診断・診療アルゴリズムがフローチャートで示され,しかも随所に図表が多用されており,視覚的かつ系統的に理解しやすい
内科 Vol.114 No.5(2014年11月号) Book Review
書評者:瀧山嘉久(山梨大学大学院医学工学総合研究部神経内科学講座教授)
本書は,「主訴」と「症候」から始まり,実際の神経内科診療の過程がわかりやすく記載され,初期研修医,専修医,神経内科専門医を目指す若手医師の神経内科診療の実践に役立つように意図されてつくられている.
きわめて広い守備範囲をもつ神経内科が取り扱う疾患について,診断・診療アルゴリズムがフローチャートで示され,しかも随所に図表が多用されており,視覚的かつ系統的に理解しやすい.若手医師が神経内科の勉強を始める際に,抵抗感なく自然に入り込める入門書として最適である.
「診断のコツ」と「治療のポイント」の二部構成で,「診断のコツ」では,日常診療で遭遇することの多い「呼びかけても反応しない」,「手足がけいれんする」,「頭がいたい」,「めまいがする」,「力がはいらない」など15種類の「主訴」について,病歴聴取のポイントと一般身体所見・神経学的所見の具体的な取り方,鑑別診断のために必要な検査,見逃してはいけない疾患が詳細に書かれている.「治療のポイント」では,「脳血管障害」,「認知症」,「パーキンソン病関連疾患」,「脊髄小脳変性症」,「神経免疫疾患」など代表的な神経内科的疾患に関して,基本的治療の内容が具体的に示されている.
若手医師が当直や外来などですぐに疾患を鑑別したいときに,いわゆるポケットマニュアルのように使うには,若干内容が盛りだくさんすぎるかもしれない.しかし,神経内科的疾患を解剖学的病態も含めて包括的に理解できる利点がある.さらに,神経内科の研修を楽しく充実したものにしてほしいという編者と執筆者の優しさが,「Point」,「予備知識」,「Red flags sign」,「key word」,「MEMO」として随所にあふれている.
本書は,若手医師には,ともすれば難解で敬遠されがちな神経内科に親しみをもたせて,その面白さを伝えてくれるに違いない.