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新戦略に基づく麻酔・周術期医学 麻酔科医のための循環管理の実際

新戦略に基づく麻酔・周術期医学 麻酔科医のための循環管理の実際 published on

激変する時代のなかで多忙な麻酔科医に,適切な最新情報と知識を理解しやすくして伝えている

麻酔 Vol.62 No.9(2013年9月号) 書評より

書評者:並木昭義(小樽市病院局長)

この度,岡山大学の森田潔先生監修の《新戦略に基づく麻酔・周術期医学》シリーズが中山書店より上梓される。その第1冊目「麻酔科医のための循環管理の実際」は,高知大学の横山正尚先生が専門編集の任にあたり,この5月に刊行された。 この本の特徴は,激変する時代のなかで多忙な麻酔科医に,適切な最新情報と知識を理解しやすくして伝えていることである。そのために,次のような配慮がされている。紙面の両サイドの余白を利用してコメントや略語の説明などを加える。図表,イラストを充実させる。文中に執筆者の強調したいことをColumn,最近注目する話題をTopics,実践的な情報をAdviceとして載せる。基礎医学的知識そして,エビデンスに基づく臨床研究結果を重点的に取り入れる。執筆者達は,この分野における臨床的実力・実績を十分に有する専門家である。
私はつい最近A-Cバイパス手術を体験したこともあり,今回この書評を依頼されたとき特別な気持ちになった。本書に書かれている内容を自分で考える主体的な気持ちになって読み進めた。一読しながら重要な事項,興味ある箇所に付箋を入れたところ,その数は30枚に達した。以降に各章の内容と私の興味のあった箇所を紹介する。
本書は9章から構成される。1章は“術前の体液管理”で2項目7細目である。術前経口補水については,Columnで「点滴は不要!? みんなに優しい術前経口補水」として推奨している。体験者としては飲ませ方に工夫が必要であると思う。2章は“術前使用薬剤の管理”で3項目11細目である。
3章は“合併する心疾患のリスク評価と術前準備”で5項目13細目である。Topicsで「治療効果のクラスとエビデンスレベル」が紹介される。4章は“術中輸液・輸血の考え方”で5項目27細目である。私も治験に参加した「新しいHES製剤は輸液管理を変えるか?」の項目に興味がある。5章は“術中モニタリングのup-to-date”で4項目16細目である。「循環管理の新たな指標と可能性」の項目は重要であり,Adviceとして「収縮期血圧,拡張期血圧,平均動脈圧の臨床的な意義」が紹介される。6章は“麻酔方法と循環管理の考え方”で4項目13細目である。7章は“心血管手術の循環管理のコツ”で4項目13細目である。この項目のなかでは,私も経験のある「off-pump CABG」と「ロボット心臓手術」が注目される。私は手術を体験して,麻酔が上手であるということは,術直後の覚醒および術後経過が円滑で,患者に満足されることであると確信した。
8章は“術後循環管理の実際”で7項目30細目である。このなかでもっとも注目される項目は「心臓リハビリテーション」であり,そのプログラムの確立が求められる。9章は“術後痛と循環”で2項目5細目である。
この本は,単なるマニュアル本とは異なり,質の高い,実践的参考書である。レベルの高い内容であると思う。それを多くの読者が理解しやすいようにすべく,最大限努力していることは評価できる。本書「麻酔科医のための循環管理の実際」およびシリーズの続刊が多くの読者に喜ばれ,有効に活用されることを期待する。