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ポジショニング学 体位管理の基礎と実践 改訂第2版

ポジショニング学 体位管理の基礎と実践 改訂第2版 published on
Journal of Clinical Rehabilitation Vol.33 No.3(2024年3月号) 「書評」より

評者:日髙正巳(兵庫医科大学リハビリテーション学部,第26 回日本褥瘡学会学術集会大会長)

適切な「ポジショニング」は褥瘡予防の観点から極めて重要なテーマである.ポジショニングの第一人者である田中氏が初版を発刊されてから10年が経過し,その間,ポジショニングについての研究と議論が重ねられ,種々の変化を感じていたところである.そのようなとき,第2 版として改訂されることを知った.本書を手に取ったとき,前作に比べて厚みが増したことを感じ,この10 年間での「ポジショニング学」の定着と発展の成果を感じた.書籍を開くと,ポジショニングのパラダイム転換として,スモールチェンジ・間接法の追加,さらには,呼吸や食事援助時のポジショニングという実践方法の追加が目に飛び込んできた.この目次をみたとき,褥瘡ケアが治療から予防へ,さらには,生活へという視点の広がりとも大いに関連し,ポジショニング学が進化していることを実感した.

ポジショニングと聞くと,臥床時のケアをイメージしやすいが,座位でのポジショニング(シーティング)も重要なポイントである.第2版では,理学療法士の前重氏が編集にも加わり,理学療法士の視点が随所に盛り込まれていることを感じる.特に,座位のポジショニングとして,車椅子に座って生活するためのポジションについて充実が図られたことは,大きな特徴といえよう.また,姿勢の変化が胸郭運動に及ぼす影響等に関する研究成果が盛り込まれる等,最新の研究に基づいた説明の追加がみられる.さらに,安全な移乗動作として「起き上がり,移動のさせ方」等のコラムも大いに参考になる.

本書全体は,初版のコンセプトを踏襲し,多くの連続写真を用い,段階的なケア方法の解説と根拠が示されている.そのため,実践での使用として,本書をそのままポジショニング実施時のマニュアルとして使用することもできる構成となっている.多くの臨床家の方が,本書を手に取り,日々のポジショニングの実践に活かしていただけることで,褥瘡予防のみならず,介護を必要とされる方々が,無理な力が加わらず自然な姿勢で,安全で快適な生活を送られることを期待して止まない.

排泄リハビリテーション  改訂第2版

排泄リハビリテーション  改訂第2版 published on
Journal of CLINICAL REHABILITATION Vol.31 No.5(2022年5月号)「書評」より

評者:山西友典(獨協医科大学排泄機能センター)

超高齢社会を迎え,寿命のみでなく,QOLの重要性が課題になってきた.その中でも,排泄,すなわち排尿・排便は最も重要な課題の一つである.この分野は,これまであまり重要視されておらず,また排尿に関しては泌尿器科,排便に関しては消化器(内科・外科)の各科で,一部の特化した医師のみが診療にあたっているという歴史があった.現在でも,専門といいながら,どこの泌尿器科でも軽視され,まともに診療してくれないと,遠方から当センターを尋ねてくる患者さんが多くみられる.

その理由として,外科医は手術が中心で,それ以外に時間を費やすことが困難なこと,また単純な分野のようで,実は専門的にも難しく,とっつきにくい感があること,そして何より行動療法などの排泄リハビリテーション(リハ)をいくら行っても診療報酬が全く得られなかったことが関連しているのであろう.また同様の理由で,看護師,理学療法士,作業療法士などのメディカルスタッフが,排泄の診療に携わるシステムがなかったことも大きい.

しかし,最近では排泄(特に排尿)を中心とした種々の基礎研究や臨床研究が行われ,排泄リハを専門とする医師が増加してきた.この背景には排泄に関する多数の医薬品,医療機器の開発,排泄に関連する新規治療法,とくに仙骨神経刺激療法やボトックスなどの手術療法が保険適用になったことなどがある.加えて2016年度や2020年度の診療報酬改定における排尿自立指導料関連の保険収載も,メディカルスタッフが共同で排泄リハを行うようになったことの要因となっている.

本書は,2009年に発刊された初版における「排泄に関するすべてのことが網羅され,辞書的な役目を果たす」という狙いを継承し,ガイドラインに沿った新たなエビデンスなどを盛り込んで改訂がなされている.第I部,第Ⅱ部の基礎編では,疫学,解剖,生理といった専門的な知見が分かりやすい図を用いて解説され,第Ⅲ部の実際の排泄リハ編では,用語の定義,原因疾患,アセスメント(種々の機能検査法),そして実際の治療・ケアについて,詳細な記載がある.さらには,おむつから医療機器まで排泄障害に用いる製品の最新の情報も網羅されている.

この分野の成書の多くが,排尿または排便機能に分かれて記載されており,まさにこの1冊で排泄のすべてが把握できる本書は稀である.そのうえ,医師,看護師,理学療法士,作業療法士等の医療職のどなたもが(専門職のみでなく専門外も含め)理解できるような記述によって,それぞれの専門や職域からの考えや対応が明らかにされている.本書は,医療者間の相互理解を深めることもできる排泄リハの総合専門書として,大いに役立つであろう.