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内科学書 改訂第8版

内科学書 改訂第8版 published on

当代の全ユーザー層にフレンドリーな良書

レジデントノート Vol.16 No.1(2014年4月号) 書評

書評者:能登洋(国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝・内分泌科 医長,東京医科歯科大学 医学部 臨床教授)

「当代の全ユーザー層にフレンドリーな良書」
書籍がその内容を有効に伝えるためには,内容だけでなく伝達媒体も重要である.本書はこの両者において秀でた良書である.特に現代医療においては電子媒体の重要性が大きいが,PDF版とPDA(Personal Digital Assistant)版が充実している点は他に類を見ない.
まず,学生や研修医の視点も含んだ記載が豊富であることが目を引く.著者からの一方的な情報の展観ではなく読者の立場を考慮した解説なので読んでいて分かりやすいし,教育の立場にある人にとっても指導に役立つ.
次に特記すべきは,絨毯爆撃的検査や最新治療がもてはやされる目本の医療において,今回の改訂で臨床における判断の項が新設されたことである.診断過程においては,主訴と症状・所見から鑑別診断を挙げて検査で絞り込んでいくプロセスをとらずに検査にとびついたのでは誤診(見落とし・過剰診断)が増え,効果と安全性が確立していないような診療方針では患者の予後改善に結びつく可能性が低い.EBMを実践する際には,エビデンスだけあれば十分というのではなく,このような臨床判断力が必須である.本書は紙媒体を母体とした数年ごとの改訂書籍であるため,引用されているエビデンスは最新のものとは限らないことには気をつけなければならないがエビデンスを読解し活用するための教科書としては適役である.
近年,医療においても電子化が急速に進展しており,私は講演や講義ではスマートフォンから無線でスライド映写やポインター操作をしている.一方,ノートパソコンやタブレットでノートをとる聴講者や学生も増えてきている.本書は全編がそのままPDFとしてダウンロードできるため,CD/DVDドライブを内蔵していない薄型ノートパソコンやタブレットでも閲覧できる.また,PDA版(別売り)をスマートフォンで使用することもできる.紙媒体を好むユーザーにも電子媒体を活用するユーザーにも汎用性や機動性が高いのが嬉しい.ちなみにこのような普及ツールの充実は,EBM(特に診療ガイドライン)実践における国際的な評価点の一つにもなっている.
本書があらゆる立場の人に有効かつ効率的に活用されることを期待している.


学生だけでなく研修医にとっても最適の書

Medical Tribune 2013年12月26日号 本の広場より

内科学テキストとして第8版を重ねるロングセラー。詳細な病態の理解や症状の説明,さらにメジャー疾患の解説が充実している。全6冊に別巻付きのボリュームも最大となっており,学生だけでなく研修医にとっても最適の書といえる。
疾患の説明は,現象面にとどまらず機序から逐一解説され,診断ポイントも明示。例えばメジャー疾患の結核では,概念や徴候,医療面接のポイント,診断・検査,診断後の処置,治療に項目を分けて詳細に解説。感染症の中の,例えばアデノウイルス感染症という一分野を取り上げ,概念や病因,疫学,臨床症状,診断・治癒という項目に分けて詳述している。
分冊のため1冊が薄く,研修の場に持ち込むことも容易である。しかも,分冊でなければその疾患だけに説明が限られてしまう欠点があるが,本書では他領域の学際領域にまで踏み込み,同じ疾患でも臓器ごとの説明が付いている。
医師国家試験に出題されやすい問題の解説が豊富で,しかも全ページのPDFデータがダウンロードできるアクセス権が特典で付いている。3,000ページ分のデータをタブレットに入れれば,いつでもどこでも閲覧が可能になる。

内科学書 改訂第7版

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完成度の高い内科学のテキスト 医学生にも研修医にも臨床医にも活用していただきたい1冊

レジデントノート Vol.12 No.3(5月号) BOOK REVIEWより

評者:野村英樹(金沢大学附属病院総合診療部)

多くの臨床医の学習はアメーバのようなものである.次々と新しい疾患概念が提唱され,診断法が発達し,治療法が開発されていくなかで,とりあえず必要とされる方向に知識を伸ばしていく.使われた知識は定着するが,使われない知識は退縮する.いつの間にか,縮んではいけないところまで縮んでいるのではないかとも思う.臨床医の知識には本来,もっとしっかりした骨格が必要なのだ.

医学知識の骨格は,EBM全盛の時代にあってもなお,病態生理である.どういうメカニズムで疾患が生じているのか,なぜその疾患ではそのような所見を認めるのか,なぜその疾患にはこの薬剤が効くのか.しっかりとした病態生理の骨格の上に肉付けされた知識は,本当に必要なときに活かされる.およそ医学のテキストというものには,このような知識の骨格を作る力が何よりも求められているのではないだろうか.

本書は,その意味で非常に完成度の高い内科学のテキストである.もともと内科学のスタンダードテキストとしてその読みやすさや内容のムラのなさに定評があった同書であるが,今回の改定から参加された塩澤昌英氏の「編集協力」の力も大きかったのではないかと私は推察している.国家試験を控えた医学生でこの方のお世話になっていない人はいないと思われるが,実は塩澤先生は,「Dr.一茶」として知られるカリスマ国試予備校講師である.筆者は米国Wisconsin大学でラットの腎不全感受性遺伝子の研究をなさっておられた頃に塩澤先生と知り合ったが,当時から太平洋をまたにかけて国試予備校講師の仕事も引き受けておられた.先生が研究にかけておられた情熱と同じように,教育にも熱い想いを語っておられたことをよく覚えている.実は,医学の学習における病態生理の重要性は,そのときに塩澤先生から教わったのである.

医学生の皆さんには,ぜひ本書を活用して,まずは脊椎動物のようなしっかりした内科学の骨格を身につけてほしい.また研修医の皆さんには,臨床現場で新たな経験をするたびに本書を見直し,国家試験までに作り上げた基本骨格を,現場で求められるさまざまな動きに対応できるしなやかな骨格へと成長させていただきたい.そしてもちろん,私を含めた臨床医も,筋力(エビデンス)だけに頼っていたらいつの間にか筋肉を支える骨格が多発骨折をきたしていたなどということのないよう,本書を活用して骨粗鬆症を予防していきたいと願っている.