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小児科ベストプラクティス 外来で見つける先天代謝異常症

小児科ベストプラクティス 外来で見つける先天代謝異常症 published on
小児内科 Vol.55 No.4(2023年4月増大号)「Book Review」より

評者:乾あやの(済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科)

本書では,先天性代謝異常症の工キスパートが,いかにして日常診療から希少疾患である先天性代謝異常症を見つけ出し,診療していくのかがわかりやすく記載されている。

本書のタイトルでもある「外来で見つける先天性代謝異常症─シマウマ診断の勧め」(太字は筆者編集)も魅力的である。編集された窪田 満先生の「シマウマ談」は納得した。私はこのタイトルを見たとき,シマウマの身体の色と特徴を想像した。しかし,その「序」で実は,シマウマの鳴き声が犬のように「ワンワン」であることを初めて知った。なぜシマウマ?と思った方はぜひこの本を手に取ってその思いを感じとってほしい。本書はいつもそばに置いて,救急診療から日常診療まで,ふと疑問に思った兆候,検査所見,臨床経過を照らし合わせて考えてみるのに最適である。

先天性代謝異常症の著書は,「執筆者は頭がいいのだなあ」と感心するばかりで,「でも私には無理,無理」と最初の数ページで本を閉じてしまい,そのまま本棚の奥に鎮座してしまうものが多かった。

本書は,先天性代謝異常症診断のための検査のノウハウ,検体の保存方法から送付先,症例提示も含まれており,一人でも多くの未診断の患者さんを見出し,診断・診療・治療に結び付ける熱意あふれる名著といえる。

予防接種コンシェルジュ

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学術と臨床両面に携わってこられた中野教授ならではといえる良書

小児内科 Vol.47 No.10(2015年10月号) 書評より

書評者:高橋謙造(帝京大学公衆衛生学研究科)

小児科臨床,予防接種に携わる全ての医師たちにとっての必読書が現れた。研修医や,新規に予防接種事業に乗り出した開業の先生方などが,一度はつまずくポイントひとつひとつに配慮されているようで,非常に行き届いた内容の教科書である。長年にわたり,学術と臨床両面に携わってこられた(そして,われわれ世代にとってのロールモデルでもあり続ける)中野教授ならではといえる良書である。
実例を挙げよう。予防接種の有効率のようなアカデミックな内容が,平易に解説されている。実は,予防接種においては,有効率などを考慮せすとも安全な業務遂行は成立しうる。しかし一方で,患者さんにワクチンの必要性などについて納得して接種を受けていただこうということになると,少し掘り込んだ説明が必要にもなる。そういった時には,この知識は役立つであろう。また,疾病罹患後の接種や同時接種などの実務的な解説も,全てが平易な文章で書かれている。併用薬剤に関する記述などは,なかなか煩雑で調べにくい内容であるが,2015年6月時点での最新知見をまとめてある。さらに疾病別の解説に関しても「免疫原性の評価」といった項目があり,対象疾病の確定診断のためには,どのような抗体検査で調べるのが確実か?についてまとめてあり,非常に有益である。臨床家がどこで迷うか?について,知り尽くして書かれているのである。
欲を言うなら,最初の10ページほどはやや表が多い印象がある。情報量が多い図表で挫折する若手も多いので,この部分の情報は巻末に回すなり工夫が必要であろう。このあたりは今後の改訂に期待したい。
臨床医にとっても,研究や行政サービスなどで予防接種に携わる方々にとっても,必読の書であろう。


すべての予防接種に携わる医療関係者に本書をお奨めする

小児科診療 Vol.78 No.10(2015年10月号) 書評より

書評者:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科教授)

