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ENT臨床フロンティア めまいを見分ける・治療する

ENT臨床フロンティア めまいを見分ける・治療する published on

めまいという多くの科に関連のある疾患を対象とする医師にとって推薦の書

JOHNS Vol.29 No.3(2013年3月増大号) 書評より

評者:小松崎篤(東京医科歯科大学名誉教授)

このたび,内藤泰先生専門編集の『めまいを見分ける・治療する』を通読する機会があった。
めまいに関するこの種の著書は現在まで数多く出版されているが,その大部分は従来の教科書のごとく解剖,検査,疾患等の順に配列されているか,それに準じた記載となっている。めまいを専門にしている医師であれば,その内容を取捨選択して把握するのにさほど困難はないが,一般医にとっては必ずしも容易なことではない。その理由として20世紀後半から現在まで「めまい」の解剖,生理さらにその臨床応用としての機能検査が聴覚系とともに飛躍的に進歩してめまいの病態解明に大きく貢献しているが,それは同時に読者にとって十分理解することがより困難になっていることも意味している。一方,症状としてのめまいは一般臨床の場では頭痛や腹痛などと同様しばしば遭遇するが,病態背景が簡単な疾患から生命の予後に関する疾患まであり,臨床の現場で目の前にいる患者が自然治癒の傾向を持つ疾患なのか,重要な背景を持つ患者なのかを判断しなければならない。そこに本書のタイトルでもある「めまいを見分ける」ことの大切さがある。
本書はその「シリーズ刊行にあたって」でも書かれているごとく「臨床にすぐに役立つような実践的なものとし」を忠実に踏襲して編纂されていることが大きな特徴である。それを考えるとおのずと広い意味でのQ&Aの方式をとるのが実践的で本書にもそのような配慮がみられ,それがまた本書の特徴にもなっている。内容は,「めまいの見分け方」,「めまいの検査法」,「さまざまなめまいの鑑別と治療方針」,「めまいの治療法」の4章からなっている。
第1章「めまいの見分け方」はいわば問診に当たるところである。めまいの診断にはとくに問診が重要で,問診を詳細に聴取することによりそれのみでも疾患を大きく絞り込むことができるので,めまいの内容,持続時間,随伴症状の問診におけるポイントが的確に記載されており,そのことは第2章の検査をいかに要領よく行うかにも大きく関係してくることになる。
第2章「めまいの検査法」では眼振,眼球運動異常の病巣局在診断的意義は大きいが,一般検査の重要度も適切な記載となっている。また本章ではVEMPなど比較的新しい検査法がどのような意味を持つかも書かれている。
第3章ではわれわれ耳鼻咽喉科医が比較的遭遇しやすい疾患にについて最新の知見も含めて過不足なく記載されている。耳鼻咽喉科医としてめまいの診療に当たる場合には当然のことながら内耳疾患のみならずめまいを発症させるそれ以外の病態についても必要最小限の知識は必要であり,それらについての配慮もこの章ではなされている。
めまいは診断ができても治療がないのではないかとはよく聞かれることであるが,第4章では薬物療法のみならず,疾患によって異なる理学療法や近年発達してきている有酸素療法なども書かれている。また,頻度は必ずしも多くはないがQOLを大きく損じる末梢性めまいについては最終的に手術療法があることも患者の診療を日常行う医師にとっては重要な手助けとなっていることも事実であろう。
以上,述べてきたように本書は日常めまいの臨床の場に立っている医師にとっては疑問を解決する上で役立つ書であり,めまいという多くの科に関連のある疾患を対象とする医師にとって推薦の書ということができる。

ENT臨床フロンティア 急性難聴の鑑別とその対処

ENT臨床フロンティア 急性難聴の鑑別とその対処 published on

どのページを開いても見るのが楽しく,各項目ともに一気に読み終えることができる

ENTONI No.150(2013年2月号) Book Reviewより

評者:土井勝美(近畿大学医学部耳鼻咽喉科教授)

