評者:窪田 満(国立成育医療研究センター総合診療部 統括部長)
現在、子どものこころの領域を専門に診療している医療機関の不足、地域格差は危機的な状況で、予約が取れても1年先というような状況が稀ならず存在している。
そのなかで重要なのが、私たち一般小児科医がどうやって、どこまで「子どものこころの診療」を担っていくかということであろう。もちろん、専門の先生方との連携は欠かせないが、そこに至るまでどうやって外来で繋いでいけばよいか、おそらく今までは手探りで行ってきたところである。
第1章~第2章の総説は様々な視点から、小児科医がどのようにして「ここまではできる、ここから先はできない」という明確な枠組みの設定を行うかが述べられている。枠組みをどうするかは非常に重要な視点で、それは決して責任回避ではない。できないことを小児科医に求めているのではなく、できることの限界設定を明確にし、そのなかで対応していこうというメッセージが強く伝わってくる。
第3章の各論は、目の前の患者に関して気になったとき、どう対応すべきかを調べるのに役に立つものである。特に初期対応をどうすればいいのかに関して、具体的に示されている。
第4章~第6章が、この本を最も特徴付けていると思う。リエゾンとは何か、連携とは何か、どうすれば良い連携に繋げられるのか、様々な状況から述べられている。また、Bio-Psycho-Socialの「Social」にも焦点を当てている。私たち小児科医には目の前の一人ひとりの子どもに対応するだけではなく、社会的視点が求められている。そしてその視点を持つことで、目の前の子どもの問題点に気が付くこともできる。
この本のサブタイトルは「小児科医が挑む子どものこころの臨床」である。「挑む」という強い表現を用いているが、身体疾患を中心に小児医療に向き合ってきた一般小児科医にとっては、「挑む」というのはしっくりくる表現でもある。ただ、私たちは一人で挑んでいるのではない。こうやって多くの専門の先生方に支えていただきながら挑んでいるのだということを実感する。この連携のなかで、子どもたちを守るために、私自身も挑んでいきたいと心から思う。