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臨床病理検討会の進め方・活かし方ーCPCの作法

臨床病理検討会の進め方・活かし方ーCPCの作法 published on

良い医師を育てるためのCPCはいかにあるべきかを我々に提示してくれている

medicina Vol.53 No.12(2016年11月号) 書評より

書評者:山本一博(鳥取大学医学部病態情報内科教授)

病理解剖は,患者さんの生前に我々臨床医が把握しきれなかった情報を提供してくれる,つまり我々に勉強をさせてくれる大切な機会であります.しかしながら,近年は以前に比べ剖検数が減少しています.この背景には超音波,CT,MRI,核医学など画像診断法が進歩し,多くの情報を非侵襲的に得ることができるようになった医療の発展があります.以前であれば剖検をするまでわからなかった点が,今ではこれら非侵襲的画像診断法を用いることで診断できるようになっていることは少なくありません.しかしながら,これら画像診断法を用いてもわからないから仕方ない,と思いこんでいることに病理解剖は今でも大いなる示唆を与えてくれます.私の専門である心不全領域を例に挙げると,最近になって,病態に不明な点が多いとされる左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)においてTTRアミロイドの沈着が病態に寄与している可能性が剖検結果から示されています.現代の画像診断法をもってしても組織レベルの情報は十分に得ることができておらず,剖検の重要性を改めて認識した次第です.ただし,単に剖検を行えば新しい知見が得られるのではなく,臨床医,病理医が幅広い知識をもってCPCに参加し,問題意識を共有したうえでフォーカスを絞って議論することで,はじめて病態の理解をさらに深めることができるものと思います.
本書は日常診療で遭遇することの多い症候ごとに複数の症例を提示し“紙上CPC”を展開するユニークな構成となっています.症例毎に臨床経過,受け持ち医の立場からみた疑問点をあげ,剖検結果をもとに病理医がこれに対する回答を出し,かつその根拠が科学的に解説されています.つまり,理想的なCPCの運営例がここに示されています.また各症例に関連するself-assessment questionを設け,読者が能動的に勉強できる工夫もなされています.
初期研修制度,専門医制度においてCPCへの参加は必須とされているなかで,本書は良い医師を育てるためのCPCはいかにあるべきかを我々に提示してくれていると思います.

論文ができてしまう! 疾患モデルマウス表現型解析指南

論文ができてしまう! 疾患モデルマウス表現型解析指南 published on

丁寧なイントロダクションと実験法がフレンドリーに説明されている

実験医学 Vol.30 No.8(2012年5月号) Book Reviewより

評者:木南 凌(新潟大学大学院医歯学総合研究科分子細胞医学専攻遺伝子制御講座分子生物学分野)

本書は疾患モデル解説付きの実験書であるが,趣向が少し変わっている.遺伝子やタンパク質に関する溢れる情報,次世代シーケンサーの普及,多くのノックアウトESクローンの作出という時代背景に立って,解説されているという点である.疾患モデルとしての遺伝子改変マウス,統一規格化されたマウス表現型解析についての総論と,個々の疾患マウスモデルについての臓器別解析法・実験法との組み合わせがおもしろく,それが本書の意図と言っていい.いくつかの疾患項目を読んでみると,丁寧なイントロダクションと実験法がフレンドリーに説明されている.困ったときには担当の執筆者に連絡をとるのも,一つの方法かなと思わせる親近感もあった.きまじめそうに見えるがユーモラスな山村先生と,何事にもエネルギッシュな若菜先生が絶妙にブレンドした豊かな香りが感じられる.
自分が興味をもつ遺伝子のノックアウトマウスが,かならずしも予想した表現型を示すとは限らない.また,たとえ予想した表現型が観察されても,違った角度から検討すると,もっとおもしろい予想外の表現型が見つかるかもしれない.予想を外れた専門外の研究領域に踏み込むのにはためらいがある.阻む壁の閾値を下げるのが本書の目的である.ノックアウトESクローンの整備といった環境がよくなれば,より本質に迫った研究ができる.が,それだけより複雑な解析方法が要求され,しかもより高い成果が期待される.大変な時代になったのだから,工夫が必要だ.本書はその手助けをしてくれるはずである.

免疫難病の克服をめざして

免疫難病の克服をめざして published on

免疫学に興味のある読者のみならず,研究の楽しさを知りたい読者にもお勧めの1冊

細胞工学 Vol.32 No.3(2013年3月号) NEW BOOKより

免疫学の100年間の歴史をわかりやすく解説するとともに,著者のライフワークである創薬にまで結びついたIL-6の研究が語られている.まさに研究の醍醐味ともいえる免疫学の発見と当事者ならではのエピソードは,免疫学に興味のある読者のみならず,研究の楽しさを知りたい読者にもお勧めの1冊.


免疫学に興味のある読者のみならす,研究の楽しさを知りたい読者にもおすすめ

実験医学 Vol.31 No.3(2013年2月号) Book Reviewより

大阪大学医学部免疫アレルギー内科での講義録音から生まれた本書では,複雑な免疫のしくみも,語り口調ならではのやさしさで理解できる.免疫学の100年にわたる歴史とともに,著者のライフワークであるIL-6の創薬にまで結びついた研究内容まで,幅広いトピックが凝縮されている.まさに研究の醍醐味ともいえる,次々に語られる免疫学の発見と当事者ならではのエピソード.免疫学に興味のある読者のみならず,研究の楽しさを知りたい読者にもおすすめの一冊.