若手医師にぜひ勧めたい教科書
LiSA VOL.22 NO.05 Medical Books 自薦・他薦より
評者:鈴木孝浩(日本大学医学部麻酔科学系麻酔科学分野主任教授)
自分が専門とする研究分野の大先輩である天木嘉清先生が編者を務めている本書について,私のような不勉強な若輩者が書評を書いてよいものか…悩んだが,初版時からの愛読者の一人として,素直な感想を述べることにした。
改訂第2版は,クールなブルーを基調にした表紙で,書店に並べば真っ先に目に入り,手に取りたくなる装丁となっている。洒脱でセンスのよい近藤一郎先生のセレクトと拝察する。ページをめくると,やはり青空色がアクセントとなり,端的な視覚効果を生み出し,自然に内容に傾注できる。
初版は,学生や研修医教育だけでなく,自身の知識整理のためにも実によく読んだ。当時,タイトルの「見て」に非常にインパクトを受けたものだ。麻酔の教科書であるから,私のような凡庸な者であれば「読んで学ぶ」と想定しがちであるが,本書は対象を研修医,学生そして看護師に絞り,目を引く図表を駆使して麻酔の基礎的および臨床的重要点を「見て意識づけ,そして考える」仕組みを特徴としている点で,他書とは一線を画している。
もちろん内容構成も秀逸で,麻酔を実践するに当たって知っておくべき基本事項はすべて網羅されており,麻酔の実際の手順から,薬物,モニタリング,偶発症,各科別の麻酔,特殊疾患を合併している患者の麻酔などについて,的確に解説されている。最近,新たに麻酔科医に求められている手技である,超音波ガイド下神経ブロック手技も第2版には収録されており,本書のコンセプトどおり「見て」わかりやすい写真や図によって,寸時のうちに腹に落ちる。
麻酔のみならず,集中治療,心肺蘇生法,ペインクリニックに至るまで,各分野に長けた執筆陣がそれぞれの力を発揮した本書は,編集された両先生の麻酔科医教育に対する情熱,気概が込められた一冊である。若手医師には是非「見て考えて学ぶ」ように勧めたい一冊である。