「学会スライド図解の技術〜グラフと表効果的な見せ方・作り方〜」が4月1日に刊行される。
これは「はじめに」と「本書の考え方」の公開である。

はじめに

「わかりやすい表現をしたい」「相手の目をひくスライドを作りたい」
発表スライドを作るときにこうした気持ちになることは少なくない。
しかしいざスライドを作ろうとすると、どう表現したらいいのか思いつかなかったり、作ったスライドが「見づらい、伝わらない」ものになったりして、「自分にはセンスがない」「デザインのことはよくわからない」と悩んでいたり、諦めたりしていることも、また珍しくない。

本書は、センスがなくても、わかりやすく相手の目をひくスライドを作る方法を平易なことばと事例を使って解説する。

    説明はつぎの方針に基つづく。

  1. わかりやすい表現と、その背景を理解できる
    すばらしい例を見せられても自分のスライドにどう応用していいのかわからない。そうしたことがないように改善事例とそこに至るプロセスを示し、スライドの表現と、それを作っていく考え方と手順を理解できるようにする。
  2. 作成プロセスとPowerPointの機能と操作を解説する
    どのような表現をしたらよいかがわかっても、それだけではスライドを作ることはできない。作成していく過程とそこで必要なPowerPointの機能と操作を実際の画面を使って解説する。
  3. 多くのデザインパターンや色を取り上げる
    スライド作成では参考にできるものが多いほうがよい。作成のヒントとなるさまざまなデザインや色を使った事例を取り上げる。

本書は私の医学系の書籍として『驚くほど相手に伝わる学会発表の技術』(中山書店)に継いで、二作目となる。前作同様、多くの方に受け入れられ、役に立つことができれば幸いである。

最後に本書の企画・制作にご支援いただいた中山書店のみなさん、前著に続いて執筆した原稿をすばらしいデザイン・レイアウトに作り上げていただいた公和図書のみなさん、そして檮木治先生に感謝する。

本書の考え方

対象

スライド作りを始めたばかりの人から、ひととおり作成できるがそこからさらにステップアップしたいと思っていたり、まずまずのスライドを作っているのに思うような結果につながらないと感じていたりする人までを対象とする。

考えを「かたち」にして表現する

スライド作りにあたって陥りがちな問題を取り上げて、なんとなくパッとしない表現がなぜそうなってしまうのかを解明し、どこをどう変えていったら、すぐれたスライドになるのかを説明する。
スライド作成は、かっこよいデザインを作ることが最終目標ではない。かっこよいものは見た瞬間には目をひくかもしれないが、それは本来の目的ではない。本来の目的はきちんと内容を伝えることであり、専門的な内容を相手と共有するために、専門性への信頼を損なわないでわかりやすく伝えることにある。そこでは過剰な装飾で見た目をよくすることではなく、何を理解したらよいのかという内容の価値を正しく表現し伝えることが重要となる。
こうしたことから、見せ方にとどまらず、表現するときの考え方や、考えをどう「かたち」にして見せるかというところまで踏み込んで解説する。

グラフ、表を中心にしてスライドのビジュアル化全般を取り扱う

見やすい表現を苦手としている人が多いグラフ、表を中心にする。それらに加えて表現の統一ルール、文字、図解、写真、アイコン(ピクトぐラム)の使い方と、完成前の見直しの方法まで一貫してスライド作成に必要な内容を取り上げる。

操作方法を解説する

取り上げている事例を実際にスライドで使うことができるようにPowerPoint(Windows/Mac)の操作手順を取り上げる。

オンライン発表、ユニバーサルデザインへ対応する

一般化したオンライン発表への対応、ユニバーサルデザインの考え方と取り入れる方法についても取り上げる。