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総合小児医療カンパニア 移行期医療

総合小児医療カンパニア 移行期医療 published on

具体的な小児疾患の移行期における問題と解決策がわかりやすく記載されている

小児科診療 Vol.78 No.9(2015年9月号) 書評より

書評者:五十嵐隆(国立成育医療研究センター理事長)

かつて,わが国では血液悪性腫瘍,先天性心疾患,神経筋疾患などの重篤な慢性疾患をもつ子どもや低出生体重児の生命予後は悪く,成人にまで到達できないことが多かった.近年の医療の進歩は慢性疾患の子どもの生命予後を劇的に改善させ,その結果として,疾患やその後遺症を抱えて成人に至る患者が増加している.
成人になっても治療が必要な患者だけでなく,新たな後遺症への対策が必要な患者も少なくない.さらに,長期間にわたる入院生活や治療のために学校・社会生活を送るうえで何らかの障害をもち,悩んでいる患者もみられる.身体・発達・行動・精神状態に慢性的な障害があり,何らかの医療や支援が必要な子どもが,米国では17歳の時点で17%を占めており,わが国でも同様である.こうした状況をふまえ,日本小児科学会は移行期の患者とご家族に対する保健・医療と社会的支援がこれからのわが国の大きな課題と認識し,2014年に移行期医療に関する基本的な考えを提言として公表した.慢性的に身体・発達・行動・精神状態に障害をもち,何らかの医療や支援が必要な子どもと青年がself-esteemをもって社会の一員として活躍できるようにするために,彼らとご家族を支援する医療・保健・福祉をわが国に充実させることが責務であるからである.
本書では,わが国の移行期医療の現状,移行期医療に関する基本的な考え方,主として米国における移行期医療の先進的取り組み,そして,様々な具体的な小児疾患の移行期における問題と解決策がわかりやすく記載されている.わが国における今後の移行期医療をより適切に実践するうえで,本書は明らかな道筋を示していると強く感じた.小児医療に携わる方が本書をご一読いただき,多くの方々の力を結集して,わが国の移行期医療を発展させていただきたい.

総合小児医療カンパニア 乳幼児を診る

総合小児医療カンパニア 乳幼児を診る published on

小児臨床に携わる方は是非一読を

小児科診療 Vol.78 No.5(2015年5月号) 書評より

書評者:堀内 勁(聖マリアンナ医科大学小児科)

小児科の実地診療では本来の疾病治療から疾病予防と育児支援へとその内容が広がってきている.特に育児支援は,症状から病因を探り治療するという,通常の医療の取り組みだけでは足りない.
本書は育児支援を自然科学と人間科学とをあわせた視点で捉えることから始め,子どもの成長発達と親としての成長,それに伴う育児不安までを視野に入れた構成となっている.また,成長発達に伴うつまづきについても簡潔に要点が捉えられ,小児科医としてどのように対処すればよいかが述べられている.
実際に乳児健診の場で傷つけられ,自信をなくして,私のもとに相談にみえる家族は少なくない.小児科医として育児支援に携わっていると,自分の知識は仮説の集まりにすぎず,親子1組ずつの真実はすべて同一ではないことに気づく.
私たちが親子を評価し,判断し,挙げ句の果てに品定めをするのではなく,親子をとりまく環境や,子育ての物語を傾聴することで,その物語の流れの中で問題が解消していくように支えることができる.いってみれば,解決型の小児科臨床から解消型の育児支援への転換が期待される.小児臨床に携わる方は是非一読をお薦めする.

総合小児医療カンパニア 小児科コミュニケーションスキル

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「子どもへの説明」と「保護者への説明」が実例を含めて記載されている

小児内科 Vol.46 No.5(2014年5月号) Book Review

書評者:窪田満(埼玉県立小児医療センター総合診療科)

かつて,「ムンテラ」という言葉があった。最近使用されなくなってきた理由は,そのニュアンスに「患者を言いくるめる」という響きがあるからであろう。この本は,決して「ムンテラ」のための本ではない。目の前の子どもを,保護者を,さまざまな相談にこられた一人の人間として捉え,プロフェッショナルである私たちが「コミュニケーション」という手段を用いて,真摯にその要求に対応するための方法を説いてくれている。
この本には,「子どもへの説明」と「保護者への説明」が実例を含めて記載されており,大変参考になる。とくに「言わない方がいい言葉」には,はっとさせられる。実際に,喉元まで出かかった言葉は確かにある。子どもへの配慮,保護者の精神面や親子の関係性への配慮,地域医療への配慮などがまだまだ自分には足りないことに気づかされる。
そして,読み進めていて,ハタと気がつく。私には同じ言葉を発するのは無理だと。高いレベルの対応力や,珠玉の言葉たちは,「スキル=技術」であることは理解できる。しかし,それは執筆者の先生方が培ってこられた「人間力」に裏打ちされたものなのだ。先生方のクリニックを受診する前は心配顔だった親子が,クリニックから帰る時には,きっと笑顔になっているのだろう。病気を診てもらった以上に,色々な話ができた,コミュニケーションができた満足感を持って家路についているのだろう。自分もいつか,こういう小児科医になりたい,そう思わせてくれる。ここに書かれている珠玉の言葉を,今,そのまま使うことはできないが,必ずスキルを身につけて自分の診療に反映させたい。
この本を,日々「コミュニケーション」を積み重ねている,すべての小児科医にお勧めする。

