がんと痛みについて広く知っておきたい場合に,すぐに役立つ貴重な情報源
がん看護 Vol.17, No.3(2012年11-12月号) BOOKより
評者:山田雅子(聖路加看護大学看護実践開発研究センター)
がんと痛みについて全体を理解することのできる1冊の本について紹介する.
「がん」と「痛み」の2つのキーワードが並べられていると,ついつい終末期をイメージしてしまう看護師にはぜひ読んでほしい.この本は,がんの痛みは終末期特有のものではないという思想に基づいて,治療期にある患者に対しても痛みといった切り口でアセスメントする視点を広げるためのさまざまな材料を提供してくれる.
構成は,2つの切り口すなわち,身体部位別とがん腫別にみた痛みの特徴が前半に示されており,後半には,療養の場の選択も含めたセルフケアからの視点,そして痛みに対する治療とケアの視点が示されている.最後には精神的およびスピリチュアルペインのとらえ方が発達段階別に整理されている.
感心したのは,部位別の痛みに関する取り上げ方だ.たとえば「頭痛」では,がんに関連した頭痛はもちろんのこと,「がん以外による痛み」として脳出血などについても言及している.病名だけで判断できない患者の症状の見極めに際して,多くの引き出しを準備しておくことの必要性が示されている.
がん看護分野において専門的に役割を果たしている看護師にとっては,物足りなさはあるだろうが,がんと痛みについて広く知っておきたい場合には,すぐに役に立つ貴重な情報源となるだろう.
院内だけでなく,訪問看護など院外でのがん看護に精通した角田氏と濱本氏が編集した本だけに,「高齢者とがん」「がん患者のための生活とケア」についての視点が明確に示されていることも大きな特徴である.患者・家族の「痛み」を正しく評価してケアにつなげていくために,多様な臨床の場で活用してほしいと願う.
しつこい痛みへの対処がわかる がん疼痛ケアのバイブル
ナース専科 Vol.32 No.6(2012年12月号) ナースの本棚より
がんの痛みには、がんによるもの、治療によるもの、精神的要因によるものがあり、弱いものから非常に強いものまでさまざまです。本書は、この複雑ながんの痛みとケアを理解する上で欠かせない、家族支援からスピリチュアルケアまでも網羅したがん疼痛ケアのバイブルです。
「がん疼痛患者へのケア方法」を網羅した1冊
コミュニティケア Vol.14 No.9(2012年8月号) BOOKSより
“生活支援”の現場で遭遇するがんに関連した“痛み”を抱える患者へのケアのポイントが述べられている。身体部位別・病態別の疼痛アセスメント方法が事例とともに紹介され、すぐ実践で使える内容だ。また、身体の“痛み”だけでなく、それに伴う精神的な“痛み”(スピリチュアルペイン)を持つ患者とのかかわり方や家族に対する支援方法もまとめられ、「がん疼痛患者へのケア方法」を網羅した1冊となっている。