必携! 小児診療における座右の書の1冊
日本医事新報 No.4600(2012年6月23日) BOOK REVIEWより
評者:久保実(石川県立中央病院副院長・いしかわ総合母子医療センター長(小児内科))
私は大学での研究生活を終えて地方の病院に赴任したが,そこは1人全科当直で,小児から成人まで,内科・外科を問わず救急診療する体制であった.小児のケガや腹痛などの症状に対し外科的処置の必要性の判断にしばしば迷い,そのつど外科の先生にコンサルトせざるをえず,心細く思ったものである.現在の病院には小児外科医が常勤でいるため,外科的疾患に出遭うことも多く,いろいろな経験ができて私は幸運であった.
近年では新臨床研修制度により外科の研修の機会はあるものの,小児科医を含め,ほとんどの医師は小児の外科的疾患について体系的な研修の機会はなく,稀に研究会や学会での報告に触れるのみである.しかし,実際には開業および病院小児科の診療においては,外科的疾患に出遭うことは日常茶飯事であり,医師には総合小児科的な役割,すなわち内科系・外科系疾患を問わず,すべての病態への初期対応・処置ができることが強く求められている.
編者の里見 昭先生は,小児救急医学会の副理事長をされていることからも分かるように,大学教授である一方,臨床の最前線において小児の外科的救急疾患の診療に当たってこられた臨床医でもある.本書には小児科医からよくコンサルトされる疾患,ぜひ知っておいてほしい疾患や処置などが選ばれている.
本書は「多くの小児科の先生方に臨床の場で気軽に使ってもらえる編集と内容に心がけた」とある通り,(1)日常診療に必要な外科的処置,(2)救急・応急のための外科的基本手技,(3)知っておくべき外科的救急疾患の病態と救急処置について,それぞれの章を設け,分かりやすく図解し,解説してある.巻末には,付表として小児急性中耳炎の治療アルゴリズムとアナフィラキシーショック治療が収載されている.
小児一般診療において座右の書として活用することをお勧めしたい.