がん看護 25巻1号(2020年1・2月号)「BOOK」より
評者:荒尾晴惠(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻)
放射線療法の治療件数は近年増加がみられる.この背景には,照射機器・技術の進歩,手術や薬物療法との併用による集学的治療としての実施等があげられる.これらの治療技術の進歩は目覚しく,放射線療法を受ける患者の看護に携わる看護師もタイムリーに知識をアップデートする必要がある.本書は,2009年に初版を発刊後,2013年に第2版と改訂され,このたび第3版となる改訂が行われた.今回の改訂においては,放射線治療装置や治療方法の進歩に伴い必要とされる看護,放射線療法後のサバイバーへの支援,晩期有害事象への看護などの視点から最新の知見が追加された.
放射線療法を受ける患者の看護においては,患者にとってイメージしにくい治療内容を治療前から理解してもらい,患者と治療目的や方法を共有することが重要である.治療完遂にあたっては,初版から継続している患者が主体となって治療完遂を目指すというセルフケアを支援する看護のありように加え,第3版では照射部位ごとに示した「ケアマップ」という新たな試みが取り入れられている.ケアマップでは,有害事象とそのケアが一覧で示されているため,患者・看護師ともに治療のイメージづくり,セルフケアの確立とその支援に有用である.治療後の有害事象が明記されている点は,退院指導にも活用できる.
また,本書は,大部分をがん看護専門看護師やがん放射線療法看護認定看護師が執筆しているため,放射線療法にかかわる難解な用語も,現場の看護師の理解が進むようにわかりやすい表現で記載されている.さらに,放射線療法の対象は小児から高齢者まで幅広く,それぞれの発達段階に応じた身体・心理社会的問題に対応していくことが求められる.本書ではとくに,子ども特有の発達段階に応じた看護が具体的に解説されている.
放射線療法に携わる看護師には病練,外来,治療室など勤務場所を問わず,ぜひ手元において実践に活用していただきたい1冊である.