「運動の生物科学」

能動的な運動を営む能力は、生物の持つもっとも重要な特性の一つである。個体レベルにおいては、自らの存在位置を変えて移動するための運動、餌を獲得したり、捕食者から逃れるための運動、コミュニケーションのための運動、あるいは遊びやスポーツにおける運動などの体全体を使う運動があり、臓器・組織レベルでは、横紋筋や平滑筋、あるいは心筋などの筋組織の運動がある。また細胞レベルでは、様々な細胞の遊走運動や、鞭毛や繊毛の運動、あるいは細胞突起の成長といった、ミクロの運動が活発に営まれている。さらには、細胞内においても、細胞内小器官を移動させるための細胞内輸送システムが存在し、分子レベルでの能動的な運動を実現している。
このように、運動という言葉で示される指示対象には、実に様々な異なったレベルのものが含まれている。また、運動は動物のみの特性ではなく、植物においても、同様のレベルの運動が実現されており、生物における運動の計算論的研究は、ロボット工学にも取り入れられてきている。さらに、スポーツ科学やリハビリテーション医学の分野においては、運動の生物科学の応用的な側面が取り上げられてきている。
これらの幅広い領域における「運動の生物科学」に関する優れた研究業績の推薦と、革新的、開拓的な新しい研究の応募を期待している。

(2013年6月15日:平成25年度の募集は終了致しました。)