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15レクチャーシリーズ リハビリテーションテキスト  リハビリテーション統計学

15レクチャーシリーズ リハビリテーションテキスト  リハビリテーション統計学 published on

複雑な統計手法を,数字を使わずに驚くほど簡単に,そして鮮やかに説明

理学療法 Vol.32 No.4(2015年4月号) 本の紹介より

書評者:大渕修一(東京都健康長寿医療センター研究所)

統計を自在に操ることは専門職にとって大変なあこがれです.しかし,そこに立ちはだかるのが数学の壁です.半ば,諦めがちな人も多いと思います.この本があれば諦める必要はありません.
数学が苦手な人が理解できるように,数字をできるだけ使わずに書かれているところが本書の特徴です.たとえば,標準偏差と標準誤差の違いは多くの初学者の落とし穴ですが,本書では,標準偏差は“データのばらつき”,標準誤差は“平均のばらつき”と一刀両断です.説明には全く数式が出てきません.しかし統計を使い分ける観点では,これさえわかれば十分です.もし一つ一つのデータのばらつきをみたいのであれば標準偏差を使えばいいのですし,グループ同士の比較をしたいのであれば標準誤差を使えばいいことがたちどころに理解できます.一事が万事,この本は複雑な統計手法を,数字を使わずに驚くほど簡単に,そして鮮やかに説明しています.
とはいえ変数の尺度の問題をはしょってしまってはとても皆さんにお勧めできません.たとえば,リンゴが好きを1として,普通を2,嫌いを3として,グループの平均をとっても何も意味をなさないことは理解できると思います.しかし,表計算ソフトを使ってコード化して集計をするとわかっていても平均をとったり,百分率で示したりする間違いを犯してしまいます.このような誤用を防ぐために尺度の問題についてはしっかりと理解しなければなりません.
それというのも変数がどのような尺度なのかは臨床家しかわかり得ないからなのです.たとえばブルンストロームステージがどのようなものかわからなければどんなに凄腕の統計学者であってもどんな統計手法を使ったらいいのか皆目見当がつきません.統計学者がポイントにしているのは,内科学の本に書いてあるブルンストロームステージの性質ではなくて,名前のようなものなのか,順番がついているようなものなのか,足し算して意味をなすようなものなのか,割り算して意味をなすようなものなのかなのです.この点を本書は臨床家の視点に立って十分な紙幅を割いて説明しています.
このように本書は臨床家が統計手法を使い分けるために必要な事柄が,過不足なく収められています.この本で統計学者になることはできませんが,よい統計の利用者になることはできるでしょう.

15レクチャーシリーズ 理学療法・作業療法テキスト 運動学

15レクチャーシリーズ 理学療法・作業療法テキスト 運動学 published on

教員にとっても学生にとっても大変使いやすいテキスト

理学療法 Vol.30 No.4(2013年4月号) 本の紹介より

評者:高柳清美(埼玉県立大学)

改めて述べるまでもなく,運動学は,生理学や解剖学と並び,理学療法・作業療法の根幹となる学問の一つであり,さらに言えば,これこそが理学療法・作業療法のアイデンティティとも言える重要な学問である.本邦では,中村隆一先生らが記された「基礎運動学」は古くから名著として教科書に重用されている.しかし,すべての内容を限られた15回の講義で網羅し,解りやすく教授することは困難である.

小島悟氏は運動学の学問領域すべてを15回で網羅するには難しいところを,「15レクチャーシリーズ 理学療法・作業療法テキスト運動学」において,とりわけ重要と思われる15のテーマに紋り,それぞれを1回の講義の内容として展開している.学生が効率良く学べるよう配慮して構成されているところは見事である.各章の冒頭には,到達目標に加えて事前学習,事後学習のための情報が記されており,学生の予習・復習を促しやすい.また,各ページの欄外に「MEMO」や「試してみよう」といった小見出しが付けられ,重ねて強調すべき重要な点や,単なる知識としてだけでなく自らの体験として学べるような実験・実技が紹介されており,学びにメリハリが付くように工夫されている.これらは,学生の主体的な学びの助けとなるだろう.
全体を見渡してみると,解剖学に基づいた身体構造に関する記載の割合が高く,多少偏っている感はあるが,大多教の理学療法・作業療法の学生がそうであるように.臨床に従事するにあたって必要とされる知識として構成されていると思われる.本書はあくまでも理学療法・作業療法教育に主眼が置かれ,理解しやすい構成の内容となっている.理学療法・作業療法の発展に寄与するような,将来,運動学領域での研究活動を志すものにとっては,別途,参考書が必要であろう.なお,実習に即した内容は,後日発刊される『運動学実習』『臨床運動学』で扱われると聞く.どちらにしても,本書を用いて講義を行う教員が,ここに記された範囲外にも大きく広がる運動学の学問領域について正しく理解し,適切に用いることができれば,教員にとっても学生にとっても大変使いやすいテキストであると思われる.

