忙しい臨床の場において通読する必要なく即座に利用できる構成もありがたい
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 Vol.86 No.3(2014年3月号) 書評
書評者:内藤健晴(藤田保健衛生大学耳鼻咽喉科)
今般,川内秀之先生(島根大学)の専門編集による《ENT臨床フロンティア》シリーズの『風邪症候群と関連疾患―そのすべてを知ろう』の書評を依頼され,当初は気軽に引き受けたものの実際,本書を目の当りにして,これはただならぬ本であることに気づき,最後にはこの本があれば日本の風邪症候群(感冒)の現状についてすべてがわかる,臨床家にとって「座右の書」であることを確信した。
新患として医療機関を受診する動機としておそらく最も高頻度な疾患が風邪症候群であろうと思われるが,これについてこれほど完成度の高い成書を見たことは過去になかった。川内先生も序のなかで「耳鼻咽喉科の医師のみならず,他科の医師,研修医,学生の皆さんにも重宝していただける内容と思う」と書かれているが,まさに本書は風邪症候群のencyclopediaといえる。しかもタイトルに関連疾患と記載されているように感冒患者を診て,類似する関連疾患あるいは重大な帰結を引き起こしかねない合併症についても含まれており,実地臨床に本当に役立つものである。また,治療法もそれぞれの状態によるものが実際的に示されており,その上,遷延した状況の対応まで内容が及んでいる。
全巻を通して適所に「Advice」,「ポイント」が示されており,忙しい臨床の場において通読する必要なく即座に利用できる構成もありがたい。またコラム「Salon de Festina lente」が随所にちりばめられており,風邪症候群に関する大切な雑学を多く学べるのも楽しい。さらに,本書の中にはカラーの図や表が多いのも理解を容易にするのに極めて役に立っている。これも川内先生の企画力の高さの賜物であろうと思われる。
このように記載してきたように,本書は多くの臨床家,医学部学生に本当に役立つ数少ない成書の1つであることは間違いのないことであるので,自信を持って推奨するものである。