総合小児医療カンパニア 小児科医の役割と実践

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奇妙にして,稀有なる本

小児科診療 Vol.76 No.12(2013年12月号) 書評より

書評者:岩田健太郎(神戸大学医学部教授)

本書は一見,実に奇妙な本である.でも,得心した.本書は「小児医学」のテキストではなく,「小児医療学」のテキストなのだ.
たとえば,地域や行政とのかかわりかたを論じる教科書は稀有である.しかし,予防接種の公費負担を勝ち取るためのノウハウは,小児科医としてはぜひ教えてほしいところだろう.子育て関連支援法についてだって学びたい.現代小児の周辺にある衣食住の現実(レトルト食品の売上とか)も知りたい.小児慢性疾患患者の成人医療へのトランジションも切実な問題だ.本書にはこうした現場の切実な問題が(たぶん)すべて網羅されている.
自分たちが有効活用されるためには,家庭での小児のケアが重要になる.小児が発熱したとき,どのように家庭でケアできるのか.ふつうのテキストは医療が何を提供するのかを語る.本書は医療が提供しなくてもよい条件を検討する.
あるいは,時間外診療のありかた,電話のかけかた.いずれも現場における切実な問題で,どれも(ふつうの)教科書には書いていない.学校でも教えてくれない.保護者に電話で「大丈夫でしょうか」と言われたとき,どう答えるか.「ご心配だったら,受診してください」は通俗的な回答だ(ぼくもよくそう言っていた)が,相手の欲するのはそういうことではない.では,どう答えればよいのか.それは本書の103ページに書いてある.
とくに感心したのは,「他科協働」というセクションを設けていることだ.眼科との,耳鼻科との,歯科との,整形外科との協働のありかた.実に必要なスキルだが,Nelsonにはこういうセクションはないし(18版),Rakelの家庭医学にもない(8版).他科との協働はスローガンとしてはよく聞かれる.本書ほど具体性をもってそれを示した教科書をぼくは他に知らない.
本書はおそらく,きわめて厳しい環境下で歯を食いしばる小児科医たちの切実な魂の結実である.教科書を読んで感動することは,まずない.でも,本書には心が震えた.

総合小児医療カンパニア 予防接種マネジメント

総合小児医療カンパニア 予防接種マネジメント published on
メディカル朝日 2013年8月号 BOOKS PICKUPより

接種の実際に役立つ情報を整理

PC医が基礎臨床能力を備えて総合診療力を高めることを目標に刊行中の、全10巻シリーズ2巻目。今年4月の予防接種法改正の最新情報にのっとり、総論でワクチンの基礎知識、在庫管理、接種勧奨・実践法、個別の接種スケジュールの立て方、接種ミス回避法、保護者の質問への答え方などを、各論では各疾患の概説、接種目的・方法、副反応、注意事項を詳しく解説した。

朝日新聞出版より転載承諾済み(承諾番号24-2029)
朝日新聞出版に無断で転載することを禁止します


本書の執筆者たちの願いは,わが国のすべての子どもたちが,あらゆるVPDの脅威から確実に守られること

小児科診療 Vol.76 No.8(2013年8月号) 書評より

評者:松平隆光(松平小児科)

今ほど子どもの医療に携わる医療関係者が予防接種に関心をもったことはない.これは,定期接種の種類が増え,ワクチンで防げる病気(vaccine preventable diseases: VPD)から子どもを守ることの重要性を再認識したためである.しかし,ワクチンを安全に有効的に使うためには,日々変るワクチン事業に精通しておく必要がある.
本書は毎日臨床の第一線で予防接種の実務に携わっている小児科医が執筆者となっており,その内容は豊富な知識と経験によるものである.また読者が理解しやすいように「ワクチンについて知る」,「ワクチン接種を行う」,「役に立つ情報を利用する」の3部から構成されている.2013年3月に可決・成立した予防接種法改正案を盛り込み,各ワクチンの接種法はもちろん,ワクチンプラン,接種勧奨のタイミング,予診票のチェック,ワクチン在庫管理,副反応への対応,接種ミス回避など,接種医として当然知っておくべき事項が記載されている.
本書の執筆者たちの願いは,わが国のすべての子どもたちが,あらゆるVPDの脅威から確実に守られることである.


