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小児診療 Knowledge & Skill 3 領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療

小児診療 Knowledge & Skill 3 領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療 published on

診療の現場に新たな「羅針盤」を

評者:野津寛大(神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科 教授)

小児科の一般診療において、腎・泌尿器疾患に遭遇する頻度は決して低くありません。本書『領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療』は、小児腎臓学と小児泌尿器科学を網羅的にカバーする必携の1冊であり、小児腎臓病学と小児泌尿器科学の双方の専門家が結集して執筆されています。

本書の最大の特長は、タイトルにもある通り「領域横断的視点」にあります。「腎臓の機能と尿路の形態は不可分である」という認識のもと、知識が体系化されています。目次を紐解くと、その網羅性に驚かされます。尿検査や超音波検査といった基礎的な評価方法から始まり、輸液・食事療法、ステロイドや免疫抑制薬(リツキシマブ等)による薬物療法、さらには小児泌尿器の手術や腎移植に至るまで、内科・外科の双方向からアプローチがなされています。

また、本書が現代の医療ニーズを的確に捉えている点として、「ライフステージアプローチ」の視点が随所に盛り込まれていることが挙げられます。小児期に診断・治療をして終わりではなく、その後の成人期に向けた慢性腎臓病(CKD)への移行リスクを見据え、将来の健康を守るための長期的な視点が提供されています。最終章においては「成人診療科への移行」や「社会適応をめざした支援」についても項が割かれており、患者の人生に寄り添う医療者の姿勢が強く感じられます。

具体的な疾患各論においても、ネフローゼ症候群やIgA腎症といった代表的な疾患から、遺伝性疾患、夜尿症、性感染症に至るまで幅広くカバーされており、まさに日々の診療における頼れるガイドブックと言えるでしょう。

序文において張田先生が「日々の診療に役立つ羅針盤となることを心より願っております」と述べている通り、本書は小児の腎・泌尿器疾患に関わるすべての医療従事者にとって、手元に置くべき必携の書です。短期的な治療のみならず、患者の長い人生を見据えた診療の質を高めるための、確かな道しるべとなるに違いありません。