私の “推し本” ~眼科診療エクレール

「日進月歩」というよく使われる言葉があります。速いスピードで物事が絶え間なく進歩することを表す四字熟語ですが、世は今やIT時代、時間の単位を速めて「秒進分歩」と呼ばれることも多いようです。ただ、もはや歩いている場合などではなく、「秒進分走」と言い換えたほうがいいようにも感じるこの頃です。

そんな中で、医療はまさに「秒進分走」でトランスフォームしています。眼科医療ももちろん例外ではなく、常に知識をアップデートしておく必要がありますが、今はウェブを通じて信頼できる情報を素早く集め、各自のニーズに合った書籍を選べる時代になっています。

さて、相原 一先生のご監修のもと、園田康平先生、辻川明孝先生、堀 裕一先生という三名の俊英が編集された「眼科診療エクレール」シリーズが発刊になったのをご存知でしょうか。本書のミッションは、実地医家に「エビデンスに基づく具体的な知識と技術の最新情報を提供する」ことにあり、それを実現するために、多くのカラー写真やイラストを配置し、視覚情報を通じて理解を深める工夫が随所になされています。また、オープンアクセス可能な関連文献については、二次元コードで直ちに参照できるのもとても便利です。

本書を端的に表現すれば、二面性を持った教科書 two-faced textbook と言えるでしょうか。必要不可欠な知識を網羅している点では辞書のようですし、その一方で、ストーリー性のある企画内容が、読み物としての通読も可能としています。第1巻の「最新 緑内障診療パーフェクトガイド」に始まり、今後取り上げられる各巻のタイトルも臨床に即応したものばかりです。

「エクレール」とは仏語で「稲妻」の意。その心は「知りたいことに即座に反応して情報を提供してくれる」ということですが、その意味で、私もできるだけ多くの先生方に本書を読んでいただけることを願っています。これを今風に言えば、「推し本」(おしぼん)ということになるのでしょうね。この「推し」という言葉には、対象となる人や物への好意だけでなく、他人にも紹介したいという気持ちが込められているのです。

私から最後のメッセージです。本シリーズを皆さまの座右の書に加えられることを強くお勧めします!

愛媛大学名誉教授 大橋裕一