患者の内なる力をよび起こし,セルフケア能力を賦活させ,患者と一緒に療養生活をマネジメントしようとする姿勢が基本にある

がん看護 Vol.17, No.3(2012年3-4月増大号) BOOKより

評者:内布敦子(兵庫県立大学看護学部)

がん化学療法に携わる看護師の数は,近年飛躍的に増えている.がん化学療法看護認定看護師は844人(2011年12月現在)におよび,がん看護専門看護師のなかにも本書の編集者である本山清美氏,遠藤久美氏のように化学療法をサブスペシャリティにする人が増えている.忙しい外来で流れ作業のようになってしまいがちな患者への対応を,質の高い看護ケアにするためには,充実した知識,徹底した患者中心の考え方が重要である.

本書は形状といい題名といい,いわゆる簡便なマニュアル本のような印象を受けるが,内容は決してそのような単純なものではない.患者の内なる力をよび起こし,セルフケア能力を賦活させ,患者と一緒に療養生活をマネジメントしようとする姿勢が基本にある.これは本書第3章に書かれており,じっくり腰を据え読み込むべき内容である.

有害事象の管理は,看護師がもっとも責任をもって取り組むべき課題である.有害事象は患者のQOLを著しく低下させ,治療完遂率を左右する.看護師のもつ正確な知識,モニタリングの能力,適切な対応能力によって患者の生活は大きく変わる.看護師が患者の力を引き出しながら,上手にマネジメントするために最低限必要な知識が本書には詰まっている.とくに,ありがたいのは分子標的治療薬や経口抗がん薬の治療に伴う看護の知識が充実している点である.ほとんどの治療が外来で行われ,医療者の目は届かなくなるため,患者のもつセルフケア能力をいかに活用するかは治療成功の秘訣となるであろう.

各疾患の説明はポイントをおさえながら簡潔に書かれ,治療レジメンなどの最新情報が盛り込まれている.エビデンスが確認され,新しく導入される治療法が加われば常に情報を新たにする必要があるので,編集者泣かせの本であることは間違いないが,引き続き更新作業を入念に行い,価値ある本であり続けていただきたい.


複雑化する治療や副作用を簡潔に解説

Expert Nurse Vol.28, No.2(February 2012) BOOKレビューより

看護の流れをアルゴリズムで導くシリーズの最新刊。進歩を続け、複雑化しているがん化学療法。本書では看護師が得ておきたい最新知識をコンパクトにわかりやすくまとめている。家族支援のポイントや他職種の役割など,相談や連携をとるときに役立つ内容も含まれている。