習でも大いに活用できる書籍として自信をもってお奨めしたい.

15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 運動器障害理学療法学 I

15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 運動器障害理学療法学 I published on

教育の本質をよく理解した執筆・編集陣によって完成度の高い内容にまとまっている

理学療法ジャーナル Vol.46 No.3(2012年3月号) 書評より

評者:内山靖(名古屋大学医学部保健学科)

わが国の理学療法士免許登録者は9万人を超え,理学療法士養成課程の一学年総定員数は18歳人口のおよそ1%を占めるに至っている.理学療法士の増加に伴い医学書に占める理学療法関連の書籍はここ10年で急増し,最近ではさまざまな特色を打ち出したシリーズ書も続々と発刊されている.

このような時流において,伝統ある医学書籍の出版社である中山書店から「15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト」が発刊されたことは誠に喜ばしい.本シリーズは,タイトルからも明らかなように,15コマで構成される講義形式に則った学生を読者対象に特化したものである.そのコンセプトに基づき,冒頭にはシラバスとともに流れがつかみやすい丁寧な目次が掲載され,本文には豊富な図表が取り入れられている.

今回紹介する運動器障害理学療法学は,IとIIの2冊に分けて30章で構成されている.特筆すべきは,講義と実技を連続した章として扱い,学生は病態を予め学んだうえで科学的背景に基づいた理学療法の評価と治療を一連の過程で学べるように工夫されている点である.実技の章では,実際の対象者や忠実なモデルによる写真が満載で,効率的かつ効果的な学習が展開されるように配慮されている.しかも,総分量を抑えた短文で表記されていながら,内容は基本に忠実で精選されている.ともすると,このくらいは分かっていてほしいという教員の願望から,内容が多岐にわたりかえって学習到達度を下げてしまうことがあるが,本書は教育の本質をよく理解した執筆・編集陣によって完成度の高い内容にまとまっている.まさに,学生主体のテキストであり,若手の教員への力強い教本ともいえるだろう.また,執筆は責任編集者と意思疎通がとれ認識を共有できる関係にある数人に限定されているため,全体の整合性が高く,細部にわたる統一感は学習者にとって理解を促す要素となる.

評者の役割としてあえて課題を提示するとしたら,運動器や運動器障害理学療法の枠組みや特徴について,明確に解説する総論部が見当たらないことである.15章の後にある試験のcomment欄で,運動器疾患について学んだ内容はすべての対象者に接するうえで生かすことができること,運動器疾患の理学療法は比較的理解しやすくほかの基本となる内容が数多く含まれていることが記載されているので,その具体的な内容を冒頭で記してあれば学生の学習意欲と理解が一層高まるものだろう.また,全項目を理学療法士のみで執筆することが最善かどうかは意見が分かれるところである.

いずれにしても本書は,これまでわが国で出版された学生を対象としたテキストのよい部分を存分に取り入れ,後発ゆえの利点を最大限に生かした所作である.教科書としてだけでなく,専門学校の学生はもとより大学生の自己学習書として,また,臨床学習でも大いに活用できる書籍として自信をもってお奨めしたい.