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小児内分泌学会ガイドライン集

小児内分泌学会ガイドライン集 published on
小児科診療 81巻5号(2018年5月号)「書評」より

評者:横谷 進(福島県立医科大学 甲状腺・内分泌センター長)

このたび,一般社団法人 日本小児内分泌学会から診療ガイドライン集が刊行されました.さまざまな学会からガイドライン集が発刊されていますが,小児内分泌学の領域でも待望のガイドライン集が入手可能になりました.各領域が専門分化していくなかで,臨床小児内分泌学も独自の進歩を急速に遂げていることから,的確な診療のためにはこのようなガイドラインが必須になっています.
日本小児内分泌学会は,私が知る限りでも30年以上前からいくつかの疾患に対するガイドラインを公表してきました.その後に明らかになった多くの臨床的知見に基づく改訂や,新たに確立されてきた診療ガイドラインのあり方に即した改訂も必要になっています.こうした地道な作業は,学会内に設置されたガイドライン委員会が担うことにより着実に進められてきました.今回の刊行に際して,以前に公表されたガイドラインも含めて再点検されたことにより,最新のガイドラインになっているので,安心して利用することができます.
目次を見ただけで,どのようなガイドラインがあるのか(ないのか)がすぐにわかります.小児内分泌領域の診療ガイドラインを探すなら,まず,本書にあたってみることをお勧めします.

レジデントのための糖尿病・代謝・内分泌内科ポケットブック

レジデントのための糖尿病・代謝・内分泌内科ポケットブック published on

無駄な記載を省き,現時点でのコンセンサスを十分踏まえたうえで,臨床的に必要なノウハウを具体的かつ明快に解説している

Diabetes Frontier Vol.25 No.5(2014年10月号) BOOK REVIEW

書評者:駒津光久(信州大学医学部糖尿病・内分泌代謝内科教授)

国立国際医療研究センターの野田光彦博士監修による「レジデントのための糖尿病・代謝・内分泌内科ポケットガイドブック」が上梓された。充実した内容をコンパクトなサイズに凝縮し,無駄な記載を省き,現時点でのコンセンサスを十分踏まえたうえで,臨床的に必要なノウハウを具体的かつ明快に解説している。本書は,レジデントには必須の「Ⅰ. 救急対応と電解質異常」,「Ⅱ. 糖尿病」,「Ⅲ. 高血圧・代謝疾患」,「Ⅳ. 内分泌疾患」の4部構成になっている。また,合計33項目についてColumnとして当該分野のトピックスに解説が加えられている。
例えば,糖尿病ケトアシドーシスの治療では,補液,速効型インスリン,カリウムの重要かつ十分な3項目についてわかりやすいフローチャートで極めて明解に描かれている。また,原発性アルドステロン症の鑑別も現時点で妥当かつ使いやすいフローチャートが書かれている。文章だけではなくこのような秀逸なチャートや,最新の診断基準の掲載など,レジデントの困りそうなところすべてに手が届いている。全体を通して,記載の姿勢や記述分量,文体などに統一感がある。これは,執筆者の田中隆久,辻本哲郎,小菅由果,財部大輔の4先生が,監修者の野田光彦博士の直弟子であり,その薫陶をうけ,意思疎通が十分にできたことによるのだろう。
内分泌代謝内科学は,負荷試験の方法や具体的な判定基準など,多くの数字が付きまとう。レジデントの間は,この本を傍らにおけば,そのような問題は解決する。基本的には,必要な項目を拾い読みすることになるが,時間の許すときに,33項目のColumnを熟読することも勧めたい。専門医が読み直しても頭の整理に役立つほど良質な内容である。また巻末には通常の索引に加えて,略語の解説や,内分泌負荷試験一覧,糖尿病注射薬の一覧が添えられており極めて実用的である。
本書は「初期研修医」が内分泌代謝内科をローテートする際に是非とも携行していただきたい一冊である。研修医が日々遭遇する臨床現場で,その分野での専門知識を迅速かつ適切に習得することは容易ではない。研修医といえども自分の担当患者における診断や治療に関しては,教科書をよく理解したうえで,総説や原著論文にあたる姿勢が,とくに内分泌代謝内科の分野では求められる。一方,日々の研修現場やカンファレンスで耳慣れない,あるいは理解が不十分な問題点が否応なく押し寄せてくる。そのような時,本書が手元にあれば心強い。研修終了時に本書が書き込みや付箋だらけになれば,そのまま読者の研修目標の達成につながるだろう。まさに,監修者が序で述べているように「お勧めできる珠玉の一冊」である。
当教室でも研修医に携行させたい。そして,その内容を深く理解することが私たち指導者こそ求められるので(自室にこもってひっそりと)勉強しておこうと思う。