「社会脳のヒューマンサイエンス」

 人を人たらしめているのは、その脳である。近年、個人の脳のはたらきだけでなく、複数の人間同士の相互作用の際に、脳内のどの部位がどのように活動しているかを明らかにするに研究が盛んに行なわれている。社会的場面における脳内過程の解明、すなわち「社会脳」の研究である。
 従来は死後に脳を解剖することでしか研究できなかったため、人の社会的行動の際の脳内過程を調べることは、ほとんど不可能であった。しかしfMRIやNIRSといった実験機器が革命的に進歩したことにより、人が実際に社会的場面で活動している最中にほぼリアルタイムで脳の活動を記録できるようになり、社会脳研究はここ20数年間で格段に進歩した。
 本領域への申請は、このような手法を使ったものが中心になると思われるが、広く社会脳に関わる科学的研究であれば、分野や手法は問わない。その上で必要な条件は、《人間》をより総合的に、より深く理解することに資する研究であることと、科学的に厳密な研究であることだけである。これらの条件を満たしていれば、脳神経科学に限らず、心理学、認知科学、政治学、法学、経済学、経営学、教育学、美学、芸術学、哲学、倫理学、宗教学などの領域、さらにはここに挙げられていない領域からの申請も歓迎する。
 「社会脳のヒューマンサイエンス」研究における画期的で世界的な業績の推薦と、斬新かつ意欲的な研究計画の応募を期待する。