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小児科臨床ピクシス 14 睡眠関連病態

小児科臨床ピクシス 14 睡眠関連病態 published on

国際分類に沿った各疾患別解説のほか豊富な内容で「睡眠」をイチから学べる

日本医事新報 No.4549(2011年7月2日)BOOK REVIEW 書評より

評者:小沢浩(島田療育センター医務部長)

人生の約3分の1は睡眠である。本来,睡眠とは,健康の維持や健全な生活を営むために人類に与えられた“当然の生理現象”であった。しかし現代においては,テレビ・ビデオ・インターネット・深夜の仕事・喫煙や飲酒など,不適切な睡眠衛生環境により,睡眠が妨げられている。これは,いわば「睡眠の逆襲」である。この「逆襲」に対し,医療はあまりにも無力であった。しかし,我々は「睡眠」に立ち向かうための最大の武器を得た。それが,本書なのである。

本書は,「睡眠機構の基礎」「睡眠の加齢変化」「睡眠の評価」「小児でよく見る睡眠関連病態」「トピックス」「症例」,そして終章という順に構成されている。本書を開いてみると,まず序において,sleep disordersの訳を「睡眠関連病態」とした理由(睡眠不足症候群や不適切な睡眠衛生など,生じて当然であるはずの眠気のなさが症状となる疾患も包括するため)のいきさつが紹介されている。このことからも,編者の神山 潤先生の睡眠に対する強い想いを感じることができる。

ページを進めていくと,2005年に改定された睡眠関連疾患国際分類第2版(ICSD-2)も解説されている。その和訳案を掲載している本は未だ少なく,その意味でも本書は貴重である。

最後に,神山先生は失同調という概念を提唱している。失同調とは,「夜間の受光がきっかけとなって,生体時計の機能低下,セロトニン活性の低下,メラトニンの分泌抑制などがかかわり悪循環を形成し,回復が困難な病態」である。この概念の提唱は,social jet lag(社会的時差ぼけ状態)を改善し,規則正しい生活リズムを形成していこうという神山先生からの強烈なメッセージである。この当たり前のことを,我々医療者,いや社会全体が忘れてしまっている。「睡眠の逆襲」には,睡眠を知り,そして寄り添うことが一番大切なのである。必読の1冊である。