Visual Dermatology Vol.20 No.7(2021年7月号)「Book Review」より
評者:椛島健治(京都大学大学院医学研究科皮膚科学)
われわれ皮膚科医が教科書を購入してまで勉強すべき領域として,まず膠原病があげられよう(あくまで個人的な意見ではあるが).われわれが目にする多くの皮膚疾患は,皮膚科医のみで対応することが可能であるのに比し,膠原病は他科との連携が不可欠であり,また,皮膚科とは離れたところで疾患概念や診断・治療法が発展することも多い.それゆえ,皮膚科が主催する学会に参加しても,膠原病に対する他科のアプローチや動向を探ることは難しいのが現実である.
そのような状況のなか,膠原病に関する新知見が次々と見出されている.例えば,皮膚筋炎における自己抗体のプロファイルに基づく臨床型・合併症・予後に関する新知見は,臨床の現場において非常に有益である.また,治療の選択肢も格段に増え,それらを適切に用いることができるかどうかで患者の予後は大いに変わってくる.それゆえ,医師たるもの,診療に関わる限り,勉強し続けなければならない.
これまでの皮膚科医向けの膠原病関連の教科書は,皮膚科医が執筆陣を占めることがほとんどであった.しかし本書は日本の第一線で活躍する免疫・膠原病内科,肝臓内科, 呼吸器内科医,さらには基礎医学研究者といったオールジャパン体制での陣容となっている.そしてなんと,間質性肺炎・腎クリーゼなどの診断と治療法や,線維化の基礎的な病態の詳細にまで触れられている.これだけ幅広い項目と執筆陣を取りそろえることができたのは,本書の編者である藤本学先生の見識の広さと人徳の成せる技であろう.
本書を通読すれば,膠原病に関しては怖いものなしである.あるいは通読するほどまでの時間や意欲がなくても,レファレンス本として用いるだけでも十二分の価値がある.それゆえ,本書があれば,膠原病に関する他科依頼を受けたときにもしっかりと対応できる(他科依頼に対して,皮膚科医が期待に応えられないようでは,皮膚科医の存在価値は下がってしまいますよね).それほどに完成度の高いー冊と言える.
しかしその一方で,膠原病には解明されなければならない課題がまだ残っていることにも気付く.本書を手にした次世代の人材が膠原病に興味を持ち,そしてその問題を解決していってくれることにも大いに期待したい.