パンを切り分けて食べるように実地医家の先生方の知識が惜しみなく分け与えられている

小児内科 Vol.45 No.6(2013年6月号) Book Reviewより

評者:窪田満(埼玉県立小児医療センター総合診療科)

この本は,「総合小児医療カンパニア」シリーズの2冊目である。「カンパニア」とは,パンを分け合う人々という意味とのことである。そういえば,「カンパーニュ」という素朴なパンがある。そのパンを切り分けて食べるように,実地医家の先生方の知識が惜しみなく分け与えられているのが,このシリーズの最大の魅力だろう。
例えば,今まで数多くの予防接種に関する本が出ているが,ワクチンの発注の仕方を教えてくれる本はあっただろうか。保護者の質問にどう答えるか,接種ミスを起こさないようにするにはどうするかなど,ガイドラインを読んだだけでは分からないような,明日から役に立つ知識が記載されており,執筆者の先生方の真摯な思いに触れる気がする。本物の小児科医がそこにいて,大切なものを分け与えてくださっている感覚だ。
各論では,各ワクチンに関する解説の後の「接種勧奨に役立つフレーズ」や「このワクチンのツボ」が興味深い。さらにその後の1ページに,患者さんにそのままコピーをお渡しできる解説文が記載されている。ここまで実地医家の先生方が,その知識,技術を分け与えてくださるのかと,感嘆せざるを得ない。文書類の解説も,実に実際的である。
この分け与えて頂いたカンパーニュは,見た目は派手ではないが,経験に裏打ちされた,味のある,素晴らしいものである。この本を,予防接種に関わる全ての小児科医にお勧めする。


子どもたちと保護者に寄り添う医療のための秘訣や知恵が凝縮された一冊

田中美紀(一般社団法人 細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会 代表理事)

一般社団法人 細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会の田中です.私たちの会は,2006年以降,細菌性髄膜炎を患ったご本人,お子さんをもつご家族,医療従事者,一般の賛同者で構成され,当事者家族の交流や疾患の情報提供などとともに,日本で起こる細菌性髄膜炎の多くを防ぐことのできるヒブ,小児用肺炎球菌ワクチンの導入・普及を訴えてまいりました.
その過程で,全国の多くの小児科の先生方からご支援やご助言を得,そして私たちの声に耳を傾け,ともに行動を起こしてくださった結果,切に願ったヒブ,小児用肺炎球菌,両ワクチンの定期接種化へとつながりました.
本書でも指摘されているように予防接種制度にはまだまだ多くの課題が残されておりますが,一歩前進したことはたいへん喜ばしいことです.しかしながら,いくら目の前に良いワクチンがあり,制度が整っても実際に接種行動を保護者に起していただかなければ,子どもたちを守ることはできません.まだ判断力がない幼い子どもたちに代わって,保護者が理解し納得したうえで接種することが必要不可欠になってまいります.
しかし,保護者の知識や理解度も千差万別なため,各保護者にマッチした説明や情報提供が必要です.精選された先生方が小児医療の現場で培われた豊富なご経験をもとに書かれた知識,手法,アドバイスは,多くの疑問や不安を抱える保護者に寄り添い,良い関係の元で子どもたちを守ろうと思ってくださる医療者にとって必読の内容だと感じました.
また,専門知識の乏しい私にも理解できるような情報の整理がなされてたいへん読み進めやすく,医師だけではなく小児の予防接種に関わるすべての方に読んでいただきたいオススメの一冊となっています.

総合小児医療カンパニア 初期診療を磨く

総合小児医療カンパニア 初期診療を磨く published on

まさに珠玉の小児科初期診断学のサイエンスとアートのパール集

小児科診療 Vol.76 No.4(2013年4月号) 書評より

評者:永井 章(国立成育医療研究センター 総合診療部小児期・思春期診療科医長)

医学は,サイエンスに基づくアートであると述べたのは,著名な内科医William Oslerであるが,診断学においても,その徴候から適切に鑑別診断をあげ,適切に臨床推論を進めていくサイエンスの部分と,いかに診断に必要な医療情報を良好な閔係性をもとに適切に聞き出し取集するなどの熟練された技術より成り立つアートの要素が欠かせない.
第一線で活躍されている実施小児科医家により著された本書は,これまでの小児科診断学の成書にはない,サイエンスの部分のみならず,このアートの部分に大きく光があてられ非常に秀逸なものとなっている.診断のプロセスが非常に臨場感をもって記載され,それぞれのクリニカルパールには貴重なメッセージが込められ,読む者に直に伝わってくる.
本書は,カンパニアシリーズの初刊号であり,カンパニアは「共に分け合う」ということを意味するそうであるが,著者からのアートを伝承,共有するという,強い情熱も加わり,本書をより魅力的なものとしている.まさに珠玉の小児科初期診断学のサイエンスとアートのパール集であり,多くの第一線の小児診療の携わる小児科医にとって,必ずや新たな学びと共感を得られるものと確信する.ぜひ,ご一読を,薦めたい.