監修

松下正明（東京大学名誉教授）

編集主幹

神庭重信（九州大学名誉教授）

編集

池田　学（大阪大学教授）
笠井清登（東京大学教授）
久住一郎（北海道大学教授）
齋藤正彦（都立松沢病院名誉院長）
三村　將（慶應義塾大学教授）
村井俊哉（京都大学教授）

（五十音順）

　【講座 精神疾患の臨床】のめざすところは，最新の臨床精神医学の精華と経験を集成し，その到達点を，実践的な講座として精神科臨床に携わる方々へお届けすることである．

　本シリーズは，中山書店から1975～1990年に刊行された【現代精神医学大系】（懸田克躬ほか責任編集，全25巻56冊）を第一世代とするならば，そのほぼ20年後の1997～2001年に刊行された【臨床精神医学講座】（松下正明総編集，全36巻）が第二世代版であり，その後20年余が経過した今，これらの大系の上に積み重ねられる第三世代版の知のアーカイブスである．1990年に発表された国際疾病分類ICD-10が30年ぶりに改訂されたことを踏まえ，2019年公開のICD-11の疾病分類に則って内容を構成し，めまぐるしく変わる時代のなかで様々な進歩がみられる精神医学について時宜を逸することなく最新の情報を提供するために，臨床上ニーズの高い疾患を中心に編んだコンパクトなシリーズとなっている．

　疾病構造は社会の変化とともに変わる．精神疾患の患者数が急増し，2011年には精神疾患が五大疾病の一つに位置づけられ，精神医学の重要性が広く認識されるようになった．また精神疾患の診断と治療においても，この20年の間に大きくその姿を変えてきた．DSMやICDに基づいて，世界中で行われた研究の成果が蓄積され，各疾患の概念と定義にも修正が加えられている．ゲーム行動症のように，治療が必要な対象として新たに定義されたものもある．

（中略）

　今日，精神疾患の多くは，内的要因と外的要因が複雑に関与する多因子疾患であると考えられており，その病態像は多様を極める．治療者は，複雑な病態をより適切に診たて，より精緻で丁寧な治療を進める必要があり，そのためには広く深い精神医学の知識と豊富な経験とを身につけることが要請される．

　本シリーズが，精神科医はもちろんのこと，精神科医とチームを組む多職種の専門職の方々にも，臨床に生かせる知識と技を提供できることを編集者一同こころより願っている．