小児専門病院で活躍している看護師が日頃の経験や知識を織り込んだ実践向けの内容
小児看護 Vol.36 No.2(2013年2月号) 書評より
評者:及川郁子(聖路加看護大学小児看護学)
子どものスキンケアは,表面上よくなったように見えても,しっかり行っていないとすぐに悪くなってしまうことをよく経験します。なぜそうなのか,しっかりケアするにはどうしたらよいのか,そんな日常のケアに応えてくれるのが本書です。
本書は,小児専門病院で活躍している看護師たちによって日頃の経験や知識を織り込んだ実践向けの内容であり,私たちが日常の臨床で遭遇する子どもの皮膚トラブルとそのケアについて書かれています。その内容は,大きく3つに分けることができます。1つ目は,皮膚の構造や創傷後の治癒過程,皮膚症状の見方など基本的な知識の確認です。2つ目は,おむつケア,褥瘡ケア,ストーマケア,瘻孔のスキンケアなど,子どもたちに関わる看護師であれば知っておいてほしい(知っていなければならない)スキンケアについてです。そして,3つ目は,特別な治療に伴って起こる皮膚障害へのケアについてです。
これらの皮膚トラブルを予防・治療するためのポイントが,最初に明確に述べられています。「みずみずしく見える子どもの皮膚は新生児を過ぎたあとから皮脂が減少し,思春期までは乾燥肌である。皮膚のバリア機能を維持するうえで必要なケアが洗浄・清潔,保湿,保護である」と。どのような皮膚トラブルであったとしても子どもの皮膚の特徴を理解し,それぞれの発生機序がわかれば,未然に予防することや,早期に適切なスキンケアを行うことができるのです。
本書の特徴を上げてみますと,①タイトルにもありますように,ビジュアルであることです。オールカラーで写真やイラストが多く,皮膚の状態やケア方法,使用する薬剤や材料がはっきりわかります,②ところどころで注意喚起がなされており,ハッとしたり,うなずいたり,すぐに役立つ内容ばかりです,③この1冊で,日常の臨床で遭遇する子どもの皮膚トラブルの基本的知識を得ることができます,④急性状況のみならず,長期的管理も意識して記載されています,⑤ベッドサイドに置いてあれば,どうしてこのようなケアをするのか,お世話をする保護者の方々とのコミュニケーション手段となり,保護者の方のケア能力の向上にも一役買うでしょう。
もちろん,皮膚トラブルがこれですべて解決されるわけではありませんし,スキンケアの方法も変化してきています。もしかしたら読者の方の中には異なった方法でうまく解決されている方もいるかもしれません。どのようなスキンケアが最適か,本書を通しながらエビデンスを出していくことも,実践家の役割ではないでしょうか。