2020年度テーマ

「自殺の人間科学」

 日本の現代社会では、平成10(1998)年の経済破綻を契機に、特に男性の自殺が急増し、平成15(2003)年には3.4万人を超えて、史上ピークに達した。平成18(2006)年に自殺対策基本法が制定され、自殺は政治課題の一つにさえ浮上した。現在は2万人台にやや沈静化しているが、人口減少との関連のなかで、依然として社会問題であることに変わりはない。ウェブ上では、自殺の方法などを掲げるサイトが数多く見られる。さらに、近年先進国の一部で、安楽死などが解禁され、それが、終末期の問題を越えて、通常の自殺に利用される傾向が見えることにも、課題が見える。
 こうした社会動態的な見地とは別に、人間論としても、自殺は、様々な問題を投げかける。精神疾患、経済的・社会的不安、生き甲斐の喪失、高齢者の孤独、男女の間の顕著な差など、自殺に至る人間の姿は多様だが、その一つ一つが、人間の本質に迫る問題を抱え込む。
 このように、幅広い視野を求めるこの課題に真摯に取り組む方々のお仕事を掘り起こし、光を当てる意味でも、諸方面からの積極的なご推薦とご応募を切に期待している。