本書のタイトル『予防接種コンシェルジュ』は序文によると「予防接種よろず承り係」という意味とのことである.内容はまさにその通りで,理想的な予防接種実践の手引き書となっている.現場で困ったとき必要な手がかりが必ず得られるよう配慮された構成がなされている.本書の最大の特徴は単著であるということである.最初から最後まで著者のポリシーが貫かれており,たいへん読みやすい.
本書は3部で構成されている.Part 1「予防接種の基本とスケジュール」,Part 2 「接種の実際」,Part 3 「ワクチンの接種法,個別対応」の3部である.Part 1 とPart 2 が予防接種実践書としての根幹部分である.Part 1で特に目を引くのが,同時接種や筋肉内注射などホットなテーマに個別に項目が割かれていることである.ワクチンの有効率の解説も有用である.Part 3 はワクチンの各論部分である.多くのワクチンが含まれるため個々の解説の紙面は限られるが,その中で「免疫原性の評価」は必ずふれられていて,著者のこだわりを感じる.
本書には全体にわたり日本の複雑な予防接種制度の変遷とその経緯の理解に役立つよう,随所に歴史的解説が挿入されているのも特徴である.さらに限られた紙面の中で情報が吟味されており,予防接種に不慣れな方はもちろん,ベテランの方でも必ず必要な情報が得られる良書である.文体も平易で読みやすい.日本の予防接種普及に資する必携の書である.すべての予防接種に携わる医療関係者に本書をお奨めする.

総合小児医療カンパニア 小児科コミュニケーションスキル

総合小児医療カンパニア 小児科コミュニケーションスキル published on

「子どもへの説明」と「保護者への説明」が実例を含めて記載されている

小児内科 Vol.46 No.5(2014年5月号) Book Review

書評者:窪田満(埼玉県立小児医療センター総合診療科)

かつて,「ムンテラ」という言葉があった。最近使用されなくなってきた理由は,そのニュアンスに「患者を言いくるめる」という響きがあるからであろう。この本は,決して「ムンテラ」のための本ではない。目の前の子どもを,保護者を,さまざまな相談にこられた一人の人間として捉え,プロフェッショナルである私たちが「コミュニケーション」という手段を用いて,真摯にその要求に対応するための方法を説いてくれている。
この本には,「子どもへの説明」と「保護者への説明」が実例を含めて記載されており,大変参考になる。とくに「言わない方がいい言葉」には,はっとさせられる。実際に,喉元まで出かかった言葉は確かにある。子どもへの配慮,保護者の精神面や親子の関係性への配慮,地域医療への配慮などがまだまだ自分には足りないことに気づかされる。
そして,読み進めていて,ハタと気がつく。私には同じ言葉を発するのは無理だと。高いレベルの対応力や,珠玉の言葉たちは,「スキル=技術」であることは理解できる。しかし,それは執筆者の先生方が培ってこられた「人間力」に裏打ちされたものなのだ。先生方のクリニックを受診する前は心配顔だった親子が,クリニックから帰る時には,きっと笑顔になっているのだろう。病気を診てもらった以上に,色々な話ができた,コミュニケーションができた満足感を持って家路についているのだろう。自分もいつか,こういう小児科医になりたい,そう思わせてくれる。ここに書かれている珠玉の言葉を,今,そのまま使うことはできないが,必ずスキルを身につけて自分の診療に反映させたい。
この本を,日々「コミュニケーション」を積み重ねている,すべての小児科医にお勧めする。

総合小児医療カンパニア 予防接種マネジメント

総合小児医療カンパニア 予防接種マネジメント published on
メディカル朝日 2013年8月号 BOOKS PICKUPより

接種の実際に役立つ情報を整理

PC医が基礎臨床能力を備えて総合診療力を高めることを目標に刊行中の、全10巻シリーズ2巻目。今年4月の予防接種法改正の最新情報にのっとり、総論でワクチンの基礎知識、在庫管理、接種勧奨・実践法、個別の接種スケジュールの立て方、接種ミス回避法、保護者の質問への答え方などを、各論では各疾患の概説、接種目的・方法、副反応、注意事項を詳しく解説した。

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号24-2029)
朝日新聞出版に無断で転載することを禁止します


本書の執筆者たちの願いは,わが国のすべての子どもたちが,あらゆるVPDの脅威から確実に守られること

小児科診療 Vol.76 No.8(2013年8月号) 書評より

評者:松平隆光(松平小児科)

