正確・実践的・美しい の3つの条件を満たした手術書
Orthopaedics Vol.27 No.6(2014年5月号) BookReview
書評者:德橋泰明(日本大学医学部整形外科学系整形外科学分野)
すばらしい脊髄手術の手術書が刊行されたので,ぜひ紹介したい.
本書は,馬場久敏教授が編集を担当し,各術式についてはエキスパートの先生方が執筆しています.常々,手術書には3つの条件が必要と考えています.一つには正確であること(解剖は正確でなくてはならない),一つには実践的であること(経験に基づいた術者の視点で描かれていること),最後に美しいこと(手術も手術書もfineでなくてはならない)です.本書がこの3条件を満足していることは衆目の一致するところでしょう.また,術者である読者が追記できる白紙のスベースが十分にあり,読者のメモや経験も追加できるように配慮されています.さらに本書では,手術のポイントの場面がDVDに収録されており,立体的な把握に非常に有用です.
しかも今回の手術群は,common diseaseでなく,頻度は少ないがエキスパートとして心して立ち向かわなければならない比較的難度が高く,ハイリスクの手術が多く含まれています.私事ですが,整形外科教室に入局して間もない頃に,明日予定の脊髄腫瘍手術の手術書を医局で開いて予習していたときに先輩から「教授がするような,そんな一生,術者にならないような手術を勉強してどうするんだ.そんな暇があったら保険請求の勉強でもしとけ」と言われたことを思い出します.今になると確かに保険請求ももちろん大事になりましたが,その先輩も本書をみれば,もう少し違った意見を言うのではと思います.確かにすぐれた先人の手術書により私たちは育てていただきました.しかし,本書のようなすばらしい手術書により,よりfineな手術をより多くの方ができるようになり,多くの患者さんを救っていただきたいとつくづく思います.
一度書店でお目通しいただければ,この意味がご理解いただけると存じます.馬場久敏教授をはじめ,筆者の皆様,すばらしい手術書をありがとうございます.