好評のポケットブックが版を重ね「珠玉の1冊」としてより充実の内容にアップデート

プラクティス Vol.35 No.5(2018年9・10月号) PUBLICATIONより

評者:駒津光久(信州大学医学部糖尿病・内分泌代謝内科学)

国立国際医療研究センター(当時)の野田光彦博士監修による「レジデントのための糖尿病・代謝・内分泌内科ポケットブック」が上梓されたのは, 2014年5月であった.その充実した内容と使いやすさから研修医の人気を博し,このたび「第2版」が刊行された.初版と同様に,コンパクトなサイズに十分な情報を凝縮し,無駄な記載を省き,臨床的に必要なノウハウを具体的かつ明快に解説している.本書は, 「第I部 救急対応と電解質異常」「第Ⅱ部 糖尿病」「第Ⅲ部 高血圧・代謝疾患」「第Ⅳ部 内分泌疾患」の4部構成になっている.また,「Column」として当該分野のトピックスに解説が加えられているが,この数も初版の33個から41個に増え,さらに充実したものになっている.
糖尿病代謝・内分泌領域の知見は日進月歩であり,本書のような実用書の場合,いかにその内容がうまくアップデートされるかが重要であるが,その点でも本書は秀逸である.たとえば,新しい血糖降下薬であるSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬に関しても,直近のエビデンスや知見をしっかり押さえて,わかりやすく記載されている.また,1型糖尿病の最新治療であるSAPについてもしっかりと記載されている.内分泌領域でも,その記載は随所にアップデートされている.先端巨大症の新しいホルモン治療薬や,神経内分泌腫瘍の分類や治療など,最新の考えかたをしっかりと伝えている.レジデントのみでなく,指導医にとってもその知識の整理と刷新のために本書は役立つと確信するゆえんである.
本書の特徴である随所にわかりやすいフローチャートを配している点も初版からしっかり継承されている.文章だけではなくこのような秀逸なチャートや,最新の診断基準の掲載など,レジデントの困りそうなところすべてに手が届いている.全体を通して,記載の姿勢や記述分量,文体などに統一感がある.これは,執筆者である田中隆久,辻本哲郎,小菅由果,財部大輔の4先生が監修者の野田光彦博士の直弟子で,その薫陶を受けており,意思疎通が十分にできたことによるのだろう.
内分泌代謝内科学は,負荷試験の方法や具体的な判定基準など,多くの数字が付きまとう.レジデントのあいだは,本書を傍らにおけば,そのような問題は解決する.基本的には,必要な項目を拾い読みすることになるが,時間の許すときに,41項目の「Column」を熟読することも勧めたい.専門医が読み直しても頭の整理に役立つほど良質な内容である.また巻末には通常の索引に加えて,略語の解説や内分泌負荷試験および糖尿病注射薬の一覧が添えられており,きわめて実用的である.
本書は「初期研修医」が内分泌代謝内科をローテートする際に是非とも携行していただきたい1冊である.研修医が日々遭遇する臨床現場で,その分野での専門知識を迅速かつ適切に習得することは容易ではないが,本書はその手助けとしてふさわしいポケットブックであり,まさに「お薦めできる珠玉の1冊」である.