今ほど子どもの医療に携わる医療関係者が予防接種に関心をもったことはない.これは,定期接種の種類が増え,ワクチンで防げる病気(vaccine preventable diseases: VPD)から子どもを守ることの重要性を再認識したためである.しかし,ワクチンを安全に有効的に使うためには,日々変るワクチン事業に精通しておく必要がある.
本書は毎日臨床の第一線で予防接種の実務に携わっている小児科医が執筆者となっており,その内容は豊富な知識と経験によるものである.また読者が理解しやすいように「ワクチンについて知る」,「ワクチン接種を行う」,「役に立つ情報を利用する」の3部から構成されている.2013年3月に可決・成立した予防接種法改正案を盛り込み,各ワクチンの接種法はもちろん,ワクチンプラン,接種勧奨のタイミング,予診票のチェック,ワクチン在庫管理,副反応への対応,接種ミス回避など,接種医として当然知っておくべき事項が記載されている.
本書の執筆者たちの願いは,わが国のすべての子どもたちが,あらゆるVPDの脅威から確実に守られることである.


パンを切り分けて食べるように実地医家の先生方の知識が惜しみなく分け与えられている

小児内科 Vol.45 No.6(2013年6月号) Book Reviewより

評者:窪田満(埼玉県立小児医療センター総合診療科)

この本は,「総合小児医療カンパニア」シリーズの2冊目である。「カンパニア」とは,パンを分け合う人々という意味とのことである。そういえば,「カンパーニュ」という素朴なパンがある。そのパンを切り分けて食べるように,実地医家の先生方の知識が惜しみなく分け与えられているのが,このシリーズの最大の魅力だろう。
例えば,今まで数多くの予防接種に関する本が出ているが,ワクチンの発注の仕方を教えてくれる本はあっただろうか。保護者の質問にどう答えるか,接種ミスを起こさないようにするにはどうするかなど,ガイドラインを読んだだけでは分からないような,明日から役に立つ知識が記載されており,執筆者の先生方の真摯な思いに触れる気がする。本物の小児科医がそこにいて,大切なものを分け与えてくださっている感覚だ。
各論では,各ワクチンに関する解説の後の「接種勧奨に役立つフレーズ」や「このワクチンのツボ」が興味深い。さらにその後の1ページに,患者さんにそのままコピーをお渡しできる解説文が記載されている。ここまで実地医家の先生方が,その知識,技術を分け与えてくださるのかと,感嘆せざるを得ない。文書類の解説も,実に実際的である。
この分け与えて頂いたカンパーニュは,見た目は派手ではないが,経験に裏打ちされた,味のある,素晴らしいものである。この本を,予防接種に関わる全ての小児科医にお勧めする。


子どもたちと保護者に寄り添う医療のための秘訣や知恵が凝縮された一冊

田中美紀(一般社団法人 細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会 代表理事)

一般社団法人 細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会の田中です.私たちの会は,2006年以降,細菌性髄膜炎を患ったご本人,お子さんをもつご家族,医療従事者,一般の賛同者で構成され,当事者家族の交流や疾患の情報提供などとともに,日本で起こる細菌性髄膜炎の多くを防ぐことのできるヒブ,小児用肺炎球菌ワクチンの導入・普及を訴えてまいりました.
その過程で,全国の多くの小児科の先生方からご支援やご助言を得,そして私たちの声に耳を傾け,ともに行動を起こしてくださった結果,切に願ったヒブ,小児用肺炎球菌,両ワクチンの定期接種化へとつながりました.
本書でも指摘されているように予防接種制度にはまだまだ多くの課題が残されておりますが,一歩前進したことはたいへん喜ばしいことです.しかしながら,いくら目の前に良いワクチンがあり,制度が整っても実際に接種行動を保護者に起していただかなければ,子どもたちを守ることはできません.まだ判断力がない幼い子どもたちに代わって,保護者が理解し納得したうえで接種することが必要不可欠になってまいります.
しかし,保護者の知識や理解度も千差万別なため,各保護者にマッチした説明や情報提供が必要です.精選された先生方が小児医療の現場で培われた豊富なご経験をもとに書かれた知識,手法,アドバイスは,多くの疑問や不安を抱える保護者に寄り添い,良い関係の元で子どもたちを守ろうと思ってくださる医療者にとって必読の内容だと感じました.
また,専門知識の乏しい私にも理解できるような情報の整理がなされてたいへん読み進めやすく,医師だけではなく小児の予防接種に関わるすべての方に読んでいただきたいオススメの一冊となっています.