耳鼻咽喉科・頭頸部外科 Vol.90 No.11(2018年10月号)「書評」より

評者:小川 郁(慶應義塾大学耳鼻咽喉科)

素晴らしい耳科手術書『TEES(経外耳道的内視鏡下耳科手術)手技アトラス:導入・基本手技からアドバンスまで』が中山書店から発刊された。まさにTEESの先駆者である欠畑誠治教授の卓越した見識と情熱とがこもった渾身のテキストである。欠畑教授は山形大学教授に就任して以来,一貫して新しい耳科手術手技であるTEESに取り組み,手術手技の改良や周辺機器の開発などTEESを大きくブラッシュアップするとともに,TEESに関わる耳科医の輪を広げてきた。
また,2008年に開催されたCholesteatoma & Ear Surgery学会で国際学会として初めてのTEESのパネルにTEESの中興の祖であるTarabichi教授らとともに参加するなど,国内だけではなく国際的にもTEESを牽引し,今や世界的に最も有名な日本の耳科医のー人になっている。
本テキス卜では副題にもあるようにTEESのための中耳解剖や画像診断,手術のための手術器材のセッティングなどの導入から,手術器具の使い方を含めた基本手技,実際の様々な症例における手術手技をTips & Tricksを含めて紹介するなど,まさにビギナーからエキスパートまでが活用できる素晴らしいテキストになっている。また,本テキストにはWebビデオが付属しており,実際の手術動画によって手術手技が学べる新しい時代の画期的な手術テキストでもある。
本テキス卜を素晴らしい手術テキストにしたもう一つの特筆すべき特徴は,二井一則先生によるプロ並のイラストである。実際に手術に参加している耳科医によるイラストであり,美しいだけではなく,大変説得力がある。手術所見の写真とイラストを眺めているだけでも,実際の手術に参加しているような気持ちになり,時がたつのを忘れてしまう。
このように本テキストは欠畑教授の指揮のもとで山形大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室のメンバーがオーケストラのように創りあげた手術テキス卜であり,TEESといえば山形といわれるように後世まで受け継がれるテキストになると確信する。
欠畑教授は本テキストの「序」で「私たち医師の究極の願いが『世界中に一人でも多く笑顔の人を』ということであるならば,それは師から弟子へと受け継がれる継承の輪によってのみ達成できると考えている」と述べている。欠畑教授の師としての思いの結集の一つが内視鏡下耳科手術ハンズオンセミナーin山形であり,今回,本テキストが発刊されたことによって,欠畑教授の思いを進める両輪が揃ったことになる。
私が所属する慶應義塾には「半学半教」という草創期からの教育の理念があるが,欠畑教授の「継承の輪」はこの「半学半教」にも通じるものがある。学びながら教え,教えながら学ぶTEESの「継承の輪」がどこまで広がるか,これからが大変楽しみである。「TEESは,すべての医療技術がそうであるように発展途上の医療技術である」と冒頭で述べているように,これからの光学機器をはじめとする医療機器のさらなる進歩により,TEESもさらに大きく進歩し,安全かつ確実な医療技術としてさらに普及するものと期待される。
実際にこれからTEESを始めようとする若い耳科医だけではなく,広く耳科診療に関わる全ての耳科医に読んでいただきたい好著である。
最後に,是非,本テキストを熟読していただき,一人でも多くの耳科医が「継承の輪」に加わることを期待して,私の書評としたい。