ENTONI No.304(2024年12月号)「Book Review」より
評者:本間明宏(北海道大学教授)
本書を読んで「これは診療にとても役立つ本だ!」と確信しました.耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域全般の重要な疾患・治療などについて,ガイドライン,標準治療をコンパクトに,そして具体例をあげて説明されており,非常に読みやすく,しかも,わかりやすい内容となっています.また,抗菌薬,インフルエンザ,内視鏡感染防御,抗凝固療法,造影剤の使い方,高齢者,妊産婦・授乳婦への投薬など,日常の診療でわれわれ耳鼻咽喉科・頭頸部外科医も知っておかなければならない関連領域も取り扱ってくれているのも魅力です.
《プラクティス耳鼻咽喉科の臨床》シリーズは,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の最新の進歩を取り込み,耳鼻咽喉科診療と関わる社会的状況を反映した“エビデンスとサイエンスに基づく臨床基準書”を目指して刊行されています.本書,第6巻『耳鼻咽喉科医のための診療ガイドライン活用マニュアル』は,タイトルの通り,明日からの診療における診療ガイドライン活用の道標となることを目指して作られています.
耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域全般について,それぞれの領域のエキスパートにより執筆されており,本書一冊で,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域全般に加え,上述のような関連領域についても標準的な考え・治療について知ることができます.
第1章では,ガイドラインの作成方法が述べられ,ガイドラインがどのように作られたかを知ることができます.第1章で作成方法が理解できると,ガイドラインの記載を見て,その文章に込められた思い,言外のニュアンスを感じ取ることができるのではないかと思います.日々,患者さんと向き合っている先生方は,日常診療ではガイドラインの典型的な記載では対応できない場合には,悩みながら診療していることと思います.本書では,ガイドラインに書ききれなかったすき間を埋めるような記載が多くあり,診療する際に大いに役立つと思われます.
本書で,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域全般の重要な疾患・治療などについて最新のエビデンス,ガイドライン,標準的な考えを学ぶことができ,専攻医からベテランの専門医まで有用な一冊と思います.診療のデスクに常に置いておきたい本として推薦させていただきます.