「ENT臨床フロンティア」シリーズ(中山書店)は,耳鼻咽喉科の日常診療に直結する10テーマについて,それぞれの領域の第一人者の先生が,現場のニーズにきめ細かく応えることができるよう,日常診療で本当に必要な知識・技術を厳選して,より実践的で臨床医にも読みやすく理解しやすい内容に専門編集を行う新企画である.『実践的耳鼻咽喉科検査法』(専門編集:小林俊光先生),『耳鼻咽喉科の外来処置・外来小手術』(同:浦野正美先生)に続いて,この度,高橋晴雄先生(長崎大学教授)が専門編集を担当された『急性難聴の鑑別とその対処』が同シリーズ第3弾として出版された.
人のQOL維持に密接に関連する「感覚器」の障害は,耳鼻咽喉科医が取り扱うさまざまな病態の中でも極めて重要な領域の一つであり,特に聴覚は,人と人,人と社会を結びつける「言語」の表出・理解に必要不可欠な感覚系である.突然の聴覚障害(急性難聴)の発症により,人は他者との正常なコミュニケーション能力を失い,QOLの面でも精神面でも大きなハンディキャップを背負わされることになる.
ここ最近,新しい聴覚検査装置の導入,遺伝子診断やプロテオーム解析の進歩,そしてより高精度の画像診断技術の開発があり,急性難聴の診断には大きな進展が見られた.新しい診断法の開発とともに,上半規管裂隙症候群や前庭水管拡大症など新しい疾患の概念が確立され,同時に,突発性難聴,メニエール病,あるいは外リンパ瘻などの旧知の疾患の中にいくつかの異なった病態が混在していることも明らかになってきた.また,診断の進歩に歩調を合わせるように,新しい治療法の開発・導入も進められてきた.
本書では,それらの最新の知見をコラムやトピックスの形で盛り込みながら,さらに,多数の写真,図表,診断のフローチャートを散りばめることで,視覚的に美しい,心和むページが本書の大部分を占めるという,極めて印象的な装本に仕上がっている.最初から最後まで,どのページを開いても見るのが楽しく,各項目ともに一気に読み終えることができる.同時に,第一線でご活躍中の執筆陣が強調する重要ポイントは,瞬時に頭の中に入る仕組みになっている.
「急性難聴の鑑別とその対処」というテーマに沿って,まずは急性難聴の定義を明確にした上で,問診や鼓膜所見などを正確に取り,一般診療施設にある最小限の検査機器を用いて検査を行い,それらの所見を総合的に判断すれば,どこまで正確に急性難聴の診断ができるかという視点から,前半の総論部分がまとめられている.病歴と随伴症状,難聴の経過を確認し,鼓膜を詳細に観察した後,聴覚検査と画像検査を進めることになるが,検査を正しく遂行するためのコツが示され,日常診療において大いに役立つ「実践重視」の内容になっている.
中枢疾患,全身疾患,および悪性腫瘍を病態とする「危険な急性難聴」,「緊急性のある急性難聴」について触れた後,後半の各論部分では,急性難聴を呈する代表的な中耳・内耳・側頭骨疾患について,その診断と治療,内科治療と外科治療の適応,予後判定や再発防止,早期診断の重要性など,各疾患を取り扱う際に最も重要となるポイントに絞った丁寧な解説が,豊富な視党情報とともに呈示されている.病診連携や最近の医療情勢の変化にも鑑み,「インフォームドコンセントの実際」,「最適のプライマリケア」,「患者への説明用書類実例集」,「患者への説明用イラスト」などの内容が充実していることも,従来の教科書では見られなかった特筆すべき点である.「治療医学」から「予防医学」への流れを受けて,いくつかの疾患ではその予防法・再発防止法にも十分なページが割かれている.
本書は,専門編集を担当された高橋晴雄先生の斬新なコンセプトにより,学術面でも,装丁・装本のデザイン面でもこれまでに類を見ない魅力的な教科書に仕上がっていることから,耳鼻咽喉科診療の最前線でご活躍の勤務医や実地医家はもちろん,耳鼻咽喉科専門医を目指す研修医にも,明日からの日常診療の場で広く活用できものと確信している.

ENT臨床フロンティア 耳鼻咽喉科の外来処置・外来小手術

ENT臨床フロンティア 耳鼻咽喉科の外来処置・外来小手術 published on

十分な知識と技術を持った耳鼻咽喉科医の視点で実践的な処置と手術の手技・ポイント,コツが編集,掲載された書

ENTONI No.146(2012年10月) BookReviewより

評者:村上信五(名古屋市立大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学)

