理学療法ジャーナル Vol.54 No.12(2020年12月号)「書評」より
評者:長倉裕二(大阪人間科学大学)
装具は疾患や病期においてエビデンス推奨グレードにおいて評価されていることもあり,理学療法の分野では介入手段として必須アイテムとなってきている.今回,『15レクチャーシリーズ理学療法テキスト 装具学』(中山書店)は第2版となり,ページ数も増加し,内容も充実してきている.
第1版と比較して基本的な章立てなどは大きく変わっていないが,今までのモノクロではわかりにくかった画像やイラストをカラーに置き換えることによって詳細な構造を鮮明にしているところは,学修する学生にとっても科目担当者にとっても利用しやすいものとなっている.装具部品は現物を見てもどのように機能するのかわかりにくいものも多く,新しい装具が出る度に知識もアップデートしていかなければならないため,教科書を改訂する側として悩ましい部分でもある.しかし画像情報を詳細にすることで理解しやすくなると考える.また最近では国家試験でも実際の装具の画像を用いた問題もあることから,画像として理解することは重要であると考える.
第2版では,歩行支援や介護支援などのロボット関連も一部導入されており,これからの装具の分野にも工学的な部分が大きく関与していくことが予測されるため重要な項目であると考える.従来の装具学関連の教科書や参考書の多くは,理学療法士だけでなく義肢装具士や医師も対象に含まれていたが,この「15レクチャーシリーズ」は理学療法士の養成課程を対象に書かれており,理学療法士にとってはわかりやすいテキストと考える.理学療法士が行う介入方法や理学療法士が臨床現場で対面する事象なども記されており,その対処方法や考え方などについても評価すべきところだと考える.第1版では「教科書には載っているが実際の臨床現場では利用されていない装具」などが紹介されていたが,第2版では現在利用されている装具を中心に整理されており,臨床現場においても利用しやすくなっている.しかし装具の利用に関しては地域や施設,製作業者によって利用装具や頻度に差が生じてくるため,一般的に利用されている装具の基準が定めにくいところでもある.
15回の講義コマ数で具体的に何をこのコマで学ぶのか,目的が明記されていることで学修に集中できることがこのシリーズのポイントだと考える. また第7レクチャーの「下肢装具のチェックアウト─実習」は見落しがちな部分も網羅され,臨床において優先的に理学療法士が行うチェックポイントとして学生にわかりやすく,臨床実習に結びつけやすいと考える.しかし,養成校によっては演習系などの義肢装具学の授業として30コマを設定しているところもあり,今後,実技内容のバリエーションを増やすことで教育現場での利用価値が高くなると考える.