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ニュースタンダード整形外科の臨床 6 手関節・手の痛みと障害

ニュースタンダード整形外科の臨床 6 手関節・手の痛みと障害 published on
評者:平田 仁(名古屋大学医学部個別化医療技術開発講座特任教授)

「収穫の加速」と呼ばれる技術進化の法則をご存知だろうか。一つの革新が他の発明と結びつき、次の革新へと連鎖することで、科学技術は指数関数的に進歩するとの主張である。日本整形外科学会は1926年に組織され、今年創設100年の節目を迎えた。私は1982年入会なので、その後半の発展を内側から具に見てきた。この間、CTやMRI、顕微鏡・関節鏡手術、人工関節や内固定材料、生物学的製剤や再生医療、さらにはナビゲーションやロボット技術など、革新的な診断・治療技術が次々と登場した。それらが相互に結びつくことで、かつて治療に難渋した多くの運動器疾患や重度外傷が克服され、治療選択肢も飛躍的に広がった。まさに整形外科の臨床と学術が「指数関数的な発展」を遂げてきた歩みを、身をもって実感している。

これは患者にとって大変望ましい一方、臨床医には「爆発的に増加する情報にどう対応するか」という難題をもたらした。Peter Densenは2011年に“Challenges and opportunities facing medical education”という論文の中で医学知識のdoubling timeが1980年には7年であったものが、2020年には73日になると予測した。PubMedの累積論文数を見ても、その勢いは明らかである。もはや「すべてを知る医師」を目指すことはできない。

一方、患者から見た整形外科医像はこの50年間ほとんど変わっていない。患者は今も整形外科医を「運動器の痛みや障害全般に精通し、適切に治療してくれる医師」として頼りにしているのである。このギャップを埋めるために必要なのは、知識を羅列した百科事典ではなく、症候を入口に診断を適切に進め、最適な治療選択へと導くガイダンスとしてのテキストであろう。《ニュースタンダード整形外科の臨床》は、まさにこの時代の要請に応えるシリーズである。

なかでも第6巻『手関節・手の痛みと障害』では、その真価が際立つ。手は狭い領域に多数の骨・関節・腱・靱帯・神経・血管が集まり、機能解剖やキネマティクスも複雑である。対象疾患は多彩で、治療選択や後療法も他の整形外科領域とは大きく異なるため、一般整形外科医が対応に苦慮することも少なくない。

その難題に対し、本書では疾患と好発年齢を俯瞰する見開きチャートと、動画を含む基本診察手技が、まず診療の道筋を明快に示し、さらに画像診断の進め方、手外科領域では特に有用な超音波検査の方法まで丁寧に説明している。そのうえで、佐藤和毅日本手外科学会理事長が厳選した各疾患・障害の第一人者が、個々の疾患・外傷について最新の知見と実践的な治療法を実にわかりやすく解説している。総論と各論をクロスレファレンスすることで、症候から診断へ、さらに専門家の最新知識へと迷うことなく進むことができる。医学知識が爆発的に増え続ける時代に、専門性の違いを越えて患者を適切な治療へ導く――そのための「診療の道標」として、すべての整形外科医に手元に置いていただきたい一押しのテキストである。