耳鼻咽喉科領域の日常診療をサポートする書物は数多く出版されているが,実践的で本当に役立つのはどのような書であろうか.それは,写真やイラストが鮮明で簡潔・明瞭に解説されている書である.そのような書は,本文を精読することなく写真やイラスト,フローチャートとその解説文を読むだけで処置や手術のポイント,コツが理解でき,実践を鼓舞させるのである.この度,中山書店から《ENT臨床フロンティア》シリーズの一環として『耳鼻咽喉科の外来処置・外来小手術』が新刊されたが,本書はまさにそのすべてを備えた書である.
本書の編集者は,大学と基幹病院に長年勤務し,多くの処置や手術を経験し,開業したのちも医院外来や連携病院で手術を継続されている浦野正美先生である.そして,分筆者も大学病院や市中基幹病院,あるいは診療所で精力的に活躍されている各領域のエキスパートであるが,忙しい日常診療において,かくも鮮明で適切な局所写真を収集していることに敬服させられる.まさに,十分な知識と技術を持った耳鼻咽喉科医の視点で実践的な処置と手術の手技・ポイント,コツが編集,掲載された書と言える.
耳鼻咽喉科診療において処置,検査,手術は最も重要な部分である.特に本書で採り上げている処置や手術は,直接治療の成否に関わることから,患者の信頼を得たり,円滑なコミュニケーションを行う上でも重要である.また,処置や手術を施行する際には器具や医療材料の選択も重要である。本書では各執筆者自身が愛用している器具や医療材料が紹介されており,大変興味深くまた参考になる.そして,処置や外来手術は大半が無麻酔あるいは局所麻酔で施行されるが,最近,痛みに対して敏感な患者が欧米並に増えており,処置や手術をペインレスに実施することも重要な課題で腕の見せ所でもある.それに関しても,本書には噴霧や浸潤による粘膜,局所麻酔の手技やコツが写真とイラストで詳細に記載されており大変参考になる.また,処置や手術においては合併症や副損傷の予防や対応も重要であるが,それらに関しても要所要所で注意事項と対処法が記載され,安心して処置や手術が施行できる.

日常診療で処置や手術を実践するにあたっては,それらの必要性と効果,有害事象を説明して患者・家族からインフォームドコンセントを得るとこは重要であり,特に手術においては小手術といえども必須事項になっている.本書の最終項にはそれぞれの分野のエキスパートが処置や手術における患者への説明文書を紹介するとともに,疾患の病態や解剖を説明するための分かり易いシェーマが掲載されており,大変有用である.編集者の実践的できめ細かな配慮が伺える.
本書のもうひとつの特徴は,本文中にAdvice,Column,Topicsの欄を挿入していることである.Adviceにはちょっとした知識やコツを,Columnには知っておくべき一般知識が丁寧に解説され,また,Topicsには最先端の情報が掲載されており,診察の合間やCoffee breakの際に読むと楽しい.
本書を総評すると,実践的で分かり易く,しかも楽しんで学べる書で,外来診療の傍らに置くにふさわしい一冊と言える.


テーマの選択がユニークで極めてビジュアルな成書

JOHNS Vol.28 No.9(2012年9月増大号) 書評より

評者:峯田周幸(浜松医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室)

ENT耳鼻咽喉科臨床フロンティア『耳鼻咽喉科の外来処置・外来小手術』のページを開いて,まず思うところは,テーマの選択がユニークであることです。「耳介血腫の取り扱い方」がはじめの項目です。今までの成書にはない選択であり,エッと思ったら耳垢栓塞,鼓室処置,耳管処置など次から次へと意外感をもつ構成になっております。鼻に移っても,鼻処置・副鼻腔自然口開大処置のコツと興味津々の内容が続きます。予想がつかないラインアップの連続になっています。
実際に開いてみると,ふんだんに取り入れられている写真と絵の多さに驚きます。解剖の絵から実際に処置や手術をされているところまで,あますところなく挿入されていて,極めてビジュアルな成書になっています。ここまで視覚にこだわってくると,次のテーマではどうか一気にページをめくってしまいます。文章も極めて平易に記載され,かつポイントごとにまとめているので大変理解しやすく,短時間で読みすすめてしまいます。
章末にあげられている文献のリストは最新のものを中心に,適切な量と内容で,より深い理解を得るのに手助けになることも嬉しくなります。項目も多数あり,器具の滅菌から保管方法まであります。今まで気がつかなかった領域までカバーされていて,読者にとっては嬉しい限りです。
また,本文とは別に,最新の話題を深く述べたColumnやTopics,臨床のコツを伝えるAdviceも有益で,すぐに役立つものになっています。
当然ながらこの成書は外来小手術に多数の項目が費やされています。私どもの勤務医にしてみると,安易に全身麻酔にして手術場でおこなっています。しかし麻酔医がいない場合,あるいは全身麻酔をかけるにはリスクが大きい場合には,局所麻酔は有効な手段です。本書では局所麻酔の仕方を懇切丁寧に説明されていて,明日からの外来にすぐに役立つようになっております。
また,手術器具,手術の方法,さらに術後の処置にいたるまで,記載されています。実地医療に役立つというだけでなく,若手医師や専門医にとっても多くの知識としてあるいは技術習得として知っておかなければならないものであります。この時代だからこそ,原点に返って耳鼻咽喉科診療の基本を書き留めておくことが大切なのだと思い知らされました。
巻末の説明実例集や絵はそのまま臨床に使えるものです。耳介血腫から気管切開まで16項目の実例集があり,多くの外来診療をカバーするものとなっています。この本をきっかけに他のシリーズの本も手にとって見たくなる先生方も大勢いると思われます。まずは自分の気に入ったところから読み始めるのがいいでしょう。必ず次のテーマに読み進めてみたくなります。他の成書にない魅力がこの本にはあります。編集者や筆者の方々の意志が強く伝わってきます。研修医,専門医,開業医のいずれの先生方に読んでもらっても意義のある一冊となっています。