15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 物理療法学・実習

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理学療法士を目指す学生には授業要覧となり,教員には指導要領となる

理学療法 Vol.31 No.5(2014年5月号) 本の紹介

書評者:杉元雅晴(神戸学院大学総合リハビリテーション学部)

物理療法の治療目的は,「疼痛の管理」「創傷の管理」「神経・筋協調性運動の誘発」などに限定されています.とはいえ,必須専門科目である物理療法学を教えるには,多岐にわたる物理療法手段や物理学を根底にした生体作用メカニズムを理解しておく必要があります.また,理学療法が運動療法に偏重しているため,教育現場では物理療法学を教える教員が不足しています.すべての物理療法手段を教授する教員も少なく,物理療法手段別にオムニバス形式での授業も多くなっています.そのときには,重複と漏れがないように講義計画を構成しなければなりません.このテキストは,専門分野以外の物理療法手段を教える場合にも,漏れなく一定水準の知識を教授できるように構成されています.
一般的に,講義「物理療法学」は,2単位(1単位;15時間)で授業が組まれていることが多いようです.このテキストは教授内容を15回に配分していますので,講義計画を立てやすいと思います.冒頭にはシラバスとして,学習主題,学習目標(講義・実習),学習項目に分けて記載されており,教授計画を立てる時に重宝するでしょう.さらに,各レクチャーの冒頭に,「到達目標」「講義を理解するための復習事項」「講義を終えての確認事項」が設定されており,1つの講義内で確実に理解させる工夫がされています.ただ,項目ごとに簡潔に表現されていますので,教員による資料や物理療法分野の専門書で補充する必要があります.
最近では,文系の学生が理学療法を志望してきています.このテキストは,文系の学生にも物理療法に興味をもってもらい,理解してもらえるように,親しみやすい言葉で簡潔にまとめられています.さらに,各物理療法手段の巻末には,治療手段の理解を深められるように「物理療法学実習」が組み込まれています.学生に課題を考えさせ,実習を遂行するときには教員が必須事項を補う必要はありますが,物理療法機器の使用手順だけではなく,刺激条件を考えて実習課題をまとめる工程が含まれ,授業のヒントに活用できそうです.
このテキストは,物理療法学の講義の教育方針や各回の学習内容をまとめ,授業計画を立てる時のナビゲーターとなる書籍であります.理学療法士を目指す学生には授業要覧となり,教員には指導要領となるでしょう.

15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 神経障害理学療法学 II

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神経障害理学療法に力を入れたい,という編者および著者のメッセージが伝わってくるテキスト

理学療法 Vol.29 No.6(2012年6月号) 本の紹介より

評者:吉尾雅春(千里リハビリテーション病院 副院長・理学療法士)

大畑光司・玉木彰両氏責任編集による理学療法テキスト「神経障害理学療法学IおよびII」を拝読した.脳を中心とした中枢神経系の構造と機能および脳損傷による病態と回復のシステムを解説し,脳血管障害の評価と理学療法をはじめ,パーキンソン病,運動失調,頭部外傷,脳腫瘍,多発性硬化症,筋萎縮性側索硬化症の病態と理学療法のあり方について解説されている.
まず15回あるいは30回開講される講義をイメージしたシラバスを冒頭に配し,それぞれの単元で学習の主題や目標,項目を明らかにすることによって,難解な神経障害の領域に連続性を持たせて学習者の理解を助けている.それぞれのレクチャーにおいてもそれらを学ぶ意義や復習しておくべきことを示し,最後に試験を通して学習を導いている.
できるだけ根拠に基づいた解説を心がけたテキストであるという印象を受けた.特に脳卒中治療ガイドライン2009における判定を真摯に受け止めた内容になっている.また,世界的動向であるICFに基づく評価を模索しているのも特徴のひとつで,未完成ながらも今後の中枢神経障害領域の評価のあり方について方向性を示している.これらの取り組みは教科書としては当然のことであるが,理学療法の歴史がそれを許してくれない現実があった.いい意味で世代が交代してきている証しなのかもしれない.
それぞれの講義の内容・深度に温度差があるのが少々気になるが,理学療法士としての専門性をしっかり示すために,神経障害理学療法に力を入れたい,という編者および著者のメッセージが伝わってくるテキストである.

15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 神経障害理学療法学 I

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神経障害理学療法に力を入れたい,という編者および著者のメッセージが伝わってくるテキスト

理学療法 Vol.29 No.6(2012年6月号) 本の紹介より

評者:吉尾雅春(千里リハビリテーション病院 副院長・理学療法士)

大畑光司・玉木彰両氏責任編集による理学療法テキスト「神経障害理学療法学IおよびII」を拝読した.脳を中心とした中枢神経系の構造と機能および脳損傷による病態と回復のシステムを解説し,脳血管障害の評価と理学療法をはじめ,パーキンソン病,運動失調,頭部外傷,脳腫瘍,多発性硬化症,筋萎縮性側索硬化症の病態と理学療法のあり方について解説されている.
まず15回あるいは30回開講される講義をイメージしたシラバスを冒頭に配し,それぞれの単元で学習の主題や目標,項目を明らかにすることによって,難解な神経障害の領域に連続性を持たせて学習者の理解を助けている.それぞれのレクチャーにおいてもそれらを学ぶ意義や復習しておくべきことを示し,最後に試験を通して学習を導いている.
できるだけ根拠に基づいた解説を心がけたテキストであるという印象を受けた.特に脳卒中治療ガイドライン2009における判定を真摯に受け止めた内容になっている.また,世界的動向であるICFに基づく評価を模索しているのも特徴のひとつで,未完成ながらも今後の中枢神経障害領域の評価のあり方について方向性を示している.これらの取り組みは教科書としては当然のことであるが,理学療法の歴史がそれを許してくれない現実があった.いい意味で世代が交代してきている証しなのかもしれない.
それぞれの講義の内容・深度に温度差があるのが少々気になるが,理学療法士としての専門性をしっかり示すために,神経障害理学療法に力を入れたい,という編者および著者のメッセージが伝わってくるテキストである.