体系化された教科書よりも実践的で、多忙な臨床医でも読みやすい

全医協連ニュース(JMC NEWS) No.125 蒼翠号(2012年7月号) 書籍紹介より

浦野正美(浦野耳鼻咽喉科医院理事長)

このたび、中山書店から《ENT臨床フロンティア》シリーズが刊行されました。この企画は耳鼻咽喉科の日常診療に直結するテーマに絞った、全10巻のユニークなシリーズです。従来の体系化された教科書よりも実践的で、多忙な臨床医でも読みやすく、日常診療の中で本当に必要と考えられる項目のみが、わかりやすく解説されています。今回、『耳鼻咽喉科の外来処置・外来小手術』、『実戦的耳鼻咽喉科検査法』の2冊が同時に出ています。
『耳鼻咽喉科の外来処置・外来小手術』では、耳鼻咽喉科の一般的な診療所で行われる外来処置・小手術にテーマを絞り、第一線ですぐに役立つよう実践的・実用的に解説してあります。各手技の要諦を簡潔に示し、かつ写真やイラストレーションを豊富に用い、視覚的に理解しやすい構成となっています。巻末にはインフォームドコンセントに際して利用できる説明文例やイラスト集も収載されています。ベテラン専門医の座右の書となるとともに、これから耳鼻咽喉科専門医をめざす研修医にも大いに役立つ技術指南書になるものと思います。
また『実戦的耳鼻咽喉科検査法』では、超多忙な耳鼻咽喉科医が時間をかけずに正しく診断して、最適な治療方針を決定するための検査法を厳選して解説してあります。大がかりな装備を必要とせず、被検者の負担も少ない検査法を実戦的に使いこなすための1冊です。
この《ENT臨床フロンティア》シリーズは、ほぼ2~3か月に1冊のペースで刊行される予定です。全10冊をまとめて予約すると予価の10%引きになる特典もありますので、ぜひ、ご一読ください。

ENT臨床フロンティア 実戦的耳鼻咽喉科検査法

ENT臨床フロンティア 実戦的耳鼻咽喉科検査法 published on

まさに実戦的な仕様になった書籍

耳鼻咽喉科・頭頸部外科 Vol.84 No.10(2012年9月号) 書評より

評者:高橋姿(新潟大学医学部耳鼻咽喉科教室教授)

本書『実戦的耳鼻咽喉科検査法』は,タイトルが示す通りの,まさに実戦的な仕様になった書籍である。一口に耳鼻咽喉科検査法と言っても,耳鼻咽喉科・頭頸部外科で扱う臓器・組織は多彩であり,聴覚・平衡・嗅覚の感覚器から鼻腔・咽頭の呼吸器,口腔・咽頭・喉頭・気管へ続く消化器がある。さらには顔面神経,三叉神経,舌咽・舌下神経などの脳神経,唾液腺や甲状腺ならびに頸部の疾患も対象となる。それらのすべての領域の検査法を網羅した成書は多数あるが,非常に厚くて重いものや,分冊となって取り扱いも不便であり,多忙な日常診療にあっては実用的な書物とは言い難い。
専門編集者の小林俊光教授は,「序」において,「超多忙な耳鼻咽喉科開業医や第一線の勤務医の先生方に役立つ」ために,「①手間暇がかからず,②大がかりな装備を必要とせず,③被験者の負担も少ない検査法に重点を」置いたと記している。その結果,数多の検査法の中から絞り込まれた項目が,従来とは異なる序列に記載されることになったと思われる。検査法の選択には,単に臨床現場での使用頻度だけでなく,鑑別診断における重要性も加味されている。
気づいた点を列挙する。まず,第1章がCT,MRIの画像診断から始まり,複雑といわれる耳鼻咽喉科領域の正常解剖を解説している。次いでX線検査,さらに内視鏡診断に続く。また,内視鏡診断では「良性疾患,とくに小児における利用法」として,検査時に協力が得られづらい,正確な所見を取るのが困難な小児の内視鏡検査法を単独に取り上げている。
耳管機能検査の良否は,鼓室形成術の成否を左右するほど重要である。しかし,従来はそれほど大きく扱われることはなかった。本書では,鼓膜形成術の術前検査としての耳管機能検査を詳しく解説し,耳科手術への適応の考え方を具体的に述べている。
第5章の聴覚機能では,古典的な音叉による検査法も取り上げ,その意義を改めて解説している。また,従来は開業医があまり行っていないOAE,ABR,ASSR,アブミ骨筋反射検査の他覚的聴力検査を取り上げ,その実施を促している。耳鳴検査法では検査法のみならず,TRTなどの治療法まで言及している。また,検査法の説明だけでなく,検査法の組み合わせによる感音難聴の鑑別診断法も興味深い。
第10章の「呼吸機能をみる」では,耳鼻咽喉科固有の鼻腔通気度,睡眠時呼吸障害に加えて,主に内科医が扱う呼吸機能検査も取り上げ,上気道から下気道まで気道全体の呼吸機能の理解を促している。
それぞれの項目ごとに,単に検査法の記載に留まらず,検査の結果得られる異常所見の読み方,鑑別疾患,さらには治療法にまで言及していてきめ細かい。どの項目でもイラストや写真が多用されていてわかりやすい。さらに,欄外にその項のまとめや豆知識といった一言メモがあり,読む者の理解を助ける工夫が随所にある。まさに実戦的である。
さらに,本書においてはいろいろなところにコラムやアドバイスの記事が書かれていて,それが非常に有用である。コラムでは,新しい疾患概念(auditory neuropathy)や検査(ASSRを理解する),検査機器紹介(知っておきたいオプションのめまい検査法),診療のコツ(機能性難聴の検査と心因性難聴診断のコツ)などが,わかりやすい読み物として掲載されている。これらのアドバイスやコラムを,診療時間外に,時間に余裕ができた時に拾い読みすることで,耳鼻咽喉科検査法の最新情報を知ることができる。日常臨床における知識が広がることは必至である。
最後に,付録として「患者への説明用イラスト集」があり,患者さんに理解しやすい図が多数掲載されている。検査結果の説明の際に,ここにあるイラストをコピーし,説明内容を追記しながら説明に用いれば,患者さんへのインフォームドコンセントの助けになり,良質な医療の実践にもつながる。
多くの耳鼻咽喉科専門医に本書の活用をお奨めしたい。


体系化された教科書よりも実践的で、多忙な臨床医でも読みやすい

全医協連ニュース(JMC NEWS) No.125 蒼翠号(2012年7月号) 書籍紹介より

浦野正美(浦野耳鼻咽喉科医院理事長)

このたび、中山書店から《ENT臨床フロンティア》シリーズが刊行されました。この企画は耳鼻咽喉科の日常診療に直結するテーマに絞った、全10巻のユニークなシリーズです。従来の体系化された教科書よりも実践的で、多忙な臨床医でも読みやすく、日常診療の中で本当に必要と考えられる項目のみが、わかりやすく解説されています。今回、『耳鼻咽喉科の外来処置・外来小手術』、『実戦的耳鼻咽喉科検査法』の2冊が同時に出ています。
『耳鼻咽喉科の外来処置・外来小手術』では、耳鼻咽喉科の一般的な診療所で行われる外来処置・小手術にテーマを絞り、第一線ですぐに役立つよう実践的・実用的に解説してあります。各手技の要諦を簡潔に示し、かつ写真やイラストレーションを豊富に用い、視覚的に理解しやすい構成となっています。巻末にはインフォームドコンセントに際して利用できる説明文例やイラスト集も収載されています。ベテラン専門医の座右の書となるとともに、これから耳鼻咽喉科専門医をめざす研修医にも大いに役立つ技術指南書になるものと思います。
また『実戦的耳鼻咽喉科検査法』では、超多忙な耳鼻咽喉科医が時間をかけずに正しく診断して、最適な治療方針を決定するための検査法を厳選して解説してあります。大がかりな装備を必要とせず、被検者の負担も少ない検査法を実戦的に使いこなすための1冊です。
この《ENT臨床フロンティア》シリーズは、ほぼ2~3か月に1冊のペースで刊行される予定です。全10冊をまとめて予約すると予価の10%引きになる特典もありますので、ぜひ、